「良いクリエイティブ」の作り方、説明できますか?
こんにちは、ひよこおじさんです。
みなさんは「"良いクリエイティブ"と呼べるモノってどんなモノ?」と問われ、自分なりの解を述べることができるでしょうか。
私はこの問いに対して、「この法則を守って作られたクリエイティブこそ、良いクリエイティブと呼べる」と、本記事をもってお答えします。
これからご紹介する「法則」は、デザイナーのみならず、むしろノンデザイナーである方にこそ参考にしていただける法則となっております。「そこまで言うなら読んでやろうじゃないの」という気持ちでも構いませんので是非読んでいってください。
1・必勝!!5段階の法則
まず私の考える「良いクリエイティブ」であるための条件、それは
「Why?が説明できるクリエイティブ」
です。
「なぜそのクリエイティブが生み出されたか?」が説明できるクリエイティブ。と言うことですね。
「コンセプトが一貫したクリエイティブ」と変換していただいても構いません。
「そりゃあ知ってるよ」と思われた方もいらっしゃると思います。
しかし重要なのはその「Why?の導き方」、「コンセプトの一貫のさせ方」です。
本記事のテーマでもある「クリエイティブをどうやって作りあげたか?」をどうやって説明するの?という点ですね。(頭おかしくなりそうだけど頑張ってついてきてください)
まず、これから私がする話をより理解していただくために、複数人が関わる制作案件において、とある課題が頻発しており、その課題は見過ごされがちということを知っておいていただかなければなりません。
その課題とは、クライアントやユーザーが抱える課題の解決方法を編み出すこと、そしてそれを「事業」として成り立たせるための制作フローが確立されていない。
ということです。
…は??
もうちょっと噛み砕いて説明しますと...
「コンセプトが一貫した=目的を見失わない」制作進行が大事と言うことはみんなわかっちゃいる。けど実際は↓
1、クライアントの課題を解決するプロジェクトが発足!
2、課題解決に向け、戦略や目標を立てました!目標を達成するには何かしらの「クリエイティブ」が必要です!
3、クリエイティブできたけど、お客さんに「なんか思ってたんと違う」って言われちゃった!成果も思うように得られてない…。
4、そもそもこのクリエイティブ、なんで作ったんだっけ!どこで間違ったんだ!^q^
っていう4コマ漫画になりがちですよね、ということです。
(皆さんも心当たりあるんじゃ無いでしょうか。私はあります。)
そしてこういった目的迷子にならないための対処法、「このワークフローに当てはめればクリエイティブ設計の説明もラクのチンよぉ!!!」という無敵の法則こそ、今回私がどうしても皆さんにご紹介したかった、本質的な課題解決のための5段階構造(以降、「5段階モデル」)というワークフローです(下記図)。
この5段階モデルはJesse James Garrett氏(以降、「ギャレットさん」)の著書「Elements of User Experience」の中で提唱されているワークフローで、デザイナーはもちろん、ノンデザイナーの方達にもクリエイティブな発想を可能にした、という点で高い評価を得ています。
上の図だけではちょっとイメージしづらいと思うので、「広告バナーの制作過程」にあてはめ、各項目を極限まで噛み砕いて表現すると以下のようになります。(制作工程の順番は下から上です。)
表層:こんなビジュアルのバナーになりましたよ!
骨格:テキストと画像はこれとこれ、配置はこんな感じ。この要素を一番目立たせよう。
構造:マンションの売りポイントである「駅近」、「広い間取り」、「破格」を訴求したら興味持ってくれそう!ワンランク上な暮らしを求めている人向けの訴求だから、高級感ある感じでまとめたいなぁ。
要件:LPの存在を世に知らせるために、広告バナーを出しましょう。期間は1ヶ月、ターゲットは月島セレブに憧れる奥様です。
戦略:マンション全然売れなくて困った。そもそもLPにも全然人来てねえから内見申込数も増えるはずがない。とりあえずLPへの流入を増やしましょう!
イメージできましたでしょうか?
