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とにかく読むのが辛い本である。書いた本人も、体調を崩しながら書き上げた本である。

EMS代表(エッセンシャルマネジメントスクール)の西條剛央さんが『クライシスマネジメントの本質—本質行動学による3・11大川小学校事故の研究』を山川出版社から世の中に生みだしたのは、震災から10年が経過しようとしていた2021年2月14日です。

私がEMS2期生になったのは2020年1月でした。毎週講義があり、10回(10週間)ある講義は毎回講師の方が違い、ふだん考えたことにないようなテーマに、理解しようと頭で考えていくのがいっぱいいっぱいになっていた日々でした。だけど、大川小学校で娘さんをなくしてしまった「佐藤敏郎さん(震災当時中学校教諭だった)」の講義は、頭ではなく心の奥深くにしまってあった私の辛い過去に触れました。敏郎さんの講義を受けてからいまでもずっと、想像でしかない映像が頭にこびりついてはなれません。

それは、津波から命を守ろうと自ら動いて小学校の裏山に登ろうとした小学生達を止めた「大人」の制圧の場面です。

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西條さんは、独自に体系化した「構造構成主義(本質行動学)」をもとに、東日本大震災で「総合支援ボランティア組織」を創り、支援をしてほしい人が現実的に困っているものを支援する団体を運営していたそうです。それは、その後の災害時にも機能する組織として継続しています。
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『クライシスマネジメントの本質—本質行動学による3・11大川小学校事故の研究』をもとにイベント登壇している西條さんを追っかけています。


2021年4月14日(火)にあったイベントに登壇された荒井優さんが、このイベントの紹介をFacebookにあげています。一般公開部分なのでここに引用させていただきます。

【クライシスマネジメントの本質 本質行動学による3・11大川小学校の事故の研究】西條剛央著、山川出版、2021年
近年読んだ本の中で、一番おすすめしたいと思った本。
日本で教育を受けた人は、特に組織で働く社会人は、これは読んだほうが良い。東日本大震災で起きた最も悲しい出来事の原因を詳細に研究した書なのだが、行き着くのは、あなたにも僕にもこの事態を引き起こす可能性が高いということだ。
そして、そうならないためには何をすべきなのか、を実践を重んじてきた研究者としての著者が惜しげもなく披露してくれている。
学校関係者はもちろんなのだが、学校で教育を受けて育ってきた人たちにも、ぜひ読んでほしい。
特に最後の第三部には本質的で重要なエッセンスが書かれている。
原発事故後の対応も、コロナ禍でも対応も、そして、それぞれの組織や個人で抱えている課題への対応も、あらゆることに「個人の無自覚の不安・恐怖(裏の関心)に対応するための『不安管理システム(固定概念)』が構築されていて、このシステムこそが『変革を阻む免疫機能』の正体だ。」と課題の解決がうまくいかない真の原因を明かしてくれる。
筆者は、その不安や感情(裏の関心)に対して、「戦うのでも、打ち勝つのでも」なく、『抱きしめる』ことを奨める。「自分の中で、”なかったこと”にしてきた感情を認め、抱きしめることによって、望ましい状態を実現していくことができるようになる」としている。
存在(Being)そのものを認める、ということに深くつながっていて、自分の弱さや脆さを自身で抱きしめて良いんだよと絶対肯定されているところに著者の圧倒的な温かさがある。
震災後の大川小学校の敷地に初めて立った時の感覚を覚えている。
照りつける太陽が肌を刺し、びゅぅと北上川から吹きつけてくる砂っぽい風が身体をゆらし、抜けるように高い青空から見下されている。
目の前には津波により破壊され、教室の中がむき出しになった元学校が、ただそこにある。
「津波襲来時に、学校管理下にあったのは、76名の小学生、11名の教職員、1名のスクールバス運転手の計88名。その中で生き伸びたのはわずか生徒4名と教員1名の計5名。生存率わずか5.6%という戦後の学校教育史上類をみない惨事になってしまった。」(本書より)
ここにたたずむものに、この場所は問うてくる。
「なぜ、大川小学校にこのような悲劇が起きたのか。地震発生から津波襲来までの50分間、なぜ生徒と教員は校庭から1分ほどで上がれることができる裏山に避難をしなかったのか」
そして「あなただったら、どうするのか」と。
著者の西條先生は、10年掛けて研究を重ねてこの本を書かれた。
その執筆の本質的な動機を文末に書かれていて、涙なくして読めなかった。
読了後に、表紙が薄いピンク色であることに気づいた。白でも黒でもなく、この色をどうして西條先生は選んだのだろうか。
亡くなった子どもたちに、東北のきれいな桜を見せてあげたかったのではないかと思っている。
桜前線はちょうど今、東北を通過している。
ぜひ、多くの人に本書を手にしてもらって、桜を満開にしたい。
#優読書
#教師のバトン

