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書評_たしかに俺は約束した_神の子を育てると_______装甲騎兵ボトムズ_チャイルド_神の子篇

【書評】たしかに俺は約束した、神の子を育てると・・・・・。『装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇』
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超長生きロボットアニメ『装甲騎兵ボトムズ』。
時系列的な最新作OVA『幻影篇』の続きはどうするんだ? そのファンの声に応えて、高橋良輔監督が2020年9月から2022年12月にかけて電撃ホビーウェブ上でウェブ連載した、オトシマエ的小説が本作である。
『幻影篇』では、途中から主人公キリコ・キュービーが登場、続いてテレビシリーズ最終話で滅した筈であった、アストラギウス銀河を支配していた「神」ワイズマンまで再生した。さらにそれに伴って現れたのは神の後継者たる嬰児「神の子」。
かつて神の後継者の座を拒み、神殺しを為した「異能者」キリコが、今度は「神の子」を救う。
これについては、ウェブインタビュー記事にて、高橋監督はこう語っている。
「やっぱり、エンターテインメント作品において、放り出された幼子を救わないヤツは悪人だろうし、そっぽを向くヤツは主人公になれない。だから、一択ですよ。キリコは目の前に現れた「神の子」に関わらざるを得ない」
異能を育てるのは異能の者が再適任者である。ワイズマンから「神の子」の養育を託されたキリコは応諾、二人はワイズマンの導きによって何処かへ吹っ飛ばされたところで『幻影篇』は幕を閉じた。
そりゃあ、ファンからの声ももっともなことである。

ということで、本書はシングルパパになってしまったキリコ・キュービーの子育て話なのである。
とは言っても嬰児相手では物語にはならない。生物学の奇跡。「神の子」は身体及び、知能を急激に成長をさせて見せた。
キリコは彼をルーと名付けた。
前半は、ルーの異常な成長振りと、それに応じ、また補うキリコ、そして不慣れで苛酷な環境の下、人々の助けを借りながらルーを育んでいく旅を描く。
しかし、ワイズマンの後継者が放置され続ける筈もなく、やがてルーを求める軍の手が迫る。
そしてやはりゴウト、バニラ、ココナ、さらにロッチナと、お馴染みの連中もキリコ達に引き寄せられるのである。
ワイズマンはルーへの試しも怠らない。果たしてルーは自らの後継者足り得る者なのか?
一方、当のルーは後継者の道を選ぶのか?
そしてキリコは、ルーの選択と行動をどう受け止めるのか?

前半は特になかなか地味な展開で、これまでのボトムズの世界観とは趣を大いに異にする。
何故こんな感じなんだろう? と、少なからず違和感を覚えたのであったのだが、先述のウェブインタビュー記事にて高橋監督が本書に関して語っている箇所があり、これが参考になった。
「キリコの哲学としては、育てるというのはどういうことかと言えば、食わせて、生き方を教える。それだけで、あとは責任の取りようがない世界ですからね。そういったことが、小説としてどう書かれているのか読んでもらえればと。さっきも言いましたが、『幻影篇』の中で、「神の子」らしき存在が物語の中に放り出されて決着が付いていない。それに関しての決着は付けるという気持ちはあったのが書き始めたきっかけです。それを小説で描くに当たっては、僕が日常的に今どういう生活をして、どんな気持ちでいるのかというのがそこに込められるといいなと思っていましたね」
また、続く以下の言葉によって、前半の展開についての納得も或る程度いく。
「僕はこれまでアラスカに8回くらい行っているんですが、アラスカは「ラストフロンティア」と呼ばれるほど何も無いところなんです。そんな何も無いところで、僕が何を感じたのかということを小説の中に盛り込むことが一つの楽しみでもありました」

後半は軍や軍装として使われる二足歩行型ロボット「AT」もちゃんと登場するが、全体的には会話劇っぽい印象が強い。
これをアニメ化するのはなかなか力業だろう。そう思ったが、しかし『孤影再び』も小説とアニメ版では中身が殆ど違っていたし、映像化があるとすれば、やはりメディアの違いに合わせた魅せ方を考えて作り直すのだろう。
さて、その日は訪れるのだろうか。現段階では分からない。



装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇
作者: 高橋良輔
発売日:2023年2月10日
メディア:単行本

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