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各国産の肉と肉料理の特徴


はじめに

世界の食肉生産量

 世界の食肉生産量は過去20年間で大きく伸びている。牛肉・豚肉・鶏肉の合計をすると約20年前の2000年は1.8億トンだったのに対し、2020年現在は2.7億トン(現在2023年でもデータの変動は見られない)に増えていった。特に日本では消費者の健康意向が高まったことや宗教面での制約がないこと、安定的な生産方法であることから鶏肉の生産量が3年前の59万4223トンから168万5351トンという過去最高の記録を出した。またその一方で、豚肉の生産量も2017年当時は89万トンだったのに対し、92万トンと右肩上がりにある傾向にある。牛肉は前年度とほとんど変わらず安定した生産量となっている。牛肉や鶏肉の最大生産国はアメリカ合衆国、豚肉の最大生産国は中華人民共和国となっており、他にもブラジルやヨーロッパ連合が世界の食肉生産量の大半を占めている。

肉についての基礎知識

 そもそも食肉とは、『広辞苑』より説明の1番目に「魚鳥獣などの肉を食うこと」とあり、説明の2番目に「食用とする鳥獣の肉」を挙げている。広義には魚も肉と捉えるが、日本では魚以外の動物を肉と捉える。一般に家畜化された哺乳類を肉畜と呼び、牛・豚・羊・山羊・馬・トナカイ・水牛・ヤク・狼・虎・ライオン・ロバ・ラバ・ウサギなどから用いられる。主に消費されるのは豚肉と牛肉で、それ以外では羊肉の消費が牛肉の数分の一程度あるくらいで、微々たるものである。
 豚肉には体の形成に欠かせない良質なタンパク質やビタミンB1が多く含まれており、脂質にはコレステロール値を上昇させない一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が多く含まれているという特徴がある。
 他方で牛肉は、肉の部位とホルモンの部位の2種類があり、部位ごとに肉のキメ、味、硬さなどが異なる。(図1・図2)

図1 牛肉の部位
図2 牛ホルモンの部位

そして各牛肉ごとの味などはこのような感じである(表1)。

表1 部位ごとのカロリー・硬さ早見表

 また食用に供する家禽(飼育鳥)を食鳥と呼ぶ。一般的に鶏・アヒル・七面鳥・ホロホロチョウ・ガチョウ・ウズラ・カワラバトなどを指す。だがその他の家禽であっても、食用に供する場合は食鳥と定義される。食鳥肉の中では鶏肉の消費が飛びぬけて多く、牛や豚とともに世界で最も消費される食肉のひとつである。それ以外の食鳥肉では、七面鳥の消費量が米国でクリスマスの時期に極端に伸びるのを除き、鶏肉に比べれば微々たるものである。鶏肉は必須アミノ酸やビタミンA、抗酸化作用のあるイミダゾールジペプチド(アンセリン・カルノシン)が豊富にかつバランスよく含まれており、高タンパク質で低脂肪であることが特徴である。
 また豚肉の部位についても赤身であったり白身であったり、肉のキメ、旨味、コクもそれぞれ違う。鶏肉の部位についてもこれに同じである。(詳しくは図参照)

豚肉の部位


鶏肉の部位

 肉の格付けでは、表1にも載っているように、味・食感に加えて香りにより決まる。食肉の呈味成分としては、酸味を呈する乳酸をはじめとする有機酸、うま味を呈するアミノ酸や核酸(イノシン酸)およびペプチド、塩味を呈する無機塩類、甘味を呈する還元糖などがある。実際にはうま味や酸味が重要だと考えられている。食肉を特徴付ける「肉らしい香り」は複数の成分によってもたらされるもので、いわゆる核となる成分は存在しないと考えられている。肉の種類などによっても成分は異なり、一概に説明できないのが現状である。肉の悪い臭いについては、オスに由来するいわゆる性臭や、糞便に由来するインドール系の臭気、および保存によって生じる酸化臭などが知られており、それぞれ成分の同定が進められている。食肉の食感は、主に構成するタンパク質のうち、筋線維を構成するものと、筋肉内結合組織を構成するタンパク質によってもたらされているものと考えられている。食肉の外観である赤い色はミオグロビンによるものであり酸素と結合してオキシミオグロビンとなると赤色が淡くなる。さらに酸化されるとメトミオグロビンになるが、このメトミオグロビンは、消費者に好まれない褐色を呈する。食肉を放置すると色が悪くなるのはこのためである。
 21世紀初頭では、主に畜産によって生育させられた動物は、屠畜場(食肉工場)へ送られ、屠殺(屠畜、屠鳥)により解体され、食肉が製造される。そして必要に応じて熟成を施したり、ハムなど加工肉の原料となる。ジビエ(野生動物の狩猟による肉)の料理を提供するレストランのシェフのもとに直接に届けられることも多かったが、ジビエ類の解体・熟成を専門に行う業者もいる。そのためまずは家畜を飼養し管理する肥育を行う必要がある。誕生直後から肥育を行うことはあまり無く、一般的に肥育に適する月齢まで育成したものを肥育に供する。肥育期においては、肉が十分つくだけでなく、肉質が十分高まるような管理が行われる。牛肉1キロを得るためには、その10倍の穀物が必要とされている。そして家畜の死後、解体された牛肉は低温で保存し、熟成される。熟成に要する期間は畜種ごとに異なる。2〜5℃で貯蔵した場合、牛は7〜10日、豚は3〜5日、鶏は半日ほどで解硬される。ウシなどの場合は、解硬のみならず、熟成によって生じる独特な香気を十分に発生させるため、十分解硬した後もさらに長期に熟成させることもある。食肉の流通形態は、大きく屠体、枝肉、部分肉、精肉に分けられる。また、ハムやソーセージなどのように加工品として流通する場合もある。
 食肉は基本加熱調理を行うが、その過程で塩漬を行ったり、燻煙を行ったり、発酵・乾燥させたりするなど様々なことを行う。加熱調理は、加熱によって細菌を死滅させることで衛生を確保するとともに、食感を改善し、風味や香気を付与する。加熱調理には大きく衛生面確保、食感改善、味の付与、香気の付与などを行う役割があり、塩漬などの調味を行ったりして味を調整する場合がある。
 では具体的に世界の食肉はどのようなものがあり、それを応用した肉料理はなにがあるのかを概観していこうと思う。

国産と外国産から比べた肉の品種

牛肉

 世界では、オージービーフとよばれるオーストラリア産牛肉は最も多く輸入されている。オーストラリアでは広大な土地を利用して、牛をのびのびとした牧場で、自然に育つ牧草を餌に、放牧している。放牧の過程で牧草を食べて育つグラスフェッドという肥育方法を行っており、運動量が多く、エサも牧草であるため、肉質は赤身が多くなることが特徴的である。エサが牧草であることによって独特の臭みがあり、、オーストラリア産の牛肉は比較的栄養価が高い。一方アメリカでは、グレインフェッドフィードロッドという肥育方法が主流になっている点に挙げられる。グレインフェッドとは、穀物を中心とした高エネルギーなエサで肥育するということで、穀物をエサとすることで、臭みはなく、柔らかい肉質になりやすいのが特徴だ。一方、フィードロッドとは、出荷される前の牛を柵で囲い込み、濃厚飼料を与えて育てる方法で、適度な脂肪がついた柔らかい肉に仕上げることが可能となっている。また、アメリカ産は、常にスーパーマーケットなどで特売されているということもあり、価格は非常に安いです。アメリカでは霜降り肉よりも赤身が好まれ、上質な赤身肉を作る研究などが行われているので脂肪分が少なく、そういう意味ではヘルシーであるいえる。そして国産牛肉は、品種や生まれた土地に関わらず、すべての飼育期間のうち、日本国内で飼育された期間がもっとも長い牛が「国産牛」に該当する。特徴としては牛小屋で飼育されているという点である。一般的にはエサとして穀物・とうもろこし・ふすまや稲わら、場合によってはコメなど、様々な飼料が与えられている。また特に国外の牛と国内の牛を繁殖させて育てた和牛においては、日本独自の肥育方法とエサによって、ラクトンと呼ばれる香り成分が多く含まれており、加熱すると甘く、香りが良いという特徴がある。この和牛は赤身の中に脂肪が細かく入り筋肉内脂肪の比率が高いことである。いわゆる霜降り肉や鹿の子肉と呼ばれる肉質である。しかし、これは和牛4品種のうち、黒毛和種にみられる特徴で他の3品種では霜降りの度合いは高くない。霜降りの度合いは性別、去勢の有無、肥育方法によっても異なるが、黒毛和種の場合、遺伝子が大きく関わっている。また黒毛和種の脂肪質は、一価不飽和脂肪酸(オレイン酸など)の含有率が高いことで知られる。一般に牛脂の融点は40~50度であるが、一価不飽和脂肪酸は融点が低いため、和牛肉の脂肪の融点はバターの融点(30度前後)以下である。そのため和牛肉を口の中に入れた途端体温で脂肪が溶け出し、それが霜降り同様、和牛肉独特の柔らかい、とろけるような食感を生み出す大きな要因の一つになっていると考えられている。日本は主に黒毛和種の他、褐毛和種、日本短角種、無角和種、交雑種、ホルスタイン種などに分けられる。アメリカではアバディーン・アンガス種、ヘレフォード種、ブラーマン種、シメンタール種、シャロレー種、リムジン種、ショートホーン種など色々ある。その中で農務省が、部位の美味しさを最高品質であるプライムからコマーシャル、チョイス、ユーティリティ、セレクト、カッター、スタンダード、キャナーの8つに等級分けされており、この評価基準はアバンダント、モデレート、モデスト、スモール、スライトというような肉質の等級分けにより区分される。これは豚肉、鶏肉においても同じである。

