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大﨑道雄著「はじめての商品企画」セルバ出版 書籍レビュー

 はじめて何かビジネス、商品、サービスを始める時、企業であっても、個人であっても、共通に身に着けておくべき基本がある。本書は、製造業としては、異例の営業利益率50%以上を継続的に達成しているキーエンス企画部門で、18年間企画業務に携わった著者が、キーエンスで学んだ「成功度の高い新商品企画の手法」を紹介した書籍である。

 著者の大﨑道雄氏は、学生時代にキーエンスに興味を抱き、1997年に大阪大学を卒業後、キーエンスに入社。その後、商品企画部門、商品開発部門で約18年間、多数の新商品プロジェクトに参画し、高収益のノウハウと経営哲学を学ぶ。その後、独立を果たし、現在は、中小企業向けに新商品企画・開発のコンサルティングを行っている。

 まず、著者が本書のはじめに記した内容を紹介する。

 これからの時代、企業またはビジネスをする個人はどのようにしていく必要があるでしょうか。それは「自ら世の中の変化を読み取り、顧客のために
役に立つ、課題を解決する商品・サービスを生み出すこと」に他なりません。世の中の変化は当然起こるものとし、その変化に対応する柔軟さが必要なのです。本書ではこのような行動のことを「新商品を企画する」と定義しています。(中略)これまで新商品・新規事業を自ら企画したことがない企業・個人事業主を対象に、「企画のやり方・考え方」をまとめています。(中略)つまり、新商品のやり方さえ習得すれば、永続的に新商品を生み出すことができるのです。永続的な商品企画体制は、永続できる企業を導きます。(中略)高い業績とは、多くの要素により生み出される結果ではありますが、その中で重要な要素の一つとして「新商品の成功確度の高さ」が挙げられます。企画案1つひとつの精度が高く、成功率が高くなる考え方、進め方をしているのです。

大﨑道雄著「はじめての商品企画」セルバ出版より

 本書は、
第1部 商品企画の重要性
    商品企画の重要性について解説
第2部 新商品企画の方法
    具体的に新商品企画の業務内容を解説
    企画業務の理論編
第3部 新商品企画のスタート
    実際に企画チームを運営する上での体制や心得、ヒントのまとめ
の構成で「成功確度の高い新商品企画の手法」を述べている。

 それでは、まず、第1部 商品企画の重要性から紹介する。

〇時代変化のスピードが上がっている
 これまでモノを所有することが喜びであったことが、逆にモノを所有せずシンプルに生きることを求めるといった考え方が出てきています。(中略)
一方で、モノの豊かさがなくなったかというとそうではなく、何かを所有するにしても、他人との違い(個性)を重要視するようになってきました。
 このような変化の結果、モノを選ぶ基準が多様化しており、さらにその変化のサイクルが非常に速くなっています。(中略)
 こうした需要の変化は、ものづくりの現場にも大きな影響を及ぼしています。以前のような大量生産ではなく小ロット生産になり、タイムリーに納期を守る必要があるといったことです。(中略)
 時代の変化といった環境については、一企業や個人でコントロールすることは不可能です。この環境の中で、いかにして最適な商品サービスを企画できるかが重要となっています。
〇顧客ニーズの本質と変化への対応