もう一方、苫野一徳さんが書かれた記事はこちらです。

西條さんの新刊『クライシスマネジメントの本質ー本質行動学による3.11大川小学校事故の研究』、いま読んでいるところですが、震えが止まりません。
これほどにも胸に突き刺さってくるような研究書があるでしょうか。 
読者にこれだけ苦しい思いを与えるくらいですから、この研究に魂を込めた著者の苦しみは、いかばかりだったかと思います。
しかし、まさにその心に刺さる強度と言い、科学の本質をとらえた質的研究法の本領の発揮の仕方と言い、何より、学問のあるべき姿の指し示し方において……これは大げさでなく、学問史に残る歴史的名著と言わざるを得ません。
あの悲劇が起こった根本条件、本質構造を明らかにし、それを「反転」させることで、2度と同じことが起こらないよう、再発防止のための理論を作り上げる。
そう、学問は、このように人びとの役に立つことができるし、またそうあるべきなのだ。
私もまた、一学徒として、こうありたい。
そう、胸を熱くもさせていただきました。
ぜひ、皆さんにも、本書をお読みいただくとともに、こちらのイベント、ご参加いただけると嬉しいです。

お2人のことは知っている方も多いと思いますが、上記イベント案内に出ていますのでそちらをご覧ください。

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荒井優さん、苫野一徳さんお2人ともに「読むのが辛い本だった。」と仰っていました。読んでしまった多くのみなさんが、「何度も読むのを途中でやめて、それでも読んだ」と言い、著者の西條さんも「哀しい研究だった」と言っています。

この研究により、
条件が整えばまたこういう事故がおこってしまうよね。私達誰の心の中にも「間違ってしまう」部分があるよね。だからそうならないためにも、知っておこう。それこそが大川小学校で犠牲になった方々のいのちを大切に思って、これからの未来を拓くきっかけになるよね。
と考えて行動できる人を増やせたらいいなぁって思います。

この本では、なぜあのような事故が起きてしまったのかを詳細に記述しています。その記述内容は、ていねいに情報を集めて読み解く作業から成り立っています。その部分を読むのがとても辛い。

西條さんは、この研究で「組織のリスクマネジメントのあり方を精査するアセスメントシート」を作って発表しています。P.274に表が掲載されています。そのチェック項目をご紹介してみます。

【組織のクライシスマネジメントに関するアセスメントシート】
1.理念が形骸化している
2.組織が掲げている理念に反する行動をトップやメンバーがとっている
3.実質的に表に掲げられている理念に反する裏の理念のもとで運営されている
4.事なかれ主義に支配されており、不都合なことは「なかったこと」にしている
5.リーダーとして適正のない人がトップをやっている
6.メンバーに理念が共有されておらず、足並みが揃っていない
7.このままではまずいのではと思っても言えない雰囲気がある
8.素直に思っていることを話し合うことができない
9.本質が見失われており、形式だけ整えることに終始している
10.トップやメンバーが理念への貢献ではなく自分の利益にばかり関心をもっている

私もいろんな組織に所属していますが、この10項目を見て自分が所属している組織をひとつひとつ振り返っても、これをすべて達成するのはかなり難しいなぁって思います。自分自身も「なかったこと」にしてしまうことはよくあります。ひとりひとりのなかにある「形式主義」をなくすことなどできない。だから普段からどう生きていくか、あり方を内省し続けることが大切になってくるのでしょう。

大川小学校は避難マニュアルが形骸化されていて、有事の時に使えなかった。日頃からの備えがとっても大切だと研究からあきらかになっています。そういう意味で「読む防災グッズ」だとこの本が紹介されています。でも「読んで」それから「どう行動に移すか」「それをどう持続させ、適切に見直していくか」がもっと大切ですよね。

私も、西條さんの追っかけをしているけれど、それをどう行動に移していくのかが問われているなぁと思っています。

西條さんが研究してくださった、書き示してくださったこの本をどう有効利用していくか・・そこがとっても大事だと思っています。でもまずは多くの方にこの本を読んで考えてほしいです。私も考えます。そして、自分自身のあり方も振り返りながら修正していきます。

いまの日本の状況、困っている方々の状況・・・

その1つ1つを本質行動学に当てはめて考えていきたいと思います。仲間を募ってみようかなぁ・・・ひとりでは難しすぎるので・・・


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