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ボウリング地獄 男性育休記2-15
翌日になっても、甥っ子兄こと6歳児はボウリングに行きたがっていたので我々一行は朝食後すぐにボウリング場に向かった。
うちの3歳児と甥っ子弟の3歳児は、なんかちっさい滑り台みたいなやつを借りて投球することができる。6歳児は普通に投げるつもりのようだ。昨日の「Nintendo Switch Sports」のせいでかなり有頂天になっているが、大丈夫だろうか。
義父なんかは「金を賭けてやろう」などと違法なことを言っており、子どもにも手加減をしなそうで不安だった。だから事前にボウリング場に電話して「あのガーターにならないバンパーみたいのつけられます?」「つけときます」というやりとりをしていたので、まあ、そうしたら意外と良い勝負になるんじゃないのかな。
そんな風に考えていた私は甘かった。
バンパーみたいなやつはついていたのだが、いちいち取り外しもできないので、大人が投げる時もバンパーがあるのである。
6歳児が投げる球はガーターにこそならないが、さすがに球威がないためストライクとかにもならない。
第一レーンこそ、6歳児が9ピン、その他大勢の久々であろう大人達は7か8とかだったので、6歳児は有頂天だった。
「やっぱり俺が一番上手い!」
そんな彼に最後まで華を持たせようと思ったのは私だけなのか、今となっては確認の術は無いが、彼の実の父(私の義兄)がその強肩を発揮して、ノーコンゆえガーターまっしぐらだったがバンパーで跳ね返ってきてストライク、を決めた瞬間、6歳児は文字通り膝から崩れ落ちた。
その後、まあ普通に投げてるだけの大人がバンパーのせいでスペアとかストライクとかを取ってしまうたびに6歳児の表情は歪み、次第に地べたに大の字うつ伏せになって泣き叫び、「もう嫌だ!」と、教科書通りの駄々を捏ね、隣の隣の隣のレーンくらいの人まで苦笑しながら注目されるようになり、そうこうしているうちにその注目で逆に張り切った義父が腰をやってしまいリタイヤ。そういうわけで1ゲーム目は結末に到達することなく、メンタルとフィジカルで各一名故障者を出したため、フロントに申し伝えてノーゲームとし、不穏な空気を察知してオロオロするうちのと甥っ子のダブル3歳児に自販機でアイスを買い与えた。いったんそうした。
甥っ子弟はただ無心にアイスを食っていたが、うちの3歳児はあんなに憧れていた6歳児が今や文字通り地に落ちて、「もうボウリングしない」「うちにも帰らない」「どこにも行かない」と人生自暴自棄モードになってしまったことを彼なりにどうにかしようと思ったのか、歩みよって自分の未開封のアイスを差し出して「いっしょにたべよ。」そう言った。その優しさに全米が涙するかと思った矢先「うるさいあっちいけ!」うつ伏せの状態から器用に繰り出された6歳児のチョップが白いアイスにクリーンヒット、くるくると回転しながら床を滑っていく17アイス、善意を怒号で返されて号泣する3歳児、そして誰もを上回る声量で「あんたいい加減にしなさいよぉ!!!」怒声を発しながら怒りのあまり大猿に変身して口からエネルギー波を発しボウリング場を破壊する義姉。
崩れ落ちていくボウリング場の片隅でさめざめと泣く我が子をそっと抱きかかえながら、私も感情が交錯しすぎた結果、「ゴールデンカムイの実写化て、どうなるんだろうな」「姉畑支遁役、もしまだ決まってなかったら俺にやらせてくれないかな」そんなことを考えていた。
ちなみにアイスは拾って私が食べた。