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『空間と作品』展@アーティゾン美術館。


マネ

 三連休だったからか、学生無料だからなのか、半分以上くらいが高校生~大学生くらいの若い人だった。
 大声で騒ぐということは無く、ひそひそ声で修学旅行みたいに仲良くはしゃぎ合っていて可愛かった。
 エドゥアール・マネの自画像の前で同じポーズを取っている女の子二人連れもいた。

 持ちネタでも披露してくれそうなポーズ。
 

 そのときはただ(若いっていいな)と和んだのだけれど、あとになってふと思ったのは、あれはもしかして、
「マネのマネをしていた」
 んだろうか。
 

作品と空間と

『空間と作品』展は、館の収蔵品を単体の「作品」としてだけで見るのではなく、それが飾られていた空間や額縁、それを所有していた持ち主の考え・好みなども込みで感じてほしい、という試みのようだった。
 ショールームとかリサイクルショップみたいになってる展示も無くはなかったけど、物珍しくて面白かった。

どれが美術品でどれが賑やかしでしょうか。

応挙の襖絵

 応挙の襖絵を眺めるコーナーは畳の部屋になっていた。
 靴を脱いでお邪魔して、正座でじっくり鑑賞した。新しい靴下を履いててよかった。

つい中を開けて布団とか出したくなる。

 畳に「ここから先は入らないでください」と線が引いてあるわけじゃなく、どこまで近づいていいのかは警報が鳴って初めて分かる仕掛け。
 私が見ているときも隣の人がにじり寄りすぎて警報に鳴られてしまっていた。でも応挙の筆遣い、鳥の羽根のふわふわ具合をもっと近くで見たくなる気持ちは分かる。

そして私も注意された

 エットーレ・ソットサスのサイドボードや山口長男《異形》、三岸節子《カーニュ風景》が人ん家の部屋のインテリアとして飾られていた頃を再現してある一角。

 奥の絵をもっとよく見たくて、サイドボードの前まで行こうとしたら「テーブルより先には行かないでください!」と注意された。
 特に線が引いてあるわけでもなく、テーブル席に座って談笑していた人もいたけれど、テーブルより奥に進むのは駄目。アウトになって初めて分かる難解なルール。
 私の少し後にも別の人が全く同じことをして同じように注意されていた。注意するほうも大変だろうな。

ロベール・ドローネー《街の窓》


「作品が飾られていた空間を再現する」というこの試み、私だったらこうは飾らないな…と強く思ったのはロベール・ドローネー《街の窓》。
 色が綺麗なこの作品が、個性の強いイランの《白地多彩人物草花文タイル》や重厚なアンティーク家具と一緒になって飾ってあったけど、私だったらこの絵は周りに何も置かないで、白い壁に単体で飾りたい。
 普通に展示されていたときのほうが私としては気持ちよく見られた。

5月にブランクーシ展を見たときに撮った《街の窓》。

 でも、応挙の襖絵を畳に座って見られたのは嬉しかった。企画そのものは面白かったと思う。
