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ちょっと思い出しただけと過去作の話

ついに待ちに待った2月11日


松井大悟監督の新作ちょっと思い出しただけを見に行きました。

2013年「自分のことばかりで情けなくなるよ」
2015年「私たちのハァハァ」以来の
松井大悟×クリープハイプの新作

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前情報は無し。
ただまたあの3人がタッグを組むこと、今までの3人が集まった映画の作風とは違ってどうやら大恋愛だと。溢れ出す期待。これに尽きる。

早めの回で鑑賞。
もう2022ベストになりました。
そんな「ちょっと思い出しただけ」
本当に良かったので拙い文章ですがいろいろ書いてこうとおもいます。

気になってる方にざっくりとしたあらすじや映画の魅力、そして後半には既に鑑賞済みの方にネタバレ有りで書いていくので良ければよろしくお願いいたします。

あらすじ

2021年7月26日
佐伯照生(池松壮亮)34歳の誕生日を迎えた彼は猫にエサをやり観葉植物に水を与えラジオ体操をしてステージ照明の仕事に向かった
その日はダンスの公演感染対策がしっかり行われており席は一つ一つが空いている。
彼はダンサーに照明を当てていた。
同日2021年7月26日
タクシードライバーの野原葉(伊藤沙莉)はマスクをつけミュージシャンを乗せ東京の夜の街を走っていた。
7月26日2人は6年間をちょっとだけ思い出す…

自分的に前情報少なめで見てほしいので
あらすじはこれ以上書きません。
少しでも気になってる方はこの時点でチケットをとって見に行きましょう。

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松居大悟×尾崎世界観×池松壮亮とは

まだこの映画を知らない方の為にこの映画を担う主軸の3人について紹介していきます。

監督脚本を務めるは松居大悟監督

松居大悟

2021年では「バイプレイヤーズ 〜もしも100人の名脇役が映画を作ったら〜」
そして成田凌さん主演の「くれなずめ」
など没入感がある美しい作風が特徴の
今を輝く映画監督の松井大吾監督

2018年松居大悟監督 「君が君で君だ」

尾崎世界観(クリープハイプ)

そしてこちらも今を輝くロックバンドクリープハイプのボーカルであり第164回芥川賞候補にもなった「母影」「祐介」などさまざまな本を著書している尾崎世界観さん

MV監督松居大悟 池松壮亮出演
クリープハイプ「憂、燦々」

池松壮亮

そして「MOZU」「宮本から君へ」2023年には「シン・仮面ライダー」公開を控えるなど日本だけにとどまらず映画界に引っ張りだこの実力派俳優の池松壮亮さん
2019年真利子哲也監督 「宮本から君へ」

この3人がタッグを組んだ
「ちょっと思い出しただけ」
実は今回が初ではなく
「自分のことばかりで情けなくなるよ」から約10年振りの作品とのこと。

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2013年 「自分のことばかりで情けなくなるよ」


2月13日に放送された「ボクらの時代」にて

2020年2月からクリープハイプはバンド10周年ツアーを回っていたが3公演目となる2月27日の広島から新型コロナにより以降全てのツアー開催中止に。
チケットが今までよりも売れたツアーが中止となりそんな中、尾崎世界観は本当だったら3公演目を行っていたはずの2月27日に「ナイトオンザプラネット」の楽曲制作を行っていた。そのサビが完成し直ぐに松居大悟監督に楽曲を送り2022年その楽曲が映画に繋がったことを語っていた。

パンフレットにも同様な事が記されており
どうしようもない何かを形として作り上げる為3人がまた集まったことが明かされてる。

私は広島の1つ前の2月16日仙台PITで行われたツアーの2公演目に行っていて私もコロナ禍になる前に行った最後のライブがクリープハイプの仙台公演だった為尾崎さんのこの話に感慨深いものがあった。

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だからこそ今回の映画の始まりはまさにコロナ禍。

withコロナが常識になった2021年。
飛沫防止シートに館内入口のアルコールスプレー感染対策ため劇場もひとつずつ席が空いているなど最近の映画では少し異様な世界観。
だが現実逃避しようとしてもこれが今の日本。さすが松居大悟監督
異質なコロナ禍の世界に優しく引き込こむ
この映画はそんなスタートを切る。

わたしにとっての松居大悟監督×クリープハイプ

ここからは私のファン視点の話になるのですが合作2013年「自分のことばかりで情けなくなるよ」と2015年「私たちのハァハァ」今回の「ちょっと思い出しただけ」

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そして今までのクリープハイプの楽曲を通して
あ、やっぱり私の人生においてクリープハイプから離れられないんだなと改めて実感させられました。

沢山の楽曲に救われて人生の壁を実感させられて、落ち込んだ時にはいつでも帰ってきてそうしてたらいつの間にか大人になっちゃった。

みたいな親のようなバンドになっているけど私みたいにクリープハイプに救われた人間が日本に山ほどいるんだろうなとノスタルジックになってしまう日が多いです。

この流れで過去作を紹介するとしたら
2020年8月終盤本当だったら夏休みを友達と送っていてもおかしくない夏の終わり。
この頃私は大好きなおばあちゃんが亡くなったりコロナ禍で起こったと言っても過言ではない出来事が重なり精神的に参ってしまい実際に通院していました。

