たからもののさくらがい
桜貝の思い出。
わたしだけの宝物をなくした話。
***
当時6歳のわたしは、保育園の卒園遠足で先生の引率のもとバスで海(江の島方面だったような)へ。
青い海や潮の音、匂いに、幼いながらも新鮮さを感じてた。
周りのみんなは海辺でおいかけっこしたり、海水に触れてみたりして遊んでるけど、わたしはというと…
みんなと遊ぶわけでもなく、足元を見ながら1人で浜辺を行ったり来たり。
なんだろうこれ。
黒色のような白色のような灰色のような、みんな同じような形をしているけど、みんな少しずつ違う。
「これはね、かいがらっていうんだよ」
先生に教えてもらい、このときはじめて貝殻の存在を認識した。
その後も狂ったように1人で貝殻探し。
そしてみつけた!!
他の貝殻とぜんぜん違う、ピンク色でキラキラしてる貝殻!
少し欠けてるけど、陽の光を当てるとピカピカ輝いてる!
「せんせ〜い!これなんていうかいがら?」
「すごいね!よくみつけたね。これは桜貝(さくらがい)っていうんだよ」
「へぇ〜」わたしは宝物をみつけた気がして、桜貝を握ったまま、保育園へ帰るバスに乗り込んだ。
保育園につく頃、目が覚めた。どうやら疲れて寝てしまっていたみたい。
ふと手に目をやると、握っていたはずの宝物がなくなっていた。
「せんせ〜い!さくらがいがない!」
わたしは宝物をなくしてしまったことが悲しくて悲しくて、収拾がつかないほど泣いた。
保育園であんなに泣いたのはこのときと、大嫌いなレアチーズケーキをなかなか食べられなくて、外に遊びに行けなかったときくらいだろう。
***
わたしの宝物が見つかることはなかったんだけれど、
この出来事を思い出して思った。
小さい頃からわたしは知っていたのかもしれない。
自分の才能を。
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