豚肉

 世界の食用豚には純血種・在来種があるが、その土地特有の飼料や気候に合わせて進化を遂げてきた在来種の味、それがわかる人こそ本物の豚肉好きかもしれない。例えば、スペインの「イベリコ豚(ベジョータ)」は2年間放牧した後、カシ林でドングリを食べて育ち、ハンガリーの「マンガリッツァ」は広大な草原で放牧され、牧草なども食べて育つ。想像しただけでも、良質な豚が育つことは容易にわかる。大規模な養豚が盛んとなった今では改良種に押され、数は少なくなっているが、丁寧に育てられたプレミア豚として、人気を博している。一方、日本では1971年の豚肉輸入自由化以降、生産性よりも肉の質を重視して豚肉が作られており、改良された交雑種で地域色・個性豊かな銘柄豚が生まれている。「かごしま黒豚」は特産品のサツマイモを食べて育つおかげでさっぱりとした味になるのだ。
 イベリコ豚はスペイン・イベリア半島で飼育され、どんぐりや木の根を食べて160〜180kgに成長。この頃に摂取した脂肪が筋肉を霜降りにする。独特の香りと脂が人気である。フランス・ピレネー地方西部に生息していたバスク豚は大自然の中で放し飼いにされ、栗やドングリを食べながら野山で育ち、120〜160kgになる。肉質はやわらかく、脂はさっぱりとしている。イタリア・トスカーナ地方原産で、10か月で80kgに成長する。飼料はパンや穀物、野山の草木の根や実で、生ハムに加工されているチンタセネーゼ。味は濃厚で背脂のラードにも定評がある。マンガリッツァ豚はハンガリー原産で、全身がカールした毛で覆われている。12〜14か月で145kgに成長。広大な草原で放牧されている。脂肪の融点が低く、口どけがいい。中国浙江省金の金華豚は7か月前後で70kgに成長する小型品種。中国の食材「金華ハム」の原材料。肉はやわらかくてキメが細かく、保水性もあり脂には甘みがある。
 一方日本の庄内豚は、180日前後で110kgに成長する。ランドレース・大ヨークシャー・デュロックの三元豚。あっさりした甘みのある脂肪とやわらかく味わいのある赤身が特徴である。そして黒いダイヤモンドとも呼ばれるかごしま黒豚は締まった食感とほのかな甘みが特徴である。群馬県の和豚もちぶたはつきたての餅のようにもちっとしている歯ごたえからこの名が付いた。ビタミンEが豊富でキメが細かく、美しいつやのあるピンク色。脂肪が良質なため日持ちする。沖縄県のアグー豚は小型で出産頭数が少ない。10か月前後で80〜90kgに成長する。歯切れのいい食感と粘性があり、味のキレがいい。コレステロールが通常の4分の1しか含まれていない。北京黒豚・バークシャー・デュロックをかけあわせた三元交配の意味と未来への可能性を込めてつけられたのがTOKYO Xという豚であり、肉の色は淡いピンクでキメが細かく、ジューシーなのが特徴。
 他にもランドレースやデュロック、中ヨークシャー、大ヨークシャー、バークシャー、ハンプシャー、三元豚や四元豚といった種類がある。

鶏肉

 養鶏が盛んな地域では特有の地鶏品種が存在することが多く、大きくブロイラー、地鶏、銘柄鶏に分かれる。ブロイラーは、短期間で急速に成長させる狙いで作られた商業用の肉用鶏の専用品種の総称である。品種としては、白色ゴールド種の改良種、白色プリマスロック種の改良種、白色コーニッシュの改良種等を交配選抜したものであり、生育がとても早く現在では生後5 - 7週間で出荷され、最大2 - 3kg前後の肉が取れる。日本においては、2017年度に6億7771万3千羽のブロイラーが出荷されている。もともとはアメリカの食鶏規格の用語で、孵化後2か月半(8-12週齢)以内の若鶏の呼称であった。ブロイル(broil)とは、オーブンなどで丸ごと炙り焼きすることの意味[4]で、ブロイルして売るのに適した大きさの鶏であるため呼ばれた名前。旧東ドイツでは、鶏の品種にかかわらず、チキンのグリル料理やロースト料理がブロイラーと呼ばれた。他方で地鶏は、在来種純系によるもの、または在来種を素びなの生産の両親か片親に使ったものである。飼育期間が75日以上であり、28日齢以降は平飼いで1m2当たり10羽以下で飼育しなければならない。「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(いわゆるJAS法)の規定は全業者への強制力があるわけではなく、地鶏は地面で育てた鶏、もしくは地元の鶏などの意味だと主張されることもあるが、JAS法の定義を満たさない鶏の加工品を地鶏として売ることは「不当景品類及び不当表示防止法」(いわゆる景品表示法)違反の恐れがある。代表例に名古屋コーチンや薩摩地鶏などがある。また銘柄鶏もここに含まれてとても美味しく銘柄化した鶏肉となる。

