ポリアンナのハムエッグ
朝ごはんのたまご料理って、とても幸せだ。だし巻き卵も、たっぷりケチャップをかけたオムレツも、フリルのようなふちのめだま焼きも。ホテルの朝食の、少し冷めたスクランブルエッグも、大好き。
「愛少女ポリアンナ物語」というアニメがあった。
小さい頃持っていたその絵本のなかで、ハムエッグが登場するシーンがある。それが、私は羨ましくて羨ましくて、仕方なかった。我が家では「洋食より和食、油は極力控え、加工食品は使わず、肉より魚」というルールが徹底されていたので、食卓にハムエッグが登場することは1度もなかったのだ。
あらすじを覚えていなかったので、改めて調べてみた。
ポリアンナは、2人暮らしだったお父さんを亡くし孤児になり、叔母に引き取られるもひどくいじめられる。逆境のなかでも前向きに、楽しさを見つけようとする姿に、ポリアンナを囲む登場人物たちは皆感化され、心をひらき、次第に明るくなっていく。その矢先、ポリアンナは自動車事故で大怪我を負い、2度と歩くことは出来ないと宣告される…
過酷なストーリーが描かれていたはずなのに、あの絵本に出てくるハムエッグには明るい印象しかない。ポリアンナが素直で無邪気で、「光を見つける天才」だったからじゃないかな、と思う。ポリアンナの魅力的な人柄がそのまま、ハムエッグのご馳走感と結びついている。
朝ごはんのたまご料理で、ときどきハムエッグをつくる。ハムではなく、ベーコンにするときもある。かりかりに焼いたトーストに、出来たてのハムエッグをのせて食べる。それだけで、今日も何か良いことが起こる気がする。