 B to B(対法人向け)ビジネス、B to C(対個人向け)ビジネスいずれの場合においても、顧客のニーズを満たさないと売れません。ごくごく当たり前のことです。そして、顧客のニーズは変化をしていますが、実はニーズの本質はそう変化していません。
 例えば、誰かと気軽にコミニュケーションを取りたい、(中略)こういった内容は普遍的なものです。(中略)
 「連絡を取る」という本質は変わらないけれど、背景にあるテクノロジーの進化によりその手段が大きく変化しているのです。つまり、顧客が求めるものの本質をしっかりとらえながら、時代に合わせたスピード感、テクノロジーの活用によって、最適な手段やモノやサービスを提供する必要があります。(中略)
〇受託型から企画型の経営へ
 筆者が依頼を受けるクライアント様に、ものづくりをする製造業の方がたくさんいらっしゃいます。金属加工業様であれば、ある部品を発注する顧客からの部品加工の依頼により事業が成り立っています。顧客の業界によりますが、その部品が何のためにどのように使われるかは教えてもらえません。発注の数量、厳しい納期、品質が要求されます。(中略)
 依存型事業は、顧客の対象商品が売れ続ければいいのですが、そうでない場合は即座にあおりを受けてしまいます。常にリスクを負った状態になっていると言えます。ビジネスをする上でリスクは付き物ですが、同じリスクを負うなら、自分でコントロールできる状況を自ら生み出し、事業を創る立場になるべきだと考えます。受託型から脱する方法は、「顧客のために新商品を自ら企画する」しかありません。
〇環境はますます悪化している
 ギリギリの利益率でもプラスであればビジネスを継続することも必要かもしれませんが、できるだけ早く自社で価格(=利益)をコントロールできる状況をつくるしかありません。
 受託ビジネスの場合、価格も選定の要因となっているケースが多く、簡単に値上げをすることは難しいでしょう。自ら企画した商品であれば、価格を自由に設定することができます。もちろん競合他社と同じものでは価格競争に巻き込まれますが、何かしらの差別化ポイントを備えた商品を顧客に提供することで価格のコントロールが可能になります。
〇新商品企画は経営そのものであり会社の将来をつくる
 その時代その時代に合わせた求められるものを、自ら企画して開発しお客様に届ける。これこそが理想とすべき製造業の姿でしょう。(中略)
 例えば、まずは既存と新規の割合を9:1からスタートし、徐々に新製品比率を上げていくというやり方です。時代の変化が早い時代だからこそ、その変化に追従する体制が必要です。それが貴社の将来をつくります。
 中期経営計画を作成されている経営者が多いと思います。その中で3年から5年というスパンで、新商品企画商品の売上高、利益率、売上比率をイメージしてみてください。具体的なアイデアもない状態で売り上げを置くことは難しいのですが、会社成長のイメージの中の新商品比率をどのぐらいにしていくたいのかを時系列で示すだけで十分です。
〇企画習得により永続的にビジネスを生み出すことができる
 これまで受託ビジネスをしてきた会社にとって、自ら企画して商品化することは「ハードルが高い」と感じられるかもしれません。しっかりとその方法を取得し、チャレンジしてみること、継続してトライし続けることにより、新商品企画の体制ができあがります。
 1つひとつの段階を経て、商品を開発し、2つ目、3つ目の商品を企画することで、永続的にビジネスを生み出す体制が出来ていると言えます。この状態にできれば、時代の変化に追従できる企業になります。