各国の特徴的な肉料理

ヨーロッパ

●コック・オ・ヴァン
雄鶏の赤ワイン煮込み料理。フランス・ブルゴーニュ地方の郷土料理であり、代表的な料理の1つである。鶏もも肉、ベーコン、マッシュルーム、タマネギなどを赤ワインで煮込み、黒コショウの風味を利かせたもの。元来は肉の硬い老いた雄鶏を食べやすくするために考案されたレシピであるが、低温で長時間煮込んでも煮崩れず、若鶏には出せない滋味が現れる。シチュー用の若鶏を使うのでなければ、身を柔らかくするために一晩以上赤ワインに漬け込まなければならない。
●ビーフシチュー
赤ワインやトマトをベースに牛肉、ジャガイモ、ニンジン、セロリ、タマネギなどを、香味野菜を加えて煮込む。イギリス発祥の料理である。ビーフシチューの作り方は牛肉とタマネギ、ニンジンなどの野菜をブイヨンで長時間煮込み、塩、胡椒、トマトピューレ、ドミグラスソースなどで調味する。用いられる肉の部位は脛やバラが多いが、タンを煮込んだものは特に「タンシチュー」と呼ばれ人気が高い。尾の肉を使った「テールシチュー」もある。いずれも汁の量は少なめで、肉などの具材にボリュームがあり、スープのように汁を飲むことよりも具を食べることが主体となることが多い。日本では、明治初期から洋食レストランのメニューに取り入れられ、小麦粉とバターを炒めて作るブラウンルーを用いることが定番となっている。アイルランドにもアイリッシュ・シチューという料理を作っている。
●ポークシチュー
豚肉を使ったシチューでこちらはフランスで流行った。まず鍋でオリーブオイル少々を熱し、バターを少々加え、そこに豚肉を熱し焼き色がついたら裏返し、玉ねぎとエシャロットを加え、そこにブイヨンの素と水を加え、1時間ほど煮る。その後、ジャガイモを加え、さらに15~20分ほど煮れば出来上がり。
●カスレ
 豚肉ソーセージや鴨肉などの肉類とインゲンマメなどを、料理の名前の由来にもなったカソールと呼ばれる深い陶製の鍋に入れて長時間煮込んで作る。地方により様々なバリエーションがあるが、有名なのはカステルノーダリのものとカルカソンヌのもの、トゥールーズのものである。カルカソンヌではヨーロッパヤマウズラのブレゼが加わる場合があり、フォアグラの名産地トゥールーズではガチョウのコンフィが加わる。日本のフランス料理店で良く見られる、ソーセージに鴨(アヒル)のコンフィという組合せも多い。
●オッソブーコ
ミラノおよびロンバルディア州を代表する料理のひとつ。仔牛の骨付きスネ肉を厚さ4cmの輪切りにしトマト、白ワイン、ブイヨン、香味野菜などと煮込んで、グレモラータを加える。オッソ・ブーコはイタリアにトマトが伝来する前から作られていたため、古いオッソ・ブーコのレシピにはトマトが入らずにアンチョビをすりつぶしたものをグレモラータとともに加えた。この料理の主な材料である仔牛の脛肉は、比較的安価、風味豊かであり煮込むと柔らかくなる。他の部位よりも骨と肉の割合が高い脛肉の上部を使用する為、伝統的に肉に切れ込みが入れられる。それ故、脛肉は約3cmの厚さに切られる。レシピは様々だが、穀粉を塗してからバターで炒める物や、バターの代わりに植物油やラードを使う物もある。蒸し煮に使う液は、通常は野菜で風味付けをした白ワインと肉の出汁を組み合わせた物である。
●サルティンボッカ
仔牛肉・鶏肉・豚肉などに、生ハム(プロシュット・ディ・パルマ)とセージを乗せたり並べた料理で、単品あるいはワイン・オイル・塩水のマリネと共に盛り付けられる。好みによってはケッパーをトッピングする。イタリアローマを代表する料理であるが、スイス南部、イタリア、スペイン、ギリシャでポピュラーな料理である。この料理の最も有名な調理法は、ローマ風サルティンボッカで、薄切りの仔牛肉に、プロシュット(または生ハム)セージの葉を巻き上げたものを、マサラ酒や白ワインとバターで仕上げたものである。一説によると、その名に反してブレシアが発祥とも言われている。
●ポルケッタ
風味がよく、脂肪の多い、しっとりとした骨なしのポークローストで、イタリアの伝統料理である。豚肉は骨を取り除き、肝臓、野生のフェンネル、すべての脂肪と皮を詰めた状態で慎重に配置し、串焼きおよび/またはローストする。ポルケッタは通常、ニンニク、ローズマリー、フェンネル、または他の多くの場合は野生のハーブを詰めたものに加えて、強く塩を加える。またこれは北アメリカにも広く伝わった。
●ハンバーグステーキ
ハンバーグの起源は18世紀頃のドイツ・ハンブルクにあり、名称もハンブルクの英語発音から「ハンバーグ」となった。ドイツ、ハンブルク地方から、アメリカに移民する船において、故郷のタルタルステーキが食べたい乗客の希望にそって、コックが野菜くず乾燥肉を戻したものを焼き固めて焼いたものが原型である。主に挽肉とみじん切りにした野菜にパン粉を混ぜ、塩を加えて粘性を出し、卵を繋ぎとしてフライパン(場合によってはオーブンなどを併用)で加熱して固めたものである。大抵は付け合せに温野菜やサラダが用いられ、様々なソース類で味付けがされている。ナイフやフォークといった食器を使わなくても簡単に噛み切れるので、パンに挟んでハンバーガーにすることもでき、ファーストフードなどでも主力商品となっている。調理工程内に様々な工夫を凝らす余地が随所にあるため、非常に多くのバリエーションが存在する。味付けや使用する肉の種類、挽き具合、混ぜ込む材料や焼き加減などに工夫を凝らすことが可能である。日本ではチーズやトマトソース、デミグラス、シャリアピンソースといったソースの他、照り焼きソース、大根おろしと醤油ベースのソースなど和風の味付けがなされることも多い。また、レトルト食品のハンバーグは調理が簡単である。一度焼いたハンバーグをそのまま、またはソースとともに封入することで、パックごと湯煎するだけで食卓に出すことができ、少々の材料面における味の不備も漬け込むソースでフォローできること、衛生的な生産工場(セントラルキッチン)による大量生産によって非常に安価に製造できるメリットが大きいため、家庭用・業務用ともに広く普及している。日本ではファミリーレストランにおいて、主力メニューであると同時に収益率の高い商品となっていることが多い。びっくりドンキーやビッグボーイ、炭焼きレストランさわやかのように、これをメインメニューに据えた「ハンバーグ専門店」も存在する。特に児童に好まれることもあって学校給食でも定番の人気メニューである。日本では米飯とともに食べるおかずや定食としても一般的だ。また、労働者向けの大衆食として広まったハンバーグだが、近代フランス料理の父であるエスコフィエは高級料理における定番料理としても記載している。
●アイスバイン
豚のすね肉をハーブやスパイスなどで塩漬けにしたものを、玉ねぎやセロリ、香味野菜、グローブなどで煮込んだドイツの定番料理。ポトフやスープにして食べると美味しい。
●レバークネーデルスッペ
中央ヨーロッパで一般的な肝臓団子のスープ料理である。レバーやマーイは肝臓、クネーデル(クロースともいう)やゴンボーツは団子のことである。レバークネーデルやマーイゴンボーツは「レバーを含んだ団子」、ズッペやレヴェシュはスープを意味している。ドイツ南部からオーストリアにかけてはレバーシュペッツレ・ズッペというバリエーションも存在する。これはレバー生地を団子状ではなく、シュペッツレに似た麺状に成型したものである。
●グヤーシュ
ハンガリー起源の料理である。ハンガリーではスープであるが、ドイツでは一般的にシチュー料理を指す。 ハンガリーを代表する料理であり、ハンガリーのグヤーシュ共産主義という名称のもとにも使われた。牛肉とラード、タマネギ、パプリカなどから作られる。パスタ類やサワークリームを加える場合もある。放牧や農作業をしていた大ハンガリー圏の人々が、わざわざ時間をかけて自宅で昼食をとる手間を省くため、外へ釜を作り大鍋で昼食用に作られたスープである釜煮グヤーシュが起源。現在でもハンガリーや現・ルーマニア領トランシルヴァニア、旧上ハンガリー、現スロヴァキアやセルビアのヴォイヴォディナ自治州などではこの伝統的なスタイルのグヤーシュを食べている。戦時中の移動部隊の食事にもなっていた。家庭においては日本の味噌汁のような存在である。ドイツなどのものはハンガリーとは異なり、どちらかというと「蒸し煮・シチュー」に当たるものを指す。かつての大ハンガリー(概ね現在のハンガリーにオーストリアのブルゲンランド地域、スロヴァキア、ルーマニアのトランシルヴァニア地方、スロヴェニアの一部、クロアチアのスラヴォニア地方、セルビアのヴォイヴォディナ地域を加えたもの)をはじめ、オーストリア、ドイツ南西部バイエルン地方、北イタリア、スロヴェニア、チェコ、ポーランドのシロンスク地方、クロアチア、セルビアなど中欧一帯で代表的な料理として食べられている。また、モンゴル料理のひとつである「グリヤシ」はグヤーシュがモンゴルに伝わった際に、羊肉をメインに使う形でモンゴル風にアレンジされたもので、“グリヤシ”の名前も「グヤーシュ」がモンゴル語の発音に合わせて変化したものである。ただし、モンゴルにはないパプリカなどは使われておらず、事実上、羊肉の塩味煮込みに変化している。
●シュニッツェル
オーストリアの肉料理。ドイツ、オランダ、東欧からイスラエルやトルコにかけての西アジア圏でも盛んに食べられる。本来は仔牛肉を用いてミートハンマーで叩いて薄くし、細かいパン粉を付けて揚げたものをいう。パン粉を挽き立ての黒胡椒で味付けしておくこともある。やや多めのバターかラードで揚げ焼きしたもので、日本の豚カツのように多量の油を使用する揚げ物ではない。実際には豚肉や鶏肉も使われる。イスラエルでは、当地の多くを占めるユダヤ教やイスラム教で豚肉を食べる事が禁じられているため、鶏や七面鳥の胸肉で調理され、豚肉で調理されることはない。オーストリアではレモンを絞って食べることが多いが、クランベリージャムで食べることもある。スウェーデンではオーストリアとは異なり、グレイビーソースを添える。オーブンで焼いたジャガイモ、フライドポテト、あるいはポテトサラダなどを付け合わせにする。米を添えることもあるが、これは1980年代以降に流行したもので、純粋主義者から見ると邪道と考えられている。
●ザウマーゲン
ドイツ・ラインラント=プファルツ州のソーセージ郷土料理。ソーセージは「腸詰め」とも表現されるわけではあるが、ザウマーゲンはケーシングに腸ではなく豚の胃袋を使用する。胃袋の中に詰めるのはハーブや香辛料を混ぜた一般的なソーセージの中身に加えて、角切りにされたジャガイモがたっぷりと入る。厚めに輪切りにしたものを温めて提供され、付け合わせにはザワークラウトが一般的である。ドイツの連邦首相だったヘルムート・コールの好物としても知られ、輪切りにしたものは「プライム・ミニスター・ステーキ」とも呼ばれる。
●ローストビーフ
伝統的なイギリス料理のひとつ。牛肉の塊をオーブンなどで蒸し焼きにし、薄くスライスしたもの。焼きあがった後は薄くスライスして、グレイビーをかけて食べる。薬味としてホースラディッシュ、マスタードやクレソンとともに供される。またサンドイッチの具やハッシュドビーフに用いられることもある。中身をほんのり赤みが残る程度に焼き上げるのが最上とされている。イギリスではローストビーフは伝統的に日曜日の午後に食べる昼食(サンデーロースト)のメインディッシュとして扱われ、この際にはヨークシャー・プディングを添える。もっともかつての貧しい家庭においては、ヨークシャー・プディングの量を増やして腹を満たし、ローストビーフの量を節約する事があり、実質上、主食と副食の関係が逆転する場合もあった。残り物の冷たいローストビーフは、翌日月曜日に チップス(フライドポテト)とサラダとともに 晩ご飯(Monday tea)に供される。かつてのイギリス貴族は日曜日には牛をまるごと一頭屠ってローストビーフを焼くサンデーローストという習慣があり、大量の残り物で平日の食事をまかなっていた。このような習慣によって、イギリス料理にはローストビーフ以外には大して美味しいものが無いという状態になり、「イギリス料理はまずい」という評判をつくる原因のひとつになっている。また、エンドカット部分は旨味が一番染み込んでおり、エンドカットを指定して注文する客も少なくはない。エンドカット部分は肉塊一つから両端の2つしか取れないため貴重である。日本では、丼飯の上にスライスして並べた「ローストビーフ丼」も2016年頃より若い世代に人気を博しており、生卵やマヨネーズ、ヨーグルトソースなどをかけて食べられる。
●ハギス
茹でた羊の内臓(心臓、肝臓、肺)のミンチ、オート麦、たまねぎ、ハーブを刻み、牛脂とともに羊の胃袋に詰めて茹るか蒸したファルス(詰め物料理)の一種である。さまざまなバリエーションが存在し、内臓は主として肝臓が使われるが、心臓や腎臓を使う場合も多い。近年では胡椒などの香辛料を使うことが一般的となっている。こってりしており、スコッチ・ウイスキーとともに供せられる。ウイスキーを振りかけて食べることも多い。1月25日の「バーンズ・ナイト(Burns's Night, スコットランドの詩人ロバート・バーンズの誕生日)」ではバグパイパーに率いられた一団によりハギスとウイスキーがもたらされ、バーンズの作詩した『ハギスに捧げる詩』(Address to a Haggis) を歌い上げる儀式を執り行い、伝統的なメインディッシュとして供される。スコットランドでは一般的な食べ物で、既製品を肉屋で購入できる。近年では動物の胃袋の代わりにビニールで包んだ商品や、缶詰などもあり、ベジタリアン用の野菜で作られたハギスも存在する。ハギスに限らず、動物の臓物料理は古今東西を問わず各民族において一般的であり、好悪は調理法・味付け(スパイスワーク)によるものであることが多い。


