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書評_スペースブローカーはいらないよ__広告ビジネス次の10年

【書評】スペースブローカーはいらないよ。『広告ビジネス次の10年』
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本書は2014年に初版が発行されている。その後3年の間の出来事は加味されたものではないが、それでも主張は的を射ている。広告マンの8割はいらないという主張には同感だ。しいていえば8割というのはいささかの配慮が感じられる。

広告マンとは営業職だけではなく、広告を扱う会社に属する人材全員だ。スペースブローカー思考を脱却できない広告マンにはっきり言って未来はまず無い。現状維持はつまりは相対的な価値を下げることを意味する。大きな変化の一つはメディア事情だろう。

広告代理店の序列を決定づけていたものの一つがマスメディアの広告枠の保有量だ。しかし現在はどうだろうか。“テレビや新聞に影響力がある”という主張に、違和感を覚える方は少なくないはずだ。もちろんその価値がなくなったわけではないが、相対的には低くなっているのだ。理由はもちろんインターネット、さらにはスマホの普及が大きい。

ニュースサイトやSNS、動画サイトなど、世界は非同期で情報収集ができる環境に変わった。個人は、好きな時間に好きな場所で好きな情報を好きな人から得ることができるようになったのだ。見たくない情報を拒むことさえできる。一方で、決まった時間にその場にいる必要のあるテレビや満員電車では邪魔にしかならない新聞など、情報を得るための時間的なコストや精神的コストの高いメディアは敬遠されていく。

今でもムーブメントを起こすにはマスメディアは有効だろう。しかし有効と思われる目的範囲は今後さらに限定されていく。マスメディアが役割を奪われるというよりも、過剰に担っていた役割を適したメディアに返還するという表現が正しいかもしれない。これら広告業界におきたことは高生産性シフトだ。最良のターゲットに最適なメディアで最適な伝え方を、それらは最小限のコストにて要求される。その時に広告マンはメディアの枠売りではいけない。市場は売り手の論理から買い手の論理が幅を利かせている。買い手市場はどのような論理で動いているのか、興味があればぜひ本書を手に取ってほしい。



広告ビジネス次の10年
作者: 横山隆治,榮枝洋文
出版社/メーカー: 翔泳社
発売日: 2014/05/15
メディア: 単行本(ソフトカバー)

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