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書評】 腹がよじれるくらい笑える。『空想科学読本1 (新装版)』
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老若男女問わず、とにもかくにも面白い!アニメやマンガ、特撮を現在の科学で実現しようとするとどうなるのか。引用しているアニメや特撮を知らなくても笑えるし、知っていると余計に笑えて腹がよじれそうになります。著者の柳田理科雄さんが現在の物理法則とある程度の仮定に基づいて検証すると・・・正義ヒーローは果たして本当にヒーローなのか?その結果に笑いが止まりません(笑)
通勤時の電車や公共の場では笑ってしまい、周りから変な目で見られるので読めません。特に、最近、笑っていないかなと思われた方へおすすめの一冊です。

どういったことが書かれているか、少し例をあげみましょう。
 
特撮・アニメで正義のヒーローと知られる「ウルトラマン」です。ウルトラマンには仲間の兄弟や敵の怪獣がいて、みんなマッハの速度で空を飛びます。マッハは音の速度(音速)で、マッハ1はざっくり1秒で340m、1時間で1224km進みます。ちなみに新幹線のぞみは1時間で285kmです。

ウルトラマンの兄弟である「ウルトラセブン」はマッハ7で飛びます。新幹線のぞみの約30倍の速さです。速いですね。ただ、マッハで飛ぶと衝撃波が発生して自滅するというリスクがあります。
著書の引用を見てみましょう。

「衝撃波は物体の突起部から生じるので、運動している物体自身も、この円錐形からはみ出せば、先端から発生した衝撃波を受け、破壊されてしまう。」

ウルトラセブンは両手を広げてマッハ7で飛びます。この場合、上に記した先端は両手の先っちょになり、そこから衝撃波が発生します。するとウルトラセブンはどうなるのでしょうか。本文では
「両腕からそれぞれ先端角度の衝撃波が発生し、どちらも彼の顔面を直撃する。顔はザクロのように弾け散り、もちろん体も2つに裂けてしまう。無惨な話である。」

こんな悲惨で自虐的残酷なヒーローは目も当てられません。でも、続きがあります。これは空での話なので、裂けた身体は超音速で地上に落下します。ウルトラセブンの体重3万5千トン(※1トンは1000kg)なので、避けた体半分の1万2千5百トンが地上に落下してくるのを想像して下さい。東京タワーが約4000トンなので、東京タワー3つ程が落ちてくるのです。著者の柳田先生によれば

「上空1千mでさけたとすると、落ちてくるのは1・3秒後。この間に、水平方向に飛ぶ。西に向かって飛行中、新宿上空で墜落し始めた場合、落下地点は八王子。対地角3 4度で突入する。
(中略)
1度目に身長と同じ40mの高さまで跳ね上がるなら、17㎞にわたってバウンドした後、丹沢山地の北あたりから滑走に入る。
(中略)
なかなか止まらない。琵琶湖をかすめ、中国地方に侵入し、636㎞を走破して、広島あたりで停止する。」

東京から広島まで絶望的破壊をしながら落ちてくるのです。現在の物理法則では、人類にとってヒーローなんて程遠く、むしろ厄災以外のなにものでもありません。

他にもウルトラセブンや仮面ライダーの変身、ドラえもんのタケコプターの話など、現在の物理法則を適用するとどうなるのか。子供たちにも是非読んで欲しい一冊です。




空想科学読本I
作者:柳田 理科雄
発売日:2006年7月18日
KADOKAWA/メディアファクトリー

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