そんな時私を支えてくれていたのは映画音楽。
今もそうだけど当時どんな言葉よりも優しさよりもいちばん説得力があるし自分にとやかく言わない共感してもいいし共感しなくてもいいから言い方は悪いけどなんか安易で都合がいいからこそ山ほど漁っていて
そんな時レンタルビデオオショップで借りた

「私たちのハァハァ」

あらすじ

福岡に住む仲良し4人組の女子高生彼女たちの共通点はクリープハイプ。
福岡で行われたクリープハイプのライブで彼女たちはメンバーから「東京のライブにもぜひ来てください」という言葉を受け
高校生ラストの夏休み1000キロ離れた東京のライブへ自転車を走らせる…

という青春ロードムービー
もちろんわたしにはこんな一世一代の大冒険のような青春はなかった。だけどただ女子高生の時もクリープハイプが好きだった。青春だった。救われた。それだけで懐かしくなってしまって泣いた。
それと同時に足元を救われ以来私は
完全に松居大悟監督×クリープハイプのとりこになっていました。

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⚠︎「ちょっと思い出しただけ」ネタバレ有り

ここからはネタバレも混じえながら個人的に好きだったシーンとあらすじ以降の紹介をして行きます。

何度も言いますが気になったらすぐ行ってください。

主人公は佐伯照生(池松壮亮)
野原葉(伊藤沙莉)
2人はかつて恋人だったが
今は別々の場所で別々生活を送っている
7月26日照生の誕生日を軸に
6年間の過去を2人は思い出す。

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思い出すと言えば2021年の花束みたいな恋をしたがあるがあの映画は大人にならなきゃ行けない男女に与えられた決断、試練を描いたものだが
この作品は前に付き合ってた恋人との7月26日を1年ごと振り返ってみるといった
タイトルの通りちょっと思い出す内容。

花束のようなフラッシュバック物は付き合いたてからスタートするものが多い傾向にあるがこの作品は1年前ずつ振り返る
あれ、1年前はー…といった
綺麗な思い出から始まる訳ではなく既に別れたあとの思い出からスタートするのが非常にリアルでほろ苦な感じが大人っぽい気がした。
この仕組みにまだ気づいてない私は1年振り返りのシーンで

照生は職場で失敗して怒られた帰り道。もともとダンサーをめざしていた照生は当時の後輩にたまたま出会い行きつけの飲み屋で誕生日会が行われ
一方葉は友達に誘われたコンパの雰囲気に耐えきれず居酒屋の外でライターを借りた関西弁を話すどこぞのニューヨーク屋敷らしき男とLINEを交換し気がついたら
ホテルにいた。

これからキラキラしていく恋愛映画とは思えないとんでもない入り方をしたことに動揺した。え???ってなった

でも大丈夫。

ミルクボーイの一回目のコーンフレークと違うやないかいの段階と一緒で次ですぐ理解出来てすぐ仕組みに気づいて沼るのと一緒。

次の振り返りですぐ理解できるし
6年も振り返るんだからキラキラする。
むしろ段々付き合う前のニヤつく綺麗な思い出でおわる恋愛映画なので
果てしなく気持ちが晴れる。気持ちがいい。
まずこれが映画の仕組みになります。

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6年全部を説明すると全部になっちゃうので特に好きなシーンを。

①2人の日課

観葉植物に水をやり猫にご飯をあげた後
1人部屋で腕を大きく回している照生
シーンが葉に切り替わりタクシーを片手のホースで洗いながら遠くから聞こえるラジオ体操で腕を大きく回す。
まずこのカットで二人の関係性、
既に別れていることが分かります。

関係性を表す時って久しぶり会ってきまずい顔をするような表し方が多いですがそうではなく日課で表すのがリアルでした
好きな人とかかつての恋人から貰った知識とか物とかって結局嫌でもやっぱり愛おしくなって持ってたり喋っちゃったりしちゃうので
それが日課で表現されてるのが素敵でした。

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②しんどいからさ

振り返ると当時はまだ照生と葉が付き合う前のシーンへ。
当時ダンススクールに通っていた照生に片思いをしている葉はタクシードライバーの仕事の合間に花と小さなプレゼントをもって照生のダンススクールへサプライズをしに向かいますがダンススクールの小窓から見えたのは
後輩から大きなプレゼントをもらう照生の姿。
その瞬間に葉は近くのゴミ箱にプレゼントを仕事に戻ります。
その後行きつけの飲み屋でアドバイスをもらって彼がアルバイトをしている水族館へ行き泣きながら思いを伝えます
思いは見事に伝わり誕生日プレゼントと
いってたまたまポケットにはいっていた吹き戻しをプレゼントします。

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しんどいからさ…から始まる葉の告白
思ってた以上に仲良くなりすぎたからこその拙い言葉と涙がリアルでうつりました。涙。
その後タクシーで帰るシーンで葉から告白を受け取った照男が帰るときに手を掴んで

照生「言ったら壊れちゃうきがして」
葉 「恋愛映画みたい」

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両思いやんけもう既にラブラブでそのあとも
速攻でキスしてて最高に嬉しかったです(?)