実際にハギスを食べた写真

 私も噂を聞き東京にて実食をしてみたのだが、そのまま食べるとソーセージをさらに細かくしたみたいな肉のペースト状と穀物、麦類が入っていて滑らかな感じと焼いた挽肉をそのまま食べてるような感じに近かった。しかしこれが本場となるとパサパサしてるのかもなという想像は容易についた。また黒こしょうやパセリ、塩を気持ち多めに加えてみたり、ウイスキーと合わせて飲んでみたが、これも正解だったというのが味の感想だ。毎日食べるとなると飽きてしまうものの、2ヶ月に1回のペースで食べるというのなら美味しく感じるのではないだろうか。
●ボルシチ
東ヨーロッパと西アジアで一般的な、酸味のあるスープ料理。テーブルビート(ビーツ)をもとにした、ウクライナに代表される東ヨーロッパの伝統的な料理で、鮮やかな深紅色をした煮込みスープである。しかしながら、同じ名前はスイバを使った緑ボルシチや、ライ麦を使った白ボルシチ、キャベツボルシチなど、テーブルビートが使われていない幅広い範囲の酸味のあるスープにも使われている。
●ビーフストロガノフ
代表的な牛肉料理であり、ウラル地方の貴族であるストロガノフ家の家伝の逸品であるが、考案者は謎。有名なものとしては、アレクサンドル・セルゲーエヴィチ・ストロガノフ(1733〜1811)の年に生まれた可能性があることだ。年老いたアレクサンドル・セルゲーエヴィチは歯の多くが抜け落ち、好物のビーフステーキが食べられなくなってしまった。彼のために食べやすい大きさに切った牛肉を柔らかく煮込み、かつ牛肉の風味を生かした料理が考案されたという。牛肉の細切りとタマネギ、マッシュルームなどのキノコをバターで炒め、若干のスープで煮込む。仕上げとしてスメタナ(サワークリーム)をたっぷりいれる(その酸味により肉のしつこさが消え、食べやすくなる。煮込むと酸味が飛ぶのであくまで最後に使う)。バターライスや白飯、パスタ、揚げたジャガイモと共に食べる場合が多い。ストロガノフ家で提供されていたオリジナルのビーフストロガノフは、煮込みの前に肉をワインを加えた湯で蒸し、マッシュルームとケッパーを加えたものだったという。
●シャシリク
ロシアやウクライナなどの旧ソ連圏の国々で人気のあるバーベキュー、肉の串焼き、焼肉料理、ロースト料理である。中央アジアでは、バザールや屋台で盛んに食べられるいわばファーストフードでもある。共通する特徴は、酢やワイン、オリーブ・オイルなどを混ぜたものに、ニンニク、タマネギ、黒胡椒、クローブなどの香辛料やハーブ、塩などを調味料として長時間漬け込んだものを用いるところ。旧ソ連各地では、ハイキングや野外パーティーなどで人気のあるご馳走として定番となっている。レストランであまり見かけない地域もあるが、それでも街角の屋台や路上で売られる場合は多い。日本でも展開している。

中東・アフリカ

●ケバブ
中東とその周辺地域で供される、肉・魚・野菜などをローストして調理する料理の総称。アラビア文字表記は كباب。ケバブのもっとも典型的な調理法は、四角形に切った肉を串に刺して焼いたものである。トルコでは、串焼きのケバブのほか、ヨーグルトを添えて食べるイスケンデルケバブ (İskender Kebabı) や、味付けした細切れ肉を重ねて塊にし、回転させながら焼いて火が通った表面から少しずつ削ぎ取って供するドネルケバブ (Döner Kebabı) などのバリエーションがあり、様々な焼肉料理がケバブと総称される。なお、焼く代わりに煮込んだり、揚げたり、蒸したりする肉料理もカバブと呼ばれることがある。ウイグルのカワープも炒め肉も含めた焼肉の総称である。
●タジン鍋
料理の際に使われる陶器で作られた、円錐形または半円ドーム状の、嵩高い蓋を有した土鍋である。ただし、チュニジアのタジン鍋は形状が違う。なお、単にタジンと言うと、アフリカ大陸北西端部のマグリブ地域で見られる、タジン鍋を使って作った料理を指す。主にモロッコ・アルジェリア・チュニジアで食される。本稿では、これ以降、鍋については「タジン鍋」と表記し、料理については「タジン」とだけ表記する。モロッコではラム肉やソーセージなど色々な具材を入れる。

