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【研究職はAIに仕事を奪われる?】ChatGPT出現以降、不安が尽きない大学院生がレジェンドたちに質問しまくった結果得た3つの暫定解
みなさんこんにちは!じんぺーです。
今日は、今ほぼ全ての話題をさらっているChatGPTに関する記事を書いていきます。
みなさんは、ChatGPT使っていますか?もう本当に楽しいですよね!ぼくは、主にネット上に転がっている情報を集約したり、アイデアを出す協力をしてもらったりするのに使っています。これを見ていると、面倒だった作業がだいぶ代替されていくような実感があります。
ただ、残念ながら、このテクノロジーの出現によって、不安を覚えてきたこともあります。
アカデミアに進みたい、けど、ChatGPTに勝てなさそう…
これを読んでいる大学院生、研究者の方、「この仕事、AIができそうだよなあ」って思いませんでしたか?ぼくはめちゃくちゃ思ったし、今も思っています…
とはいえ、短いながらここまで研究に情熱を傾け、研究者を志してきたので、「はい、後はChatGPTくんよろしくね」と素直にもなれません…今までと同じような研究活動をしていていいのかと尽きぬ不安を持ちつつも、アカデミアの道に進みたいと今でも思っています。
そんな大学院生が、失礼を承知で、色々な研究者に「この仕事はAIに奪晴れませんか?どうしたらいいですか?」と聞いてきたので、その回答を振り返りつつ、今持っている暫定解についてシェアしていきたいと思います。
こんな人たちに質問してきたよ
そんな質問をこれまでしてきた相手としては、まずは、自分のボス(京都大学大学院教育学研究科准教授の野村理朗先生)、ミシガン大学の北山忍先生(心理学会の生きるレジェンド)、カリフォルニア工科大学の下條信輔先生(同左)、AIの研究者で大阪万博のディレクターもしている佐久間洋司さん、(研究者ではないけど)時代の最先端をいつも走っている起業家のけんすうさん、etc. です。
この方々の発してきた言葉をそのまま書いていくことはしません(許可も取っていないので…時々引用はします)。ただ、この方々の回答や他の研究者の発信を聞いて(例えば落合陽一さんのWeekly Ochiai)、自分の中でひとまずまとめた暫定解をシェアすることには意義があると思っています。
ぜひ、楽しんで頂ければと思います!
(価値があるまとめと思うので、ここから有料にします。ぼくの研究クラウドファンディングの支援者さんには、同じ文章を公開しているので、よかったらそちらもご検討ください!)
なぜそんなに焦っているのか?
そもそもなぜこんな話をいろいろな人に振っているかという前提も共有しておいた方がいいかもしれません。
簡単に言うと、研究者の仕事は「書くこと」であり、最大のアウトプット方法が「論文の執筆」だからです。これは、ChatGPTが最も得意にしていることの1つで、ぼくたちが何か月、何年かけてやっていることを、何秒、という単位でやり抜けるだろうからです(既に内容によってはできている)。
また、他にもAIが得意なプロセスがあります。ぼくの専門である認知心理学は研究手法として実験を行うことが多く、得られたデータを統計を用いて分析していくことが多いです。そんな「分析」は既にAIが得意な領域です。
さらに、研究の題材や仮説を考えること、結果を解釈することも人間が優位性がありそうなものですが、これらについても近い将来できるのではないかと思っています。題材や仮説の立案は研究プロセスの中でも、クリエイティビティを求められるところと思いますが、多くの仮説が先行研究から生み出される、または先行研究の組み合わせで拡張されることを踏まえると、なんだかすぐにやってのけてしまいそうだなあと思ってきます。GPT-4は、簡単な推論を行うことが既に報告されており、結果の解釈もできるのだろうなあと思います。
冷蔵庫の中身の写真を撮ってGPT-4に聞けば、レシピを考えてくれる
— Shodai (@shodaiiiiii) March 15, 2023
便利すぎ!!!!!!! pic.twitter.com/i80ULzl7CP
こういうのを見ると、グラフの結果から、結果の解釈をして、先行研究をもとに、考察を行うことって割とすぐにできちゃいそうではないですか?
とまあ、ChatGPTが研究できる未来はすぐそこだろうなあというのが、焦っている1番の理由です。
「研究職はAIに仕事を奪われますか?」とレジェンドたちに聞いてみた結果
そんな焦り、不安を抱いた時は、相談するに尽きます。
この2、3月は幸運なことに、研究者の方や時代の最先端を走る方とお話する機会に恵まれ、初対面ながら、質問しまくっていました。前置きが長くなりましたが、ここからそんな意見をまとめつつ、3つの暫定解を書いていきます。
1.まだまだ取るべきデータはたくさんある
まず、希望パートからいきます。
これは、実験心理学者として、頂いたアドバイスで、全研究者に当てはまることではないかもしれません。
上で、計画立案、分析、考察、論文執筆と、AIが得意な(得意になりそうな)ことを書いてきましたが、研究プロセスの中で、抜けているところがあります。それは、「データを取る」ということです。
一見、このデータを取るということもAIが得意そうです。なぜなら、ビッグデータと呼ばれる言葉が数年前からバズワードとなり、デジタル上で扱うことができるデータはその単位を大幅に増加させたからです。例えば、Youtubeの視聴データは毎分毎秒増えているだろうし、Google mapで人々がどこをいつ訪れたかといったデータも膨大そうです(例えがGoogleばかりですね…笑)。ぼくたち実験心理学者が、実験室で、100人のデータを集めることさえ苦労することを考えるとデジタル上のデータに勝ち目がないようにも思えます。
しかし、レジェンドたちはそうは考えていないようでした。例えば、けんすうさんは、「ビッグデータというけど、世の中に溢れているデータのほとんどを取ることができていないと思っている」と仰っていました。ぼくのやっている俳句の研究になぞらえ、「俳句のどこが美しいと思っているかのデータなんてじんぺーさんくらいしか持ってないでしょ」と言ってくださって、とても励みになりました。たしかにそうですよね!
