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書評_病院のMSWってなんなのだ__ビターエンドロール

【書評】病院のMSWってなんなのだ?『ビターエンドロール』
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「病気になった時に傷つくのは肉体だけではない。」かなりキャッチ―である。
日本国憲法第25条を知っているだろうか? 25条とは「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という生存権のことである。この漫画は病気になった時に自分らしく生きる、つまり自らの生存権を選択する支援を行うMSWについて描かれている。MSWってなになのか?

著者はおそらくよく取材したのであろう。MSWについてわかりやすく描かれている。そもそもMSWとは医療ソーシャルワーカーの略で、病院において医療と社会福祉を結ぶ役割をする専門職のことである。
言わずもがな、病院の入院退院は医師が決めることである。だが今後の自分の人生についても医師に決めてもらうわけにはいかないのだ。例えば、脳卒中になり、その後治療して治ったから明日家に帰ってくださいと言われたらどう思うだろうか? どうやって生活したらよいのか困らないだろうか? 医療費はどうしよう? 仕事はどうしよう? と思わないだろうか? 病気になったのが高齢者だったらどうだろうか? こういう時に登場するのがMSWである。病気になってから発生する状況について、その人が思う問題を聞きながら、その方に合う社会福祉制度や環境を整えて、その人自身が自律した生活を選択できるように縁の下から支援するのだ。

この漫画はシリーズとして続いており、今作では若年者の脳卒中、アルコール依存症、がんと生活保護をテーマとして取り上げている。MSWが介入することにより人の生活を支援するネットワーク作りから、とかく難しい日本の法律制度を利用できるようどう調整するのかわかりやすく描かれている。新型コロナウィルス感染拡大の中で全世界が誰もがフェアに病気になると体感した昨今において、当たり前のように享受している生存権について考えてみてはどうか?



ビターエンドロール(1) (アフタヌーンコミックス)
作者:佐倉旬
講談社

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