アメリカ

●ローストチキン
アメリカ発祥。オーブンやグリルで焼く方法、串に刺して焙り焼きにする方法、専用の焼き機(ロースター)で焼く方法など、さまざまな調理法がある。また、ダッチオーブン(野外料理用の厚手の鉄鍋)を使って蒸し焼きにする方法もある。丸焼きであるために旨味が逃げにくく、皮の焼けた香味も加わる。オーブンで焼く場合には、中抜きした鶏に食塩、コショウ、ニンニク、ローズマリーなどを擦り込んで下味をつけ、内部に野菜類や小さく切ったパンなどで作ったファルス(英語ではスタッフィング(英: stuffing)またはドレッシング(英: dressing)という)を詰めた後に脚をタコ糸などで縫って形を整え、あらかじめ表面に油を塗っておく。オーブンの天板に鶏肉とともにタマネギやニンジンなどの野菜類をのせ、水分と香味を補いながら、均一な焼き色がつくように焼き上げる。焼いている途中に、鶏の表面や比較的火が通りやすい胸肉が乾燥しないように、何度か天板にたまった肉汁と脂をかけてやるのがコツ。ローストチキンを食卓に出すときに、足先の肉の薄い部分にマンシェット(ペーパーフリルやアルミホイル)を巻くことがある。これは「骨付き肉を持った際に手を汚さないために巻く」と言われるが、もとは「骨の断面が見えてしまうと見た目が良くない」として、断面を隠すために巻かれたのが始まりとされる。
●フライドチキン
スコットランドからアメリカ合衆国(アメリカ)に移住したアイルランド系アメリカ人によって形付けられた。スコットランドでは、鶏肉を油で揚げる技術が発展していた。ヨーロッパの料理では、昔から一般に揚げ物は労働階級や低所得者の食事とみなされてきた。これは長時間油で揚げることで、鮮度の落ちた食材や、骨や皮の多い食べづらい安価な部位が食べられるようになるという理由からである。フライドチキンには骨付きの手羽や脚まで使用されているが、これらはナイフとフォークで食べることができないため、西欧の白人社会においては出汁を取る以外では捨てる部位であった。19世紀の南部で、フライドチキンは主に綿花などのプランテーションで働く低賃金の黒人労働者の間で普及した。ブロイラー法登場前は牛肉よりも高級品であった鶏肉、胸肉などが白人の農園主といった富裕層に供され、骨や皮の多い部位は黒人の食卓に上がった。オーブンで焼くローストチキンと異なり、揚げるだけのフライドチキンは調理が容易で、綿実油やコーン油などの食用油が豊富にある南部では安価に調理できる料理だった。黒人だけが食べるソウルフードだったフライドチキンは、彼らが白人農園主の邸宅で調理を任されていた背景から、白人の食卓にも上るようになり、フライドチキンは南部の白人食文化にとっても欠かせない南部料理へと変化していった。そのため香辛料やハーブを使った独自のレシピが生まれた一方で、歴史的には20世紀中ごろまで、アメリカでフライドチキンは「南部の黒人奴隷の食べ物」という偏見の目で見られた。黒人のステレオタイプで、好物がフライドチキンとされるのはそこに由来する。
●タコス
メキシコを代表する料理のひとつで、メキシコ人の主食であるトウモロコシのトルティーヤで様々な具を包んで食べる、まさに国民食と言えるものである。"taco"という単語その物が「軽食」を意味する。 タコスを専門とする飲食店をスペイン語でタケリア(taqueria)という。石灰水処理したトウモロコシをすりつぶして作る生地(トルティーヤ・マサ)を薄くのばしてコマルや鉄板で焼いたトルティーヤに具を盛り、好みでライムの汁をしぼってかけたり、サルサをかけて食べる。北部メキシコではトウモロコシの代わりに小麦粉のトルティーヤが使われることもある。具は多岐にわたる。主に「カルネ・アサーダ」という牛肉の小さめのサイコロ・ステーキや、「カルニータス」という蒸し煮にした豚肉を細長く引き裂いた肉の上に、刻んだ玉葱、シラントロなどが盛られる。牛タンの煮込み、ウシの脳、臓物の塩焼き、ブタの頭、鶏肉、羊肉やヤギ肉、豚肉を薄くスライスしてドネルケバブのように回転させながら焼いた「アル・パストール」(この調理法はレバノンからの移民がもたらしたものとされる)、バルバコア、チョリソなど、具の種類は無数に存在する。肉類以外にもエビ、フリホレス・レフリトスやチーズ、キノコ、ノパル(nopal、ウチワサボテンの若い茎節)、カラバシータ(calabacita)というズッキーニに似た瓜の雌花なども使われる。具の内容には地域色が出ることがあり、例えばバハ・カリフォルニアを起源とするタコス・デ・ペスカード(フィッシュ・タコス)では、白身魚のフライなどが使われ、薬味としてキャベツの千切り、ピコ・デ・ガヨならびにサワークリームまたはシトラス・マヨネーズソースが使われる。カリフォルニアではフィッシュ・タコスがしばしば屋台で販売されており、上にキャベツが乗ってコールスロードレッシングがかかっているのが特徴である。サルサはチリベースが一般的だが、他にもアボカドを使ったワカモレや、バハ・カリフォルニアではマヨネーズを牛乳でのばしたものなどがある。フルサービスレストランや家庭内の場合、焼き立てのものを乾燥を防ぐために布でくるんだトルティーヤと具を盛った皿、サルサを入れた器が別々にテーブルに運ばれ、食べる人が自分の好みでトルティーヤに具を挟んで食べることが多い。屋台もしくは簡易タケリーアでは主な具をトルティーヤに載せて提供することが多い。店によってはサラダバー式にさまざまなサルサや薬味を自分で選べるようになっているところもある。前述の刻み玉葱とシラントロ以外では、キュウリのぶつ切りや輪切り、焼きハラペーニョ、焼きネギ(青ネギの一種)、ハツカダイコン、ライムなどが好まれる。具をトルティーヤで筒状に巻き、具やサルサがこぼれないようにトルティーヤの端を小指などでうまく押さえて食べるのがコツである。

