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朝鮮人追悼式典、小池知事が今年も追悼文送らない考え

 小池百合子都知事は8月7日の定例会見で、毎年9月1日に都立横網町公園で開催される関東大震災の直後に虐殺された朝鮮人犠牲者の追悼式典へ今年も追悼文を送らない考えを明らかにした。

 同式典は追悼碑が建立された1973年以降、日朝協会などを中心とする市民団体の実行委員会が執り行っている。昨年12月、実行委が2020年9月1日の式典開催に向けて公園の占用許可申請することにあたり、東京都は使用条件を定めた文書を提示。それら条件を守れない場合は、「次年度以降、公園の占用が許可されない場合があることに異存ありません」とする誓約を求めていた。

 この背景には、小池百合子氏が都知事に就任した翌年の2017年から式典と同日同時刻に右翼団体「そよ風」が集会を開き、「犯人は不逞朝鮮人、朝鮮人コリアンだったのです」「不逞在日朝鮮人たちによって身内を殺され、家を焼かれ、財物を奪われ、女子供を強姦された多くの日本人たち」「その中にあって日本政府は、不逞朝鮮人ではない鮮人の保護を」などとヘイトスピーチを叫び妨害してきたことがある。

 追悼式典と右翼団体らの集会の二つを規制することで、“トラブル”を避けようとした、と見られているが、インターネットを通じて3万人の署名が集まるなど虐殺された人々の追悼と差別的言動をする集会を同列に扱う姿勢に対する抗議の声が高まっていた。これを受け、都は7月29日に「誓約書の提出を求めない」と明言。公園の占用許可申請も受理した。

 右翼団体「そよ風」が集会で行った言動については8月3日、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」の第12条第1項の規定に基づき、差別的言動であると判断したことを発表。ヘイトスピーチであるとの認定を行なっている。

 今年行われた東京都知事選挙は、コロナ対策とともに争点の一つとして問われていたのが、この追悼式典における追悼文の送付であった。対立候補の宇都宮健児氏は都知事に当選した場合は、「必ず出席する」と発言。一方、小池百合子候補は虐殺が行われた歴史について「様々な見方がある」との見解を示し、追悼文の送付については明言を避けていた。選挙期間中に実施されたChoose life projectによるネット討論会では、司会の津田大介氏が「公園の占有許可に対して、ネット署名が3万以上集まっています。これについてはどう受け止めていますでしょうか?」と質問したところ、小池氏は「その点については受け止めさせていただきます」と答えていた。

 7日に行われた都知事定例会見では毎日新聞の記者から追悼文について問われたところ、

「昨年というか、毎年9月1日(火曜日)にはこの追悼式典が行われているわけでございます。これは関東大震災ということで行われているわけであります。公園の占用許可というのは都が出すことになるわけでございますけれども、これのベースになるのが都市公園法、そして、この都立の公園の条例は同じように都市公園法と東京都立公園の条例などの法令がございます。これに基づいて適切な許可を出しているということであります。
今回、人権尊重条例がありまして、今申し上げた都市公園法、それから都立の公園条例、そして人権尊重条例もそのリーガルな中での1つに柱として考えられることになっております。
今年の9月1日(火曜日)についてどうするのかというご質問だったと思いますけれども、公園管理上の支障となる行為については注意を促す、そしてまた、当日も適切に対策を講じるとの報告を受けているところでございます。これによって、今年の対応とさせていただきたいと考えております」   (該当答弁ママ)

 と質問の趣旨をはぐらかして回答。

再び、記者が「追悼文は送らないということですか」と尋ねると、冷めた口調で「それは毎年送っていません」と述べた後、今年も送らない考えであることを示した。

 都知事の人権意識や歴史認識を確認する重要な質問だったが、他の記者からは関連した“さら問い”(続けて同様の質問を別の角度から聞くこと)はなく、「追悼文を送らない」とする理由については明らかにされなかった。

フリーランス排除にも共通するレイシスト思想

 フリーランスや週刊誌記者など小池知事にとって厳しい質問をする記者は、ほとんど指名されることがないのが今の知事会見の現状だ。嫌いな記者とは目を合わせようともしない。この日、小池知事は自身の肝煎の施策である「感染防止宣言ステッカー」の普及に向けて、P RするためTシャツを着用していた。会見後には、会見場の外でカメラ撮影に自ら応じるサービスの大盤振る舞いまで行なっている。だが、民進党から合流しようとする議員を選別するとした「排除発言」を引き出したジャーナリストの横田一氏が撮影場所に現れると「では、これで」と逃げるように去っていき、追いかけようとすると都の職員から制止された。

 ヘイトスピーチをしていた「そよ風」と小池知事の関係性は、ある疑惑が持たれている。都知事に就任する前の2010年、在日特権を許さない会(在特会)の関連団体である「日本女性の会 そよ風」主催の集会で講演を行なっていたという。その関係性を示しているのか2017年以降、都立横網町公園で追悼式典の同日同時刻に、「そよ風」はヘイトスピーチを実施。小池知事も呼応するかのように、これまで歴代知事を送り続けていた追悼文を取り止めた。お気に入り記者の質問にだけ答え、それ以外の記者からの質問を受けようとしない姿勢と、朝鮮人追悼式へ追悼文を送らないことは小池都政の歪さを象徴的に表している。自身の歪んだ歴史認識や、意にそぐわない人間を排除しようとする意識の根底にあるものはレイシズムそのものだと言えるのではないだろうか。


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