イメージを形に
フィクションの世界に現れるシチュエーションに惹かれ、真似たいと思ったことが幾度もある。憧れを現実にすべく取り組む姿は、たとえ周りから滑稽に見られようが、本人が楽しければそれがいちばんだ。
先日、友人との会話で、露天風呂の話になった。
「湯舟に徳利とお猪口を載せたお盆を浮かべて、日本酒を呑みつつゆったり過ごす露天風呂」というシチュエーションに憧れ、大学時代の卒業旅行で実際に試してみた、との事。男所帯で小道具を持ち寄り、宿の備品まで持ち出し、なかなか思うように浮かんでくれない酒器と格闘しながら試行錯誤をくりかえすうち、酒の酔いも相まってぐったりしてしまったらしい。最終的には露天のへりにお盆を置いてゆっくり飲むのがベストだった、という考察を聞いて、申し訳ないが爆笑してしまった。
傍から見たらささやかな、けれど本人たちにとっては憧れの風景を体現するために、当時大学生の彼らがわちゃわちゃと、吟味して持参した小道具をもてあまし、ああでもないこうでもないと真剣になっている姿、しかも裸で、と想像したら、なんだかばかっぽいけれど、とてつもなく愛おしい、と思った。
なりたいイメージを具現化する、結果だけではなくその過程を楽しむということ、それはなんだか、すべての原点のように思えた。
露天風呂の話を提供してくれた彼は、イメージを具現化し、素敵な世界を創り上げる仕事をしている。ダンスだけでも見応えがあるのに、めいっぱい織り込まれる茶番劇には、緻密な大人の計算と、遊びの天才のような少年っぽさが入り乱れ、毎度痛いほど腹筋をほぐされる。「なぜ全員半裸にネクタイなのか」、そんな疑問を持つ間もないほど彼らのパフォーマンスは眩しく、その身体を流れる汗に、何度でも恋をする。
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