アジア

●焼肉
日本語の「焼肉」という言葉は大きく二つの意味を持ち、肉を焼いた料理全般を指す場合と、肉や内臓にたれをつけ焼きながら食べる日本の東洋料理を指す場合がある。焼いた肉料理を指す「焼肉」という語の使用はより古く、例えば仮名垣魯文の『西洋料理通』(1872年〈明治5年〉)にはバーベキューの訳語として使用されている。同年出版の『西洋料理指南』においても、獣肉を焼いた料理の意味で使用されている。日本においても古くから獣肉食の歴史がある。一方で食用にする鳥獣の屠畜方法や肉の流通形態、下処理や調味・調理方法、使用する民具などによりそれぞれの文化や風俗の差異が確認できることはあるが、これらについても文献から明確な起源が判明していることは多くない。しかし確実に明治以前から焼肉という料理は存在していたのはわかる。一方で東洋料理としての「焼肉」は、焼いた肉をたれ(醤油を基本に酒、砂糖、果物、ニンニク、ゴマなどを調合して作ったジンギスカンのタレを元にした配合調味料)や塩、胡椒もしくはレモン汁などに付けて食する。同時に野菜も調理する場合もあるが、それらを含めて「焼肉」と呼ぶ。材料には牛肉がよく用いられるが、焼肉店では豚肉、鶏肉などの獣肉、ウィンナーやソーセージ、魚介類、野菜、杏仁豆腐やフルーツカットなどのデザートも提供されている。 また店舗によってはキムチやクッパ、ビビンバ、朝鮮式冷麺など朝鮮の食文化を象徴するサイドメニューも豊富に提供されている。佐々木道雄によれば、この料理の起源は朝鮮民族やアルタイ語族の料理から伝わったのではないかと言われた。
●すき焼き
食肉や他の食材を浅い鉄鍋で焼いたり煮たりして調理する日本の料理である。調味料は醤油・砂糖・酒・みりんなど、またそれらをあらかじめ合わせた割下が使用される。一般的には薄切りにした牛肉が用いられ、ネギ・ハクサイ・シュンギク・シイタケ・焼き豆腐・コンニャク・シラタキ・麩などの具材(ザクと呼ぶ)が添えられる。溶いた生の鶏卵をからめて食べることが多い。砂糖と醤油を用いた甘辛い味付けの料理の総称として「すき焼き風」という呼称も用いられ、牛丼チェーン店などにおいては「牛すき鍋」あるいは「牛鍋」という名を使用した類似料理を提供している。また、鳥すき(鶏すき)・豚すき・魚すき・蟹すき・うどんすきなど、牛肉以外の材料を使用したものについては「~すき」と呼ぶこともあるが、調理法や味付けはそれぞれ異なっている。江戸時代中期、関西には元々農具の鋤(すき)を鉄板代わりにして貝や魚を焼く「魚すき」「沖すき」と呼ばれる料理が存在していた。その鋤で牛肉を焼いたものを「鋤焼(すきやき)」と呼ぶようになったのが語源とされる。
●焼き鳥
鍋や甕または鉄板などの調理器具を使用しなくても調理が可能なあぶり焼きという方法は、山野で得た獲物を食べるには都合の良い方法であり、古来行われている。しかし、丸焼きでは調理に時間が掛かると共に、その大きさや骨のために食べにくい。このため、現代の料理店では、肉を小さく切って串(たいていは竹材)に刺す方法が多くとられている。また野菜やホルモンなどが使われることもある。
●カツレツ
明治時代に日本に伝来したフランス料理のコートレット(côtelette、英語ではカットレット cutlet)を原型とする料理である。元々コートレットは仔牛肉をスライスしたものに細かいパン粉をつけてフライパンなどで炒め焼きする料理であったが、日本では鶏肉や牛肉など他の素材を使って見よう見まねでコートレットを模倣するうち、粒の大きなパン粉を使う、天ぷらと同様に多量の油で揚げるといった改良がほどこされ、「カツレツ」が成立した。そして豚肉、牛肉を油でどっぷり揚げることで豚カツ、牛カツになる、または部位ごとのロースカツ、ヒレカツなど新たなレシピを生むきっかけになった料理であった。
●プルコギ
朝鮮半島の代表的な肉料理の一つ。醤油ベースで甘口の下味をつけた薄切りの牛肉を、野菜や春雨と共に焼く、あるいは煮るといった工程を経て作る朝鮮料理である。飲食店などではテーブルで、プルコギパンを使って調理される。一般にプルコギパンは中央が盛り上がっており、周辺に溜まった肉汁に漬けながら中央で肉や野菜を焼き、煮る。最初から鍋の縁にスープを張る店もある。他にも、網で焼いたり、また平たい普通の鍋で煮て作ることもあるなど、地域や店、家庭によって調理方法はさまざまである。プルコギパン自体も材質・形状など多種多様に開発されている。できあがりは日本のすき焼きに近いが、単に肉野菜炒めのようなものや、具だくさんのスープ料理になることもある。肉は主に牛ロースやヒレなど赤身が使われる。豚肉を使えばテジプルコギとなる。
●サムギョプサル
スライスした豚のばら肉を焼いて食べる韓国の豚バラ焼肉である。韓国の飲食店や家庭における一般的な調理法・食べ方は味付けしていない豚の三枚肉を厚めにスライスし、鉄板上で表面がカリッとなる程度に焼く。鉄板は斜めになっていたりジンギスカン鍋のように中央が盛り上がっていたりするが、これは余分な脂身を落とすためである。焼けた肉は、岩塩を溶いたごま油につけたり、青唐辛子のスライスやネギの和え物、生もしくは一緒に鉄板上で焼いたニンニク、少量のサムジャン(味付け味噌)や白飯などと一緒にサンチュやエゴマの葉などに巻いて食べる。食べる者が自由にアレンジできるようにするため、サムギョプサルひとつ頼むと食卓上は調味料や葉菜類の器がところ狭しと並ぶことになる。そのため種類は豊富にある。
●もつ鍋
牛または豚のもつ(小腸や大腸などの内臓肉、別名「ホルモン」)を主材料とする鍋料理であり、ホルモン鍋(ほるもんなべ)とも呼ばれる。福岡・博多においては、第二次世界大戦後にもつ肉とニラをアルミ鍋で醤油味に炊いたものがルーツとなっており、1960年代にはごま油で唐辛子を炒めてもつを入れてから味付け用調味料とネギ類を入れ、すき焼き風に食べられていた。「ホルモン鍋」とも呼ばれる。近年のスタイルは、鰹や昆布、鶏ガラなどでとったダシに醤油や味噌で味つけし、その中に下処理したもつと大量のニラ・キャベツともつの臭みを消すためのニンニク(ニンニクはスープにあらかじめ風味付けしておく場合もある)のほか、好みで唐辛子(鷹の爪)を入れ、これを火にかけて煮込んで食べる。もつと野菜を食べた後には、残った汁にうどんを入れていたが、1990年頃より長崎出身者の影響でちゃんぽんの麺を入れて「締め」とする場合も多く、牛のもつにこだわる店や水炊き風に酢醤油を付けて食べる方法を推奨する店などもある。また、店内で提供される際には一般的な鍋料理に用いられる土鍋はあまり使われず、両側に取っ手の付いた浅いステンレス鍋を使うことが多く見られるのも特徴の1つである。1992年、東京に博多風もつ鍋店がオープンすると、安くボリュームがあって酒によく合うなどもあり、バブル崩壊後の風潮とも融和して東京を中心に広く知れ渡るようになり、「もつ鍋」が同年の新語・流行語大賞銅賞を受賞するほどのブームとなった。しかし、その後はBSE問題が起こったことや、一過性の流行であったこともあり、以前からもつ煮が存在している東京などの一般家庭では、絶対的な定着を見せるには至らなかった。
●ビビンバ
韓国語・朝鮮語で混ぜご飯を意味する朝鮮半島における代表的な料理の一つ。丼にご飯を入れ、その上にナムルや肉、ぜんまい、なます、卵などの具を載せた料理で、コチュジャンやごま油などの調味料をかけ、匙でかき混ぜて食べる。ビビンバの起源は祭祀の際先祖に供えて残った飯、肉、ナムルを混ぜて食べたという説、農耕の手伝いの人々に振舞う食材を野外で一度に混ぜて食べたことに由来する説、冬至の日に作り置いた総菜を年が明けても食べるのを嫌い、飯に混ぜ年越しまでに食べきったという説、他にも諸説あり、1998年に大韓航空が機内食として提供したビビンバが『世界最高の機内食賞』を受賞したことをきっかけに世界に広く知れ渡った。食堂や家庭において一般的なメニューであり、「ポトン(普通の)ピビンバ」などとも呼ばれる。店の一角に並べられた具を客が取れるようにしているところも見られる。載せる具は多様で、ユッケを載せた「ユッケピビンバ」、タコや貝などを載せた海鮮系の「ヘムル(海物)ビビンバ」のほか、生野菜を多く載せた野菜ビビンバなどがある。具材は多くないが、野菜を載せた上に辛口の味噌だれをかけるテンジャンビビンバなどもある。土地の名物となっているピビンバもある。全羅北道の「全州ピビンバ」が特に知られ、国の無形文化財にもなっており、平壌の冷麺、開城の湯飯(タンパン)とともに朝鮮半島三大名菜に数えられている。そのほか、ユッケが具の中心となり、ヘジャンククと一緒に食べる慶尚南道の晋州の晋州ピビンバ、海産物を中心とする統営市の統営ビビンバなどがある。自治体が「ご当地ピビンバ」の開発とそのアピールを推進しているところもある。
●カルビ湯
牛カルビ(あばら肉)のかたまりを長時間煮込んだ贅沢なスープ。伝統的な韓国料理におけるスープストックすなわち出汁の基本は牛であり、牛骨・牛スジ・牛肉を水から長時間煮たものが味の基本となるため、カルビタンは韓国スープの王道を行く料理といえる。大きく分けて、塩醤油味(辛くないタイプ)とヤンニョム味(辛いタイプ)の二種類があるが、どちらもご飯とキムチや海苔、和え物などが置かれ、スープにご飯を混ぜて食べるのが特徴。
