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乳
風のうなる晩は
潮風を思い出す
行き交う車の賑々しさに
遠く波音を聞きながら
月が涙に低く蕩ける
凍える晩は
クリームシチューにグラタン
濃厚ココアも恋しい
死の苦しみをもたらす母の乳
ほんの一滴
隠れたソースで腫れ上がる顔
苦悶 喘鳴
あと一口食べていたら
今は穏やかに眠る
あどけない寝顔
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2021年1月30日Twitter掲載詩、一部修正。
アレルギー持ちの母は、常に神経をすり減らします。ほんの1cc。原料の一部に含む、とか。
最初は飲めていたミルクを徐々に拒絶するようになった息子。何度目か飲んだミルクで、全身の蕁麻疹・声がれ・喘鳴・鼻水・嘔吐。息も吸いづらい中で必死に泣き叫ぶ子の姿に、このまま死んでしまうのではないかと、凍りつく思いをした日。
(このような状態の時は、本当は迷わず救急車を呼ばなくてはならないそうです。様子を見てはいけません。)
以来、冬と春の間の風の唸りをきくと、苦しむ子供の姿が浮かびます。
同時に春先は10年前の震災の姿も思いだします。潮風。月が揺蕩う海辺の町。
今、夕闇に走り去る車列をみて、あの日理不尽に奪われた命の数々を思うと、満月が目玉焼きのように流れそうになります。
穏やかな眠りを守ることのできる、埋もれていく慌ただしい日々の大切さをかみしめて。
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謝辞:画像作成には『SS名刺メーカー』sscard.monokakitoolz.net/ を使わせていただきました。
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