また、大阪万博ディレクターの佐久間さんは、Human Computer Interaction (HCI) を専門されていることもあり、「(人間が関わる)データ取っておいてよかった」と仰っていました。情報学領域の方たちの方がよっぽど大変だと思う、という話にもなり、たしかにそうかもしれない、と思いました(情報系の方が読んでいたら、希望パートになっていないかもしれないです…)。
そんなわけで、実験心理学者が扱う行動データや脳科学データは、(今のところ)人の手によってのみ収集できることが多く、もう少し安泰で居られるかもしれない、と思いました。
2.とはいえ、5年より先は分からない
とはいえ、その優位性もこれから先どうなるかは分からないと思っています。先ほど、佐久間さんの言葉を引用しましたが、もう少し続けると、「5年後は正直分からない」ということも仰っていました。
情報学や他の領域と比較すると、少し耐えるといった程度の話なのかもしれません。
例えば、ぼくは、感情の研究をしていますが、ある程度の理論が確立され、表情や姿勢などから感情を読み取る精度が上がっていくと、「感情を主観的に報告してもらう」というデータがあまり重要・必要でなくなってくるかもしれません。
そうなると、上で書いた「データを集めることができる」という優位性も徐々に失われていきます。また、メタバース等での滞在時間が長くなればなるほど、デジタルの世界のアイデンティティが重要視され、生身の人のデータの重要性そのものが下がっていくという世界線もあるかもしれません(逆に上がっていく可能性も十分にありますが)。
というわけで、5年後以降(もうちょっと早まるかもだし)はどうなっているか正直分かりません。
3.今を楽しみながら、尖った研究者を目指す
そして、最後の3つ目ですが、「今を楽しみながら、尖った研究をしていく」ことが大切ではないかと思っています。これは、レジェンドたちが口を揃えて言っていたことでもあります。
というのも、正直どうなるか、全く分からないから、そういうことを考える前に、目の前のことをやっていこう、それも自分が今解決すべきことにストレートで向かっていくのが大切だということです。カリフォルニア工科大学の下條先生は「上がり目を考えないと」と仰っていて、「これをやったら知りたいことが知れそうだ!」ということをいつも考えないといけないということを痛感しました。
ぼくのボスは、「変態的な研究者が生き残る」と言っていて、だいぶ抽象的な表現だなあと思いつつも(いつも抽象的な言葉で後は自分で考えなさいというスタンスが多いボスです)、「尖る」ことの大切さを言っているのだと思います。誰でも思いつく研究はAIが真っ先に思いつく(先行研究の組み合わせですぐに真似できてしまう)ので、「え、それやるの?できるの?」といったことに果敢に挑戦していくことが大切ではないかなあとかみ砕いておきます。
ミシガン大学の北山忍先生も、今やっていることが後から何かしらの形で繋がっていくから、目の前のことを、というようなお話をされていました。
これは解決にはなっていないのですが、こんな時こそ、ぼくが研究している曖昧性耐性(曖昧で不確実な状況でもその場を楽しめるような性格特性)を付けて、楽しく研究していこうと思いました。
おまけ:教育はどうなるのか?
この生成系AI盛り上がり期の研究者ビジョンは上の通りですが、研究者といえば、大学教員が最も思いつきやすいところだと思います。大学教員は、教育にも携わるわけですが、その「教員」という仕事はどうなるのか、簡単に書いて終わろうと思います。
ここでも何人かの先生に聞いてきたことを参考にしながら書きます。大学の先生ではないですが、ある高校の先生は、「どんなに仕事が置き換わっても、人間がAIに勝てることが必ずあります。それは、経験を語ることです」と仰っていました。この「経験」というのは、大学教員であっても同じことが言えると思っていて、今、このChatGPTが来てどうなるんだろう?と悩み、もがいている経験さえも、もし教育者になった時に活きてくるのかもしれないと思いました。
また、慶応義塾大学の安宅教授は、教育新聞での記事で、
リアルな体験やリアルな空間なしに、人間が育ったり、変容したりすることはない。人と接するから、うれしかったり、悔しかったりという感情も生まれる。だからこそ、生身の教員の存在は極めて重大だ。
と語っていました。これも大学教員というより、小中高の先生方を思い描いて、語っていると思いますが、教育一般に当てはまることだとも思います。
(ちなみに安宅さんは、シン・二ホンという本を書かれていて、そこでAI時代の教育についてもしっかり語られています。)
ぼくの今のボスも、オンラインでミーティングすることが多いとはいえ、やはり師弟関係だと思っているので、先生の姿から何を盗み、学ぼうかといつも考えています。そういう関係性は、持続するのかなあと思いました。
おわりに
いかがだったでしょうか?自分自身この数週間は、虚無感とワクワク感とが交互にやってくるような時間を過ごしていて、まとまっていないところも多かったかもしれません。
ポスドク目指すのをやめて、パートナーの実家の農家を手伝う大逆転わんちゃん?笑 https://t.co/kiq3OLnsp0
— じんぺー☂️ (@hitsuwari5th) March 17, 2023
そして、テクノロジーの進化が指数関数的というほかなく、また数週間後にはどうなっているか分かりません。
ぼくも迷い続けながら、研究を楽しみながら、やっていこうと思います。3か月に1回くらいこのテーマはゆっくり考えて(時にnoteを更新して)いってもいいのかなあとは思います!
もし気づいたことなどあれば、気軽に教えて頂けると嬉しいです。
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