●コム湯
朝鮮文化の代表的な料理のひとつ。牛の肉・内臓等を長時間煮込んで作る、シンプルなスープ料理。よく似た料理でソルロン湯がある。両者は味は似ているが、作り方には多少差があり、一般的にソルロンタンは骨を入れて骨髄まで煮出されているので白濁したスープに対し、コムタンには骨は入れず透明なスープである。また、コムタンは胃、小腸等の内臓肉を入れるため、ソルロンタンに比べ濃厚で油っこい。しかし、近年ではその違いも曖昧になっている。バリエーションとして鶏肉を煮込んだタッコムタン、牛テールを煮込んだコリコムタンなどがある。
●参鶏湯
内臓を取った一羽若鶏(鶏肉)の腹の中に、高麗人参、鹿茸、ファンギ(キバナオウギ)等の漢方、及びもち米、くるみ、ナツメ、ニンニク等の食材を詰め、長時間煮込んだ朝鮮伝統料理である。専門店では、烏骨鶏の肉を用いた烏骨鶏湯や漆の木と一緒に煮込んだ漆鶏湯を出すところがあるが、通常のものより高級品とされ、値段が高い。また、参鶏湯にスッポン、アワビ、鯉等を加えたものを龍鳳湯、参鶏湯の鶏肉を半分に減らした半鶏湯もある。煮出した熱いスープと共に提供される料理だが、朝鮮では夏バテ時の疲労回復としてよく食べられているため、「夏の料理」として提供する店が多い。特に日本の土用の丑の日におけるウナギと同様、盛夏の三伏の頃に「食べると健康に良い」とされているため、夏の間だけ提供する食堂も多い。また、参鶏湯は材料さえ入手できれば家庭でも作ることができる。朝鮮内ではサムゲタン用に処理された若鶏が販売されている他、冷凍食品やレトルト食品、サムゲタンの素となるうま味調味料も販売されている。注意点として、カロリーと材料の問題がある。参鶏湯は基本的に鶏一羽を丸ごと入れて作る料理であり、高カロリーの食品である(レトルトで一人前とされている800g入りで720キロカロリー。大象ジャパンが輸入している製品の場合)。また、材料の一つである高麗人参は風邪等で発熱がある時に食すると動悸を誘発するため、発熱時に高麗人参入りの参鶏湯を食する行為は禁忌とされている。
●トガニタン
朝鮮料理の一つで、牛の膝蓋骨とその付近の肉を煮込んで作るスープ料理の名称。「トガニ」は牛の膝蓋骨とその付近の肉を指し、「タン」は韓国におけるスープ料理の総称である。味付けはニンニクや生姜、塩、胡椒などで行ない、食べる際に好みで更に塩を加える。トガニの部分を食べる際は酢醤油をつけて食べる。ソルロンタンやコムタンなどのスープ料理専門店で一緒に提供され、一般食堂のメニューに載る事は稀である。
●補身湯
犬の肉を使用した朝鮮半島の料理で、朝鮮語(韓国語)の言葉通りに「体に栄養を補うスープ」を意味している。犬鍋とも言われる。もとの名はケジャンククである。1980年代序盤、犬の食用を禁じた当局の取り締まりを避けるため、よく知られていた補身湯という名称を伏せるために作られた別名称が存在する。これらはいずれも韓国での呼び名で、北朝鮮では犬肉を「タンゴギ」と呼ぶ。韓国においては犬肉を野菜とともに煮込んだスープが出される。朝鮮において、犬焼酎を含めて犬食文化の一つであり、韓国では特に伏日の日に夏場の強壮料理として好んで食べられている。犬の肉を食べることが稀である日本や欧米では理解されず、1988年のソウルオリンピックや2002年のFIFAワールドカップなどの機会に注目され、野蛮であるとして国際世論や動物愛護団体から批判を浴びてきた。ソウルオリンピックの前には取扱い禁止令が出たが、犬肉料理店は看板を表通りから引き揚げたり表向きの料理名を変えたりして営業を続けた。その後禁止令は有名無実化し、2008年時点ではソウル市内に約500軒の犬肉料理店が存在すると報じられている。韓国では動物愛護団体の反対のため、1970年代に犬肉が法律上の食肉から除外され、その後は犬肉の処理や流通に関する法規が存在しない状態が続いていた。しかし韓国政府は衛生上の問題があるとして、2008年に食用犬の衛生基準の制定や衛生検査の実施を行う意向を示した。韓国国内の動物愛護団体は、時代に逆行しているとして、この動きに反対している。
●キムチチゲ
朝鮮半島で広く食べられている辛口の鍋料理・スープ料理である。その名のとおり白菜キムチが味の主体で、具には肉類または魚介類、野菜、豆腐などが使われる。キムチと肉類を炒め、そこに肉などでとっただし汁を注ぐ。塩・醤油・おろしニンニク・唐辛子粉などで味を調え、ネギ・白菜などの野菜や豆腐といった具を加えて煮る。非常に一般的な料理で、店や家庭によって調理法や具材は多彩である。使用するキムチは醗酵が進んで酸味が強くなったものでないと、特有の味が出ないとされている。イノシン酸を多く含む炒り子や塩辛などと一緒に炒めると、キムチの成分と反応してよりうまみが出る。肉はコクのある豚ばら肉などを使うことが多い。
●麻婆豆腐
中国、四川料理の一つ。挽肉と赤唐辛子・花椒・豆板醤、豆豉などを炒め、鶏がらスープを入れ豆腐を煮た料理。唐辛子の辛さである「辣味」と花椒の痺れるような辛さである「麻味」に分けられることが特徴。四川省では、花椒は粒で入れるほか、仕上げにも粉にひいたものを、表面が黒くなるほど大量に振りかける。日本では、従来は辛みを抑えるためや、材料が入手困難であるといった理由から、花椒を抜いたり、舌が痺れるほどの花椒を振り入れる店はほとんど存在しなかったが、近年の激辛ブームやグルメブームにより、本場四川省とほぼ同じレシピで作る店も登場している。また、本場風の味付けと日本で一般的な味付けの両方から選択できる店もある。なお、辛みを和らげて普及した麻婆豆腐は日本の大衆的店舗でも人気を呼び、米飯にかけた麻婆丼としても知名度を上げた。レトルト食品としてのニーズも大きい。
●担々麺
中国、四川料理の一つ。辛味を利かせた挽肉やザーサイの細切りなどをのせた麺料理である。清代の1841年頃、四川省自貢の陳包包というあだ名の男性が考案して、成都で売り歩いたと言われる。元々は、天秤棒の片側に豆炭を使う七輪と鍋を、もう一方に麺・調味料・食器・洗い桶などを吊して、担いで売り歩いた。鍋はまん中に区切りがあり、片方には具を、片方には湯を入れるようにしていた。温かく、辛い麺を出したのが受けて流行ったという。本場の四川省では、日本で言うところの「汁なし担々麺」が食べられている。元々、天秤棒を担いで売り歩いていた料理であり、スープを大量に持ち歩くのは困難であったことから、「汁なし」が原型である。日本の汁椀からご飯茶碗程度の小さな碗に入れて売られる事が多く、一杯あたりの量は少ない。小腹が空いたときに食べる中国式ファーストフードの一種と考えられている。麺は一般的にストレートの細麺で、鹹水は使わないので色は白い。四川風の花椒(華北山椒)(山椒の同属異種)とラー油の風味を利かせた醤油系の少なめのたれに、ゆで麺を入れ、「脆臊」(ツイサオ 拼音: cuìsào)と呼ばれる豚肉のそぼろとネギ、ザーサイなどを載せたスタイルのものが一般的である。そぼろは、豚肉を中華包丁でみじん切りにし、ラードを入れた中華鍋で、料理酒、甜麺醤、塩、醤油を加えてぱらぱらになるまで炒める。味付けは、ラー油、花椒の粉または花椒油(辣油の華北山椒版)、醤油がベースで、少量の酢、塩などを合わせる。日本の担担麺でよく用いられる豆板醤や芝麻醤はあまり用いられない。この辛い液が入った碗に、ゆでた麺を入れてから、具を載せる。具は一般的に豚肉のそぼろで、薬味には刻みネギ、モヤシ、刻んだ「(四)川冬菜(四川〈四川では単に「川」〉地域の冬菜〈カラシナ〉)の漬物、エンドウの芽、煎りゴマ、刻んだピーナッツ、揚げた大豆などが添えられる。混ぜてから食べる。近年は中国各地の四川料理店や専門店で食べられるが、上海など、辛いものを食べ慣れていない地域では、辛さを控えて出す例がある。また、スープが十分に入ったものは、後述のように日本においてアレンジされて普及した担担麺であるが、現在では中国大陸の四川料理店でも、スープのある汁麺を用意しているところも増えつつある。
日本の担担麺は、麻婆豆腐と同様に、四川省出身の料理人陳建民が、日本人向けに改良した作り方を紹介して、各地に広まった。一般に中国のものと比べて直径で1.5倍以上、場合によっては3倍ほどの碗で出され、スープが付き、ラーメンのように、一杯で一食が事足りるようになっている。そして、辛さを抑えるために、ラー油と芝麻醤の風味を効かせたスープを合わせ、汁麺として出されることが多い。汁の味や辛さは中国のものよりも薄く、飲める程度になっている。麺は店によって異なるが、一般的に中国のものよりも少し太く、鹹水を使った中華麺がほとんどである点も異なる。太麺になると、スープにからみにくくなることもあり、一部の店では、縮れ麺を使用し、スープとからませるようにしている。日本では、担担麺の定義が決められていないため、店ごとに味付けと具材は異なる。たとえば肉のそぼろは挽肉を用いるのが普通で、豚肉ではなく牛肉、合い挽き肉、鶏肉のものだったり、チャーシューや煮豚などを載せたりと店によって様々である。また、チンゲンサイ、ホウレンソウ、サヤエンドウ、モヤシなどの野菜が少し添えられたり、そぼろにみじん切りのニンジンなどが加えられたりする場合もある。薬味は刻みネギや唐辛子の細切りなどが多い。
