ピアプロリンクと二次創作の解説【前編】
はじめに
二次創作=公園と遊具の関係
ピアプロの話をする前に、二次創作の権利を整理します。初音ミクじゃない人も自分のキャラと権利者として読んでください。
初音ミクはクリプトンが権利者です。
じゃあ貴方が初音ミクの絵を描いたら、それはクリプトンのものでしょうか?
いいえ、違います。
キャラクターの権利と二次創作物の関係は、公園と遊具に似ています。
土地を持っているのはクリプトンさん。
その上に遊具をつくったり建物をたてたら、その部分は作った人が権利を持ちます。
でもあくまでもクリプトンの土地に建てたものなので、権利者がそれはダメだよ、うちの土地から撤去してねというなら、撤去の必要があります。
(移転して自分の土地に建てる=キャラクターをオリジナルに差し替えるなら問題はありません)
初音ミクが発売されブームになった時、大量の創作が産まれました。
クリプトンの土地に色んな人達が押し寄せ、好き勝手に建物や遊具を作ったり、面白い穴を掘ったり、土砂を持ち込んで山を作ったりしたのです。
それはとてもカオスで、そして最高に楽しい秘密基地でした。
昔のニコニコ動画は、権利なにそれ?とばかりに、パワフルだったのです。
反面、今のメルカリのように明らかにアウトなコンテンツが大量にありました。
さて、自分の土地に不法侵入されたクリプトンは考えました。
彼らを追い出すのでなく、この土地で誰もが遊べるルールを作ろう……と。
こうして出来たのが、ピアプロやPCL(ピアプロキャラクターライセンス)、キャラクター利用のガイドラインです。
違法建築な建物を全部撤去しても良かった。
玩具の城も、天使の像も、穴底のパンツも、最高の眺めのジャングルジムもブランコも、全部無くして更地にして、立ち入り禁止にして良かった。
(その当時は東方など一部コンテンツ以外は二次創作はあまり良い顔をしないのが普通でした)
でもクリプトンはそれをせず、この土地で遊んで良いよ。でも危険な建物はやめてね。ルールをつくるよ。という公園を整備することに決めたのです。
ピアプロやPCL、ピアプロリンク、キャラクター利用ガイドラインは、クリエイターと「初音ミク」そして創作文化とクリプトンを守る為に作られました。
これは非常に革新的なことで、後に二次創作を黙認するのはなく「ガイドラインを制定して利用の範囲を認める」会社が出てくる基礎になっています。
用語解説
わかりにくいので一度おさらいします。
わからないまま読んでも大丈夫。本当わかんないよねこれ。
時代を先取りしたPCL
PCLは当時ニコニコをメインとして活発だった二次創作を応援しようとしたルールです。
初音ミクは創作文化に支えられているので、何も言わないのは「誠実さにかける」(伊藤社長談)、けれど一人一人に許諾を出すのは数が多くて無理。
じゃあルールを作ってファンに協力して貰おうと、時代や状況を追認する形でスタートしました。
ちなみに音声や歌声は音源であり購入者は自由に使えるのでPCLとは別。(音源は購入時のルールに基づきます)
PCLやピアプロリンクは「初音ミク」などのピアプロキャラクターの利用(名称も含む)に関してです。
当時はまだまだオタクが後ろ指をさされ、差別が残っていた時代。
初音ミクを安全でクリーンなイメージにしておき、これを好きな人達が差別されない為にも、キャラクターイメージを守る必要がありました。
そのため初期は「初音ミク」のイメージを守るためにある程度厳しく運用されましたが、初音ミクが伝統文化とコラボするなど社会で市民権を得た現在は、随分と寛容になっています。
(カラオケも最初は初音ミクの名前を使わずに登録されていたほど。現在はfeatキャラクタ名を使用している)
(2014にクリプトン社員の菱山さんによってかかれた『ピアプロ・キャラクター・ライセンスのできるまで』を読むと、当時の雰囲気が窺えます)
ちなみに当時、よほど目に余ることが多かったようで、PCLを読むと制定時の必死さが伝わります。
特に他者の権利侵害に使われていることと、誹謗中傷や成人向けを子どもが検索して目にすることを問題視していたようで、「当社キャラクターの名誉声望を毀損してはならない」とまで書かれています。
PCLを広める努力
最初はルール運用を模索していた面があり、公式ブログで色々と解説をしていたようです。