大﨑道雄著「はじめての商品企画」セルバ出版より

 そして、コンサルタントとして活動する中で、多くの中小企業の経営者が抱える悩みに遭遇し、その処方箋を紹介している。

〇社長自ら企画している
 企画という部署やチームがないため、経営者自身が企画するしかありません。会社の5年後、10年後を想定して、将来あるべき姿を考える人は経営者しかいないというケースが非常に多いのです。結果的に、社長自ら企画することになるのですが、社長業が忙しく隙間時間でその構想を練っているという状態です。
 ここでの問題点は、将来の視点で考える人がいないことです。この仕事を切り離して、担当者を任命して任せることが重要です。
〇社員の能力がないから任せられない
 企画に向いている人というのは、新しいことを考えるのが好きな人、人とコミュニケーションが取れる人です。アイデアを出すことが好きな人はそれを苦痛と思っていません。自然と考える「癖」が出来ているのです。
 こういった人は20~30人の人が集まれば、数人はいるはずです。
〇やったことがない・やり方がわからない
 本当にやるべきことであるならば、過去の経験の有無は関係ないはずです。(中略)
 企画という仕事は、訓練によってできるようになります。(中略)
これまで関わったクライアント様では3~6カ月で企画の考え方が身につき、メンバー同士でしっかり議論をしています。早い企画者は数カ月で企画を立案し、経営者にプレゼンをしています。
〇いい企画案(アイデア)が出るかわからない
 多くの経営者が、やる前から確度高く進めたいと考えます。(中略)新商品企画とは、当然ながら将来のことなので、どれだけアイデアが出るのか、その内容はいいものなのかはわからないものなのです。
 ただはっきりしているのは、やらなければ成果(企画案)はゼロとなります。結果を気にすることは重要ですが、結果が出るかわからないからやらないというのは間違っています。それであれば、現状維持を続けるか、既存ビジネスを延ばしていくしかないでしょう。
 現に、「結果はやってみないと絶対に出ない。仮に出なくても企画の考えやプロセスは学べるのだからやりましょう」と伝えるとたくさんの経営者から進めたいというお声をいただくことが多いのです。
〇開発する技術がない
 「そもそも開発できないと意味がない。当社には技術がない」このようにおっしゃる経営者がいます。確かに、ものづくりをする上で技術や人員、設備が必要になってきます。
 しかし現代では様々な仕事や技術を外部に委託することもできますし、ある設計業務のみを副業案件として依頼することもできます。世の中にある技術を駆使しても不可能なものは当然実現できません。一方、世の中に技術や人材が存在するならば、それをうまく活用してビジネスにすることが重要です。
〇うまくいくかわからない
 はじめからうまくいくとは限らない、繰り返しトライして精度が上がる
〇以前トライしたがうまくいかなかった
 主に3つの原因が考えられます。
 1つ目が、きちんとした調査プロセスを経ていないことです、中には、そもそも調査を実施せず商品化したケースがありまます。
 確かに実際にやってみることで情報や課題が得られます。しかし、全く調査をしないで進めることは大きな問題です。結果もなったなりになるでしょう。
 2つ目が、とにかく思い付きで進めてしまったことです。新規分野のイメージや世間一般の評判により「何かわからないけれどうまくいきそう」と判断していまったことが原因です。企画をする上で判断するために必要な情報がたくさんあります。これらをきちんと整理して情報を集めることで、ようやく判断が可能になります。
 3つ目が、開発できるからといって商品化したことです。自社ノウハウや自社設備などを用いてつくれてしまうため、「やってみよう」となりがちです。制作や製造にかかる費用がほぼなくリスクが小さい状態で進めるのであれば、問題ないかもしれません。(中略)このケースは1つ目の「きちんと調査しなかった」という原因と共通の内容があります。