●回鍋肉
中国、四川料理の一つ。回鍋とは、鍋を回す(あおり炒めや鍋返しをする)ことではなく、一度調理した食材を再び鍋に戻して調理することである。中国本場における四川料理の回鍋肉は、皮付きの豚肉の塊を茹でるか蒸した薄切りを使用し、野菜には蒜苗(ソンミョウ。葉ニンニク)を使う。味付けもトウガラシや豆板醤を多用した辛味の強いものである。
四川省出身の中華料理人、陳建民は回鍋肉を日本へ広めた際に蒜苗がキャベツに取って代わられ、それが日本の一般的なものとなった。本場のものに比べ、甜麺醤を多めに使った甘辛い味なのも特徴である。また、手間を省くために最初から薄切り豚肉を使うレシピも考案された。市販の合わせ調味料を使って家庭料理として作る際には、そちらが著名なものとなっている。
●棒棒鶏
蒸し鶏に四川ソース、怪味ソースをかけた料理である。日本ではソースに芝麻醤などゴマだれのを用いることが多い。焼いた鶏肉を棒で叩き柔らかくしたことから、「棒」の漢字が使われたと言われている。元々の作り方では鶏肉を手で細かく裂いていた。包丁で切り分ける料理法もある。2018年時点では四川省成都市で鶏を棒で叩いて棒棒鶏を作る店はほとんどなくなっている。中国では鶏肉のみで他の具を加えないのが一般的である。味付けも四川料理らしく唐辛子の辛味を利かせた四川料理である。
●宮保鶏丁
鶏肉とピーナッツを唐辛子とともに炒めた中華料理。中華料理の細分としては四川料理、山東料理、貴州料理、北京料理として扱われており、使用する食材は同じでも味付けはそれぞれで異なる。賽の目切りにした鶏肉を油で炒めて火を通し、唐辛子、豆板醤、米酢、砂糖を加え、ピーナッツや白ネギと共に炒めることは共通している。貴州料理は、用いられる油で揚げた唐辛子を粉末にした「煳辣椒(フーラージャオ)」を使い「煳辣味」と呼ばれる味が特徴である一方、四川料理では花椒を加えて麻辣味にすることも多い。また、北京料理では花椒は用いられない。
●青椒肉絲
四川料理。中国では青椒肉絲は豚肉を使用する料理であり、牛肉を使用した場合は「青椒牛肉絲」と呼ぶ。日本では牛肉を使用していても「青椒肉絲」と呼ばれることもある。「青椒(チンジャオ)」とは辛みを抜いて品種改良した唐辛子(現代ではピーマン、ししとうなど)の緑色の果実を指し、「絲(スー)」とは細切りのことを指す。つまり青椒肉絲とは、ピーマンなどの細切りと肉材の細切りを炒めた料理のことをいう。中国の素朴な作り方では老酒と塩のみを調味料として使用するとされる。赤や黄色のピーマンと一緒に炒めたものは「彩椒肉絲(ツァイジャオロースー)」という。日本において、現代の一般的な調理法としては、下味を付けた豚肉または牛肉の細切りと、ピーマン、タケノコ、タマネギ、モヤシ、ネギなどの野菜の細切り、調味料には醤油、酒、ショウガ、ニンニク、胡椒、オイスターソース、片栗粉、そして油は胡麻油が使われることが多い。青椒肉絲の起源は古く、豚肉を調理した福建料理に端を発するともいわれる。四川料理とされることも多いが、現代においては辛みよりも旨みを重視する広東風のものがポピュラーであり、オイスターソース(カキ油)、酒(紹興酒など)、砂糖などを使って甘辛く調味される。一方、四川風のものでは豆板醤や醤油などを使って辛味を効かせて仕上げられる。
●酔排骨
豚のスペアリブを甘酢ケチャップで炒めた料理である。スペアリブを高温の油でカラッと揚げたら、甘酸っぱいソースと絡めて完成。ソースが肉のうま味を強調してくれるので、食べた瞬間に肉の強い味わいを感じられる。
●红糟鸡
鶏肉を茹でて、醤油や赤い甘酒、紹興酒、醤油、各種のスパイスで味付けした煮込み料理。甘い煮汁で味付けされた鶏肉にはしっかり味がついている。柔らかく煮込まれた鶏肉のうま味が特徴。甘めの味付けが鶏肉の味わいをより一層引き立てている。麺と一緒に食べることもある。
●荔枝肉(レイシ)
豚肉をケチャップや砂糖、酢などで甘辛く味付けした料理。鮮やかな赤色が特徴で、その見た目からライチ肉と名付けられている。また、豚肉に十字の切れ込みを入れて、さながらライチの実のように装飾することもある。
●太平燕
中国福建省福州市の郷土料理。アヒルのゆで卵を入れたスープワンタンのようなものである。アヒルの卵は福州語で「鴨卵 アッロウン」というが、「圧乱」(戦乱を鎮める)と同音であり、しゃれ言葉で「太平 タイビン」とも言われる。戦乱が鎮まれば、天下太平という訳である。また、福州市には「扁肉燕」(福州語 ビェンニュッイェン)という、豚肉を叩き潰してサツマイモでん粉といっしょに練り込んだ独特の歯ごたえのワンタン用の皮があり「燕」とも略される。この二つの素材を組み合わせた料理が「太平燕」であり、「燕」は「宴」と同音であることから、「太平宴」(平和なうたげ)として縁起が良い名前となり、結婚式などの宴席料理として作られている。台湾海峡を隔てて、福州出身者が少なくない台湾においても、宴会料理として出される場合がある。福州料理の太平燕を明治時代に華僑が日本に伝えたものと言われる。伝来後は、日本で入手しづらいアヒルの卵の代わりにニワトリの揚げ卵(虎皮蛋)を、扁肉燕の代わりに春雨を用いたものと考えられる。このアレンジによって、それまでスープ料理であった太平燕が麺料理に変質し、特定の場所のご当地グルメとして特徴的である。太平燕はラーメンと同様、スープには醤油、塩、トンコツなどの味のバリエーションが存在する。また揚げ卵ではなくゆで卵やウズラの卵が入っていたりするなど、店舗や家庭によって千差万別である。また、使用される春雨については中国産の緑豆春雨が中心であるが、馬鈴薯でんぷんを主原料とした日本産春雨を使用する場合もある。
●カメのハム煮込み
恵州山地特有の安徽料理。「砂カブトガメ」を主原料とし、ハムやハムの骨を調味料として使用しています。完成すると、スープは透明でまろやかな色になり、肉は腐って香ばしく、端は滑らかになり、生臭みはなくなります。
●ジャコウネコの煮込み
山に生息するジャコウネコを主原料とし、梨などの原材料をブラウンソースで煮込むと黄金色に色づき、スープは濃厚で鮮やか、ジャコウネコの肉はきめ細かく香り豊かです。爽やかな甘みとほんのり塩味が特徴の冬の逸品です。
●焼売
豚の挽肉を小麦粉の皮で包み蒸し調理した中華料理の点心と日本では認識されている。後述のように豚肉以外の肉を使うこともあり(肉類を使わないものもある)、皮も小麦粉以外のこともあれば皮を用いない焼売もあり、明確な定義は存在していない。蒸すことが多いが、鉄板で加熱する「焼き焼売」、油で揚げる「揚げ焼売」、スープに入れる「水焼売」などもある。これらと区別するために「蒸し焼売」と呼ぶこともある。豚の挽肉と白菜などの野菜を主体とし、練り合わせて味付けした餡を中身にし、薄い小麦粉の皮で短い円柱状に包み、蒸籠や蒸し器などで蒸かして仕上げる。好みで酢・醤油・辛子など調味料をつけて食べる。なお、中身にエビ、カニ肉や牛肉を加えたり、包む皮の代わりにもち米をまぶすなどのバリエーションもある。
●餃子
小麦粉を原料とした皮で、肉・エビ・野菜などで作った餡を包み、茹でる・焼く・蒸す・揚げるなどの方法で調理した食べ物である。成形後の加熱調理方法の違いによって、水(茹で)餃子・焼き餃子・蒸し餃子・揚げ餃子などと呼ばれる。中国では水餃子、つまり茹でて湯切りをしたものが主流であり、焼き餃子は水餃子に比べるとその数がずっと少ない。また中国では餃子は主食として食べられることが一般的であり、日本のように(白飯の)「おかず」としては食べない。皮が薄い日本風の餃子を、近年は「日式餃子」と称して出す店もある(主に日本人が多い地域の日本料理店で、日本料理として)。しかし中国でも受け入れられつつある日式拉麺などとは違い、皮が薄い日本式餃子や餃子と一緒にチャーハンや唐揚げを御馳走する食べ方は「日本発祥」という認識も相まって、全く受け入れられていない。日式餃子を前面に出して2005年に中国に進出した餃子の王将も2014年に撤退を発表した。
●炒飯
隋代から宋代にかけての中国・江蘇省揚州発祥の中華料理の一つ。『食経』という書物には、7世紀初めの隋の宰相が現代のチャーハンに似た「砕金飯(金のかけらのようなご飯、という意味)」と呼ばれる料理を食していたことが書かれている。

終わりに

 このように、肉を使った料理には色々なものがあり、それぞれ牛肉や豚肉、鶏肉などが単品で使われることもあれば、野菜や魚とともに麺類、スープ、ご飯と一緒に食べることがある。世界の肉は奥が深く、wikipediaにもまだまだ載ってない食べ物も多く記載されている。これを機に色々な料理を調べていくのも趣が深いだろう。

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