これまでが無法地帯だったので、ルールに対する反発もあったようですが、創作物に関して、クリプトンは全てを放置するのではなく「初音ミク」とその文化を守る姿勢を見せました。
これらの努力がなければ、初音ミクは今日の地位や社会での扱いを得ることができず、どこか馬鹿にされる存在のままだったでしょう。
努力してすら当初は「アッコにおまかせ」で嘲笑されたくらいです。
このTBSの件ではクリプトンの伊藤社長が公式に抗議を発表。
後に『結局のところ「ネットの住人が勝った」と感じています』と述べるなど、クリプトンはファンと初音ミクの側に立ち続けていることがわかります。(参考記事)
(社長の抗議と顔文字コメントは実に当時の雰囲気がわかります)
伊藤社長は元々バンドをやっており、そのうち曲より音を創り出す→音源販売の会社を作り、音源を売ったり音源を輸入するようになりました。
それが、北大発ベンチャー企業のクリプトンです。
本人がクリエイターであるためクリエイターの側にたち、着メロや音源販売で利益を確保していたので、初音ミクはゆっくりマネタイズを模索していく方針を取れました。
2008年の記事に、伊藤社長の言葉や解説があります。
「ユーザーの二次創作を促す仕組み」「ユーザーの自己実現を後押ししたい」「最終的にはマネタイズを実現したいが、それはユーザーとコミュニケーションを図ることで解決の糸口が見えてくるのではないか」
「基本的に、二次創作したイラストをネット上に公開することは禁止していないが、二次創作物を販売する際には『お話ししましょう』という考え方」
このあたりがPCLのキーワードです。
非営利であればOK、ヤバいのはこっそりやって。企業はちゃんとお金を払ってね、という仕組みは現在まで続いています。
ピアプロリンクとは
ピアプロリンクは同人活動をするのに必要な手続きです。
無償配布や教育目的の利用以外は、厳密にルールを守るなら、二次創作頒布物=ピアプロリンク申請が必要です。
クリプトンさんが公式に認めている二次創作はピアプロリンクの範囲内だけで、例えば他企業の権利を侵害したり、成人向けなどキャラクターイメージを著しく損なうもの、海賊版などは認めることが出来ません。
ただし、クリプトンさんは現在まで、創作活動をなるべく推進していますので、通常の同人活動はこっそりやる分には(今のところ)問題ありません。
(代わりにクリプトンさんは認めていないし、通常の同人活動と同じく全てのリスクや責任は本人が負うことになります)
これらは制定当時10年以上前の同人活動、文化を前提にしています。
つまり同人CDや同人誌がメインだった頃で、10年以上経った現在にぴったりのルールではありません。
例えば当時は立体物=フィギュアが中心だったので、個別に審査や話し合いが必要でした。現在はアクリル製品や缶バッジなど、立体グッズが個人で簡単に作れるようになっています。
ルール上はアクリルスタンドなども立体物となり、個別審査が必要なのですが、現状は特に問題なく同人誌と同じように受理されています。ルールを書き換えるのではなく、運用を時代に合わせて柔軟に行っているのです。
なおPCLもピアプロリンクもいつでもルールを変更出来るからね!と書いてありますので、今後大きな問題が起これば、一気に出来ることが少なくなる可能性もあります。(よほどそんなことはありません)
具体的な申請の仕方、良いこと悪いこと、許可されている範囲は後半で解説予定です。
大切なことですが、ピアプロリンクは創作を応援するためのルールです。
けして取得、申請していない人を非難するものではありません。
ただし申請すると、クリプトンさんに「こういったグッズや同人誌を作ってる人がいるよ」「こういうニーズがあるよ」「こんなイベントしてます」と間接的に伝えることが出来ます。
なので個人的には、出来る場合は申請をお勧めしています。
申請が受理されると、こういうQRコードが貰えます。
かっこいいヽ(´▽`)/ なんかこう、ちゃんとしてる感じ!!
なお、このQRコードを読み取るとピアプロリンクの個別頁に飛び、違反申請などもそこから行うことができます。(ログインが必要)
上記の例だと、MEIKOさんの15周年楽曲コンテストを行った「非営利有償サービス」です。
このようにグッズだけじゃなく、イベントも登録出来ます。
ちなみにグッズ通販で使うのであれば、QRコードを通販頁に張ることも出来ます。
是非、登録してみてくださいね。
(後編へ続く↓)