佐川の佐藤さん(仮名)
買い物へ出かけるのは日々のドラッグストアやスーパーくらいのもので、その他諸々はほぼネットに頼っている。そのため、配送業者さんには大変お世話になっており頭が上がらない。
近所をまわる佐川さんで、ものすごくフレンドリーなおばさまドライバーがいらっしゃり、おそらくエリアの名物キャラ的な位置づけではないかと推測される。
佐藤さん(仮名)は、いつも明るくひょうきんで、激務の中それをキープしているだけですごい人だと思うのだけれど、受け持ちエリアが広いにも関わらず、お客さんのことをよく把握している。お店への配達時間の配慮はもちろんだが、個人宅についても、常連さんの在宅時間をなるべく記憶し、出来るだけその人に会えそうな時間に配達に回るそうだ。再配達が少なくて済むよう、移動時間や距離のロスがないよう、とにかく独自に工夫している。
プライバシーを他人に知られたくない人にとっては迷惑なのかもしれないけれど、私のように在宅時間が不規則な人間にとっては本当にありがたいし、安心感がある。会社の規約の枠ぎりぎりいっぱい出るか出ないかのところで、どこまで自分がサービスを提供できるかを常に攻めているし、自分がお客だったらどうしてもらうと嬉しいか、いつも考えているのがわかる。接客業、サービス業は、結局最後は人柄、対個人のつながりだなぁと感じ、身が引き締まる思いがする。
私宛の荷物がある時、佐藤さん(仮名)はその日ラストの配達先にしてくれていて、稀に21時をまわることもあるけれど、たいてい帰宅しているのでむしろ助かる。いつも荷物を預かってから、10分ほどくだらないような世間話をするのだけれど、先日「この時間がほんとうにほっとするんです」と言われて、なんだか無性に嬉しかった。
ネットショッピングの普及で、配送を生業とする方々にはとても負担がかかっているのがわかる。着くなり焦るようにインターホンを連打する人、受付時間内に再配達の依頼をしたら不機嫌になる人、配達にきていないのに持ち戻り扱いする空配達や、時間指定するなと玄関先で怒りだす業者もいた。
この人、この仕事楽しくないんだな、と思うたび、なんとも言えず苦しくなるけれど、何も出来ることはない。ネガティブな感情を受けたら、影響されないうちにさらっと流すだけだ。
最寄り駅から家路、街道沿いを歩いていたら、すぅっとワゴンが横づけされ、「乗ってく?」と声をかけられた。
佐藤さん(仮名)、フレンドリーにもほどがあるよ。
つい爆笑したら、重だるい疲れがすっと抜けていった。