③舌打ち

さらに振り返りまだ出会ってない頃
葉の友達が主演の公演があるため見に来た葉は終演後の打ち上げに参加した。
主演の友達に良かったと言葉をかけ友達が呼ばれたため1人になるとそこで初めて照生が声をかけます

「じゃあ僕をさっきの友達だとおもって正直にいってみてください」と一言

葉は
「友達は良かったけどダンスがお芝居に合っていなかった」

すると照生が「あれのダンサー僕ですしかも振り付けも僕がやりました」

きまずい。

更に電気が消え照生の前には誕生日ケーキが運ばれてきた。

この空気に耐えられなくなった葉は会場の裏口へ出ますがオートロックで中にはいれず。
何時間かして照生がやってきて
「閉館ですよ」と一声かけて
一緒に帰ることに。

飲み物を渡した照生に対して急に葉が
葉「舌打ちしました?」
照生「してないですよ?」
葉「あ、そうですか」
照生「チッ」
葉「今のは確実にしましたよねwww」
照生「え?してないですよw」
足「ダンッ!」
葉「怒ってますよねwwww」

と照生の冗談謎キレ芸があり
既にいい感じの2人。

こちら私の中で一番心に残ったシーンです
控えめにいって照生がいい男すぎて結婚して欲しいシーンです。
初めてで空気和ませるためにあんな振る舞いした瞬間に一瞬で好きになりますよ私。
って思うくらい酷く羨ましいと思いました。
この会話書いてる時になにこれ?って、おかしくなってしまったたので実際に見て頂きたいです。

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恋愛映画(番外編)

私は恋愛映画は実はあまりみない方なんです。
何故かって言うと分かってあげられなく退屈になってしまう傾向にあるからです
繊細な片思いとかの恋愛映画ほど
あ、この映画恋愛経験(恋愛体質とかの)
豊富そうな人が見たら面白いんだろうなぁとか正直思うので。
なかなか見るまでにも時間がかかるんです。

だけど人の恋愛事情って面白いですよね
ただし仲のいい人にかぎるんですけど
惚気話とか知らないうちに興味があるから
いっぱい聞いちゃいますよね。

それが過去であればあるほど聞きたくなっちゃう知らない恋の世界に少しだけ足を踏み入れるこの行為。
私は結構好きでこれからやってるのかわからない羨ましければ羨ましいエッセンスが入っている恋愛映画を見る傾向にあります。

こちら番外編で紹介します

2003年廣木 隆一監督
ヴァイブレータ

あらすじ

冬の夜
コンビニでワインを買いにした1人の女
例の頭の中では声が聞こえるその声に対して女は「うるさい!」と大声をあげる
コンビニ内が警戒する中1人の金髪の男が入店し女に少しだけ触れて誘う
男はトラックの運転手で女はそのトラックに乗り込み72時間の「航海」がはじまる…
と言ったあらすじ

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この映画とんでもなく好きで円盤もサントラも入手したぐらい好きなんです。

内容はわかりやすくて
コンビニで31歳の女が28歳の年下金髪ピアストラック運転手に出会ってトラックで東京から新潟に向かって道連れにされて好きになっちゃうって話ですね。

物語は寺島しのぶさんが演じるレイ視点
つまり女視点なので女性視聴側も道連れにするという実に巧妙な作り。

トラックという狭いシチュエーションで
繰り広げられる2人だけの世界が美しく
キュンキュンするためお手軽にのたうち回れます。

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2000年代初期なのであのころ特有の音楽と少し痛い台詞がノスタルジックを加速させていきます。
金髪の大森南朋さんが死ぬほどかっこいいです。数ヶ月間恋しました。

こちらAmazon prime、U-NEXTで見放題ですのでぜひ。

2021年土井裕泰監督
花束みたいな恋をした

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こちらも過去に記事を書いているので是非ご覧になってみて下さい。


最後に

ここまで色んなことを書いてきましたが
この映画の最大の魅力は監督、演者さん、作品が伸び伸びとしている事だと思いました。

主演のふたりはもちろん
ボクらの時代、パンフレットを通して伝わる自由でどこまでも行けそうな気持ち。

そしてこの時代を生きる私たちに葉と照生
というフィルター通して見せる世界に懐かしさを与え
こんなにも美しいラブストーリーを描いてくれたことが死ぬほどうれしいです。

尾崎世界観さんのどこにも行けないこの気持ちとやたらと溢れ出る言葉がナイトオンザプラネット。それが形になった。
どこまでも行ける素晴らしい映画と曲になった。

最高でした。ありがとう。

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