大﨑道雄著「はじめての商品企画」セルバ出版より

 次に、第2部 新商品企画の方法について。本書では、企画プロセス、開発プロセス、生産プロセス、販売プロセス、アフタフォローまで、その考え方、実践の方法を紹介している。本レビューでは、企画プロセス、開発プロセスにフォーカスし、その内容を紹介する。

■事業企画と商品企画
〇事業企画とは商品企画の連続
 新商品企画の具体的な手法の前に、事業企画と商品企画について解説します、事業とは、「ある分野の商品を継続して販売し続けること」と定義できます。つまり、ある特定の顧客に対して、商品の種類(ラインナップ)、商品の継続(バージョンアップ)を維持している状態が「事業」を継続しているということです。
 逆に商品単体での企画・開発・販売においては、事業の第一歩を踏み出した状態といえます。
 これから新しい分野に参入・進出しようとする場合は、まずは第一歩の商品企画を行い、その後継続して商品展開することで事業化するといえるでしょう。もちろん単体の商品だけでも事業と表現するケースもあります。
 しかし、事業とは継続している状態を指すならば、一つの商品を企画販売して終了ということでは不足しています。顧客の新しいニーズや要望対応、競合による競争の影響を受けるためです。そのためには、商品的な改良や販売戦略を見直すことが必要になります。
〇ターゲット顧客にフォーカスする
 新商品企画のアプローチについて、大きくどのように考えるべきかを記します。多くの企業で考えられるのが、自社の持つ資産のうち、技術や人材、設備に注目した企画の方法です。この方法は間違いではなく一つの企画手法なのですが、おすすめしたいのは「顧客ニーズから考える」ということです。
 いくら素晴らしい技術や最先端の整備があったとしても、世の中の顧客に受け入れられなければ意味がありません。いずれは「自社で開発することが理想だ」ということも理解できますが、まずは顧客の求めるニーズを先に考えることが必要です。
 この考え方のことを「マーケットイン」といいます。一方、技術や人員、設備などつくれるものから考える手法を「プロダクトアウト」といいます。企画の成功率を上げるという意味で「マーケットイン」をおすすめします。(中略)企画案のきっかけが自社技術でも、競合商品でも構いません。それぞれのきっかけがあり、その企画案として誰をターゲット顧客とするのか、その人の求めるものは何かを明確にすることです。商品やサービスはその問題(困り事)を解決する手段ですが、他に手段が存在するかもしれないのです。企画は顧客の課題を解決することにあるということをしっかりと覚えておいてください。
〇顧客を固定して連続して商品を企画する
 商品企画を続けて事業にしていくためには、商品カテゴリーに注目しがちです。しかし、販売している商品の内容で事業をするというよりは、購入いただく顧客に注目すべきです。顧客を(ある程度)固定して、その顧客が求めるものを展開していくのです。
 結果として、その分野で商品展開しているように見えるのですが、顧客に注目することをぜひ意識してください。(中略)
 では分野や業界をどのように確定していけばよいのでしょうか。既存事業の延長であれば、新規事業と呼べない気がするし、全く新しい分野もリスクが大きいと感じられるでしょう。確度を上げて進めたい場合には、既存事業の顧客が求める、新しい分野の商品を展開することをおすすめします。「顧客にアクセスできること」がとても重要だからです。
■新商品企画という仕事
〇企画プロセス
 企画担当者が、世の中の課題・困り事を見つけ出し、その環境に対し新しい切り口の商品を市場投入するという「策」を考えるプロセスです。(中略)この企画プロセスでは、「誰に(ターゲット顧客)」「何を(商品・サービス)」「どうやって(販売手法)」をざっくりイメージします。商品特徴についてはコンセプトレベルの大まかなものです。ここでいうざっくりとは、詳細なスペック(仕様)や機能は後に明確にするとして、顧客の課題解決に注目した概念(コンセプト)レベルの定義まで決めましょうということです。このコンセプト案は、顧客に伝えるとその効果をイメージできるものでなければなりません。
〇開発プロセス
 企画案が成立し、次のステップに進む判断をすると「開発」フェーズに移行します。
 開発とは、企画者が考えた企画案に対し、具体的な商品イメージをつくっていくことです。企画案では大まかなコンセプト案であったのに対し、具体的に開発設計・外注・生産を進めていくにあたり、より詳細な仕様を決める必要があります。さらには、開発という技術者視点でより商品の付加価値を高めることも同時におこないます。
 開発とは、より付加価値の高い仕様、品質の担保、原価低減、開発イニシャル費用低減、より早く完成させる日程の各要素を最大限にすることです。実現性を考えるのにあたり、それらを開発する具体的手法(技術の選択)を決めなければなりません。
 他にも他者に追随されない工夫、特許戦略、開発設計立案(人員計画)、外注の発掘、生産における組み立てしやすさ、出荷検査の仕様、適合規格など業務は多岐にわたります。
 プロジェクトリーダーはこれらの責任をすべて担う重要な役職です。
〇企画とは何か
 ずばり「計画すること」です。もう少し細かく説明すると、「現在の状態とは異なる将来の状態を定義し創り出すこと」です。
〇最初のゴール、着手承認
 企画における最終的なゴールは企画案の内容を実現すること(新商品を発売し、顧客の役にたつこと)ですが、ここでは最初のゴール(目標)について記載します。
 このゴール(目標)とは、①企画案を抽出し、②市場調査を行い情報を集め、③社内的に進めてOKと着手承認を得て、案件を進める予算を確保することです。
 これから起業するという読者は、この内容で投資家から資金調達をする段階、企画案を進めるのにあたり強力してほしい会社や人員を説得する段階と考えてください。
①企画案の抽出とは、将来の市場性や対競合会社・競合商品との競争力維持を考慮して、注目市場を探し出すことです。さらに、その市場に対して、ターゲット顧客の確定、コンセプトの立案をすることです。
②市場調査は①における注目市場の基本的な情報をあつめること、また立案したコンセプトの検証を行うことです。
③社内的な承認とは、集めた情報を企画判断いただく方々(経営者)にプレゼンテーションしてその企画を進めて問題ないか確認すること、その後の開発計画立案の予算を取ることです。
〇企画において考えるべき項目
①背景・着手理由