本来であれば各段階もう少しロジカルに進行されるべきではありますが、ここでは段階を増すごとに
「じゃあどうやって課題を解決しよう?」
という"具体性"が積み上がっている、ということをわかっていただければ幸いです。
ビジネスの場では必ずと言って良いほど、「誰かが抱える課題」を解決するためのプロダクト、クリエイティブが生み出されます。
その課題に対してギャレットさんは「表層(ビジュアルデザイン)だけ作り込むのでは無く、戦略〜骨格という前段階に基づいて表層は設計されるべきである。」と、5段階モデルを通じて説いてくれています。
(もちろん、質の良いビジュアルを作るスキルもとても重要です。日本の「デザイナー」職にはそのスキルを求められていますよね。)
2・言葉は違っても良い
ちなみにこの5段階モデル、すごいところがもう一点あります。
それは、「人によって、様々な切り口で説明できる」という点です。
例を挙げます。
株式会社GKデザイン機構のCEOである田中一雄氏は自著「デザインの本質」の中で、下記図と共に、次のように語っています。
「デザイン思考」と「デザイン経営」に必要な能力
一般的に認識されているデザインは「造形」を基本としているが、「デザイン思考」や「デザイン経営」において必要とされる能力範囲はそれぞれ異なっている。認識すべきことは、経営者や企画開発者などの「非デザイナー人材」に必要な「デザイン能力」の活用である。
ギャレットさんが提唱する5段階モデルより、こちらの方がハラオチした、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
表現が少し変わりましたが、田中氏の訴えも、前述したギャレット式5段階モデルと同じく、「デザイン」と言うと「デザイナーがモノの見た目を作る作業」と解釈されがちだけど、役割を与えられた人がちゃんと課題の観察から始めようね、そこからを「デザイン」と呼ぶよ。と説いてくれています。根っこが同じであれば、どんな言葉に落とし込んでも良いわけです。
3・みんなでバトンを繋ごう!
この5段階モデル達を、良い意味で頭のおかしいハイパーデザイナーや、ハイパーワンマン経営者が一人で遂行してしまえれば話は早いのですが、現実にそんな人材は1000年に1人くらいしか生まれてきません。(しらんけど)
だからこそ、5段階モデルの各フェーズをプロジェクトチーム(営業、ディレクター、デザイナー、エンジニア、クライアントの担当者etc...)で役割分担し、メンバー各々が関わるフェーズでデザインプロセスの材料と成果物を明確にする、という共創意識がとてもとても重要になります。(自戒)
戦略段階でのアウトプット(成果物)はコンセプト、プロダクトビジョン等となりますが、このアウトプットは次段階、要件定義のための「バトン」となります。これが無くしては要件段階のストーリーボードやカスタマージャーニーマップも作れません。そしてこのアウトプットがないと、構造段階の「必要な情報の洗い出し」→骨格段階の「ワイヤーフレーム」→表層段階の「プロダクト/クリエイティブ」(表層)に繋がっていかないのです。
(上記図は各フェーズによる役職の割り振り一例。組織によっては関わる範囲が減ったり増えたり、呼び名が変わったりはあるとは思うがベースは変わらないはず。)
そしてこの5段階を経て生み出されたクリエイティブは、本記事のテーマとする「なぜこのクリエイティブが生まれたのか?」を戦略から順を追って説明することができるようになるため、メンバー全員が高い腹落ち感(納得感、共感)を得た状態でプロジェクトを進行することができます。また、プロジェクトの途中でメンバーの離脱や入れ替わりがあった際にも、既存メンバーにプロセスが浸透していればプロジェクトが大きく傾いたり、最初から設計のし直しとなるケースは限りなく0になるでしょう。
徹底したプロセスの遵守は一見、工数がかかり、非効率的、遠回りに見えるかもしれません。
しかし、自分の仕事の領域に自ら壁を作らず、上下の段階を意識しながらバトンを作り、繋いでいくことが、良いクリエイティブデザイン、ひいては良いチームデザインだと私は考えています。
私がリスペクトする制作会社たちはこの当たり前とも思えるバトンつなぎを全社で徹底して取り組めている印象を受けます。会社ごとの「色」というのはこのベースの上に成り立つものではないでしょうか。
おわり。
4・圧倒的宣伝!
あ、最後に宣伝になるんですけど、この記事でも触れた「デザインの本質」という本、本当にオススメです。
「デザインってなんだよ!」「あたしにゃ理解不能だよ!」「正解なんてあるのかよ!」「デザイン経営とかデザイン思考ってよく聞くけど説明できないねえ!」と感じておられるノンデザイナーの方達にも読みやすく、わかりやすく、デザインの本質、デザイン経営とはなんたるかを教えてくれます。何かしらの制作に携わる人には是非読んで欲しい一冊となっています。この本買ってくれればこの記事とかほんと、忘れてくれて良いです。言いたいこと全部書いてあるんでそこに。参考文献のリンクからどうぞ。
ほんとにおわり!!
ざっくりまとめ
・良いクリエイティブの条件は「Why?が説明できること」
・クリエイティブの目的を迷子にせず、成果を得るためにはギャレット氏が唱える「5段階モデル」の導入が有効
・「デザイン」はデザイナーだけでするもんじゃないよね。
・5段階モデルの導入にはクライアント含むメンバー全員の共創意識が大事。
・5段階モデルを導入すると「Why?」が説明できるようになるため、クライアント含むメンバー全員が納得感を得た状態でプロジェクトが進行できる。
・「デザインの本質」、読もう!
本記事は以下の文献達を足して割って最後に私の自戒をかけたような記事です。さらに理解を深めたい方は参考文献達に目を通していただければと思います。
『UXを構成する5つの段階を振り返る』- UX TIMES
『UXデザインにおける5段階モデルとは?』- Good patch
『Elements of User Experience』著:Jesse James Garrett
『デザインの本質』著:田中一雄