見出し画像

若手看護師の精神的負荷

大学病院勤務の経験年数2-3年目の看護師293名を対象に、看護実践を困難にさせるメンタルワークロードについて自由回答で答えてもらったものを分析されている論文(菱谷, 2022)を紹介します。

メンタルワークロードとは、「精神的負荷と精神的負担の総称で,精神的負荷は外部から看護師に対して精神的に作用する影響のことであり,精神的負担は精神的負荷によって看護師の内部に直ちに起こる影響」として定義されていました。これは、人間の認知,情報処理,感情のすべてを含むとされています。

つまり、多重業務の優先順位をつけないといけないような外部的な精神的負荷とそれをこなす内的精神的負担について検討したということです。

自由回答を分析した結果、

精神的負荷についてが生じる状況としては
【多重課題が生じた(状況)】
【人の生死の狭間に関わる(状況)】
環境的要因としては
【夜勤帯の勤務をする(状況)】
個人的要因としては
【知識・技術・経験が不足している(状況)】
精神的負担が生じる状況としては
【観察力が低下した(状況)】
が挙げられていました。

そして、前者3要素の【多重課題が生じた(状況)】【人の生死の狭間に関わる(状況)】【夜勤帯の勤務をする(状況)】において精神的負担が生じる状況に影響を及ぼしていました。

新人看護師にとって、外部的負荷が大きく影響していることが分かります。

また、人の生死の狭間に関わることについての負担は大きいとのことで、
これは若手看護師の年齢が若者であることも影響していると考えられます。
これまでの研究では、高齢者より若者の方が「死」の対しての恐怖が高いことが分かっています。

また看取りの研究では、資格保持者でも看取りは精神的に負担になることが分かっていて、「看取りが怖い」などの恐怖感情も喚起されます。それによって、患者さんから足が遠のき、患者さんへの十分な精神的ケアが行われないことも予測されます。

私の新人看護師時代の経験では、こんなことがありました。
夜勤で部屋周りをしている時、死が迫った患者さんの所を訪室すると、ベッドサイドに座られていたので近づくと、真剣な顔で「死んだらどうなるんやろ?」と聞かれたことがあります。

その頃は答えが無くて、何を言ったらいいのかわからず、その後の記憶はないのですが、大急ぎで逃げた記憶だけあります。

それからターミナルの患者さんの所には行きにくくなってしまいました。。。

そのような苦い経験の中、大学院の時に死生学を研究されているカールベッカー教授の研究室にお世話になることがあり、様々な死後の理解があることを知りました。

その後、看取りの研究を続けることになりました。
現在も調査は継続していますが、
現在分かっていることは、
「患者さんは最後まで「希望」が欲しいことから、
もし患者さんが死後に亡くなった親戚に会えることを信じておられたら
そのことについて話すことが患者さんにとっての安心に繋がる」
ということです。

そして、自分自身の死生観をもう一度見直して、それを軸に話をしてみることも、患者さんから逃げない1つの方法になるでしょう。

「死」が「希望」に変わるような看護を実践できるようにと
学生には教授していますが
新人看護師にも死生学の教育は必須でしょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?