 背景・着手理由とは、なぜこの企画を進めるのかという理由です。世の中の傾向、顧客の考え、社会の動向などを記載し、この市場がチャンスであるということが書いてあるべきです。自社がなぜやるのかという観点において、例えば会社の資産を生かせるという理由があると、さらに企画は魅力的にうつります。
 また、狙いをしっかり明確にすることが大切です。市場シェアを取り、売り上げ利益をあげることはもちろんですが、将来にわたる分野の参入による効果や、顧客拡大、既存事業との相乗効果など売り上げ利益とは別視点の狙いを定めることで、企画案としてはプラス材料になります。
 一方で、あまりに既存ビジネスから離れすぎていること、あるいはビジネスがイメージしてもらえないことになるとハードルが上がってしまいます。企画において、この項目は最も重要であるといっても過言ではありません。
②市場・ターゲット
 市場とは、その名のとおり売買する場所のことです。市場性は、その規模の大きさや成長について情報を入手し考察したものになります。その市場で年間取引されている金額を表した市場規模を明確にします。また、その市場が伸びているのか、横ばいなのか、成熟市場なのかという市場のステージ(段階)を調査します。
③商品特徴
 ターゲットに対して、どのような特徴をセールスポイントとするのかを記載します。箇条書きで3つほどあるといいでしょう。顧客の課題を解決するような内容、競合に対して優位性が出るような内容をまとめます。商品仕様は具体的である必要はありませんが、絶対に外せないポイントがあれば具体的に記載すべきです。
 また、それらを簡潔にまとめたコンセプトシートを作成することをおすすめします。コンセプトシートとは、「タイトル」「顧客課題・困り事」「商品特徴」「商品イメージ」を記載したもので、今回考えている新商品をA4サイズなどの用紙1枚にまとめたものです。
④競合状況
 企画する新商品の競合情報です。市場が明確に存在すれば、最低でも市場シェア上位3社程度を徹底的に調べましょう。どのような会社が、どのような規模・力の入れ具合で参入しているのか、その売り上げ・販売数量はどのくらいなのか明確にします。また、各社の商品の特徴も調べておきます。新商品を販売したとき、これらの競合を戦う可能性があるため、対策を練っておくべきです。
⑤商品種類
 発売する商品種類の一覧、各バリエーションの簡単な説明
⑥価格戦略
 商品ラインナップごとの標準価格、実勢価格、値引き率
⑦原価・粗利率
[着手承認時点]
・原価目標値
[商品化承認時点]
・ラインアップごとの原価、実勢価格、粗利率
⑧日程
[着手承認時点]
・商品化承認までの日程
[商品化承認時点]
・商品開発までの日程、開発日程、生産日程、販売日程
⑨開発イニシャル費用・回収期間
[商品化承認時点]
・商品発売までの社内費用(時間)
・商品発表までの社外費用
・商品発売後、どのくらいで回収できるか
⑩販売予測
[着手承認時点]
・商品種類ごとの売り上げ、販売数、平均単価、顧客数
[商品化承認時点]
・着手承認の数字に加えて、原価、粗利、販売にかかる経費、営業利益
⑪販売手法
・販売の方法
・広告戦略など
⑫懸念事項
・企画視点:競合の動き、開発中における市場変化、環境変化など
・開発視点:技術的難易度、日程、原価、開発イニシャル費用など
・販売視点:顧客アプローチの懸念、リピート購入の懸念など
⑬展開案
・考えられる商品展開のイメージ
■企画立案の進め方
 企画案を抽出するために前提となる条件を4つ、そして企画案抽出後の具体的なステップを12記載します。
〇前提となる条件
[前提1]顧客のニーズから考える
 マーケットインが基本。ターゲット顧客に注目し、顧客の課題や困り事を見つけることが第一です。ここで大切なのは、顧客すら自分自身で課題や困っていると思っていないことも含まれることです。
[前提2]自社保有財産を中心に考える
 プロダクトアウトも1つの方法。自社が持つ技術や製造設備、生産に関する取引先といった資産をもとにそれを活用して企画案を考えます。
 また、見逃しがちなのが自社の持つ顧客リストと取引先リストです。
[前提3]広くアンテナを張る
 企画者として、普段から世の中の傾向、顧客の動向、流行っているものは何かなど広い視点で「現在」をみましょう。
[前提4]競合会社・競合商品から考える
 アプローチとして会社に注目する方法と商品に注目する方法があります。
 会社に注目する方法とは、例えば既存ビジネスの競合会社がどのような戦略を取っているのか調査することです。どのような顧客を得ているのか、自社にはなく競合にある商品にはどのようなものがあるのか、販売地域に差はないかといったことを調べます。
 商品に注目する方法とは、その商品の企画案を想像して、ターゲット顧客は誰か、どのような課題を解決するのかを調査・推測します。それを自社で開発するとしたらどうなるのか、あるいは別の企画案に技術や販売手法をマネするとどうなるのかと考えを巡らせます。
〇企画案抽出後の具体的なステップ
[STEP1]ネタ抽出アウトプット
[STEP2]市場調査と競合調査
[STEP3]コンセプト立案
[STEP4]商品案と売り方の検証
[STEP5]価格設定
[STEP6]販売体制の検討
[STEP7]販売予測立案
[STEP8]企画書にまとめ着手承認へ
[STEP9]懸念事項の解消
[STEP10]開発計画立案
[STEP11]生産計画立案
[STEP12]商品化承認

大﨑道雄著「はじめての商品企画」セルバ出版より

 以上が本書の概要である。

 私自身も長年商品開発の仕事を行ってきたが、本書は、そのプロセスを理論的に整理した良書であり、私の頭の中も整理出来た。
 特に企画業務を言語化した
・世の中の課題・困り事を見つけ出し、その環境に対し新しい切り口の商品を市場投入するという「策」を考えるプロセス
という言葉は、大きな学びとなった。
 本書籍レビューでは紹介出来なかったが、書籍の中では、実例、図解も交え極めて丁寧に、商品企画を解説している。企業、個人において、新しい商品、新しいサービスの創造している人々に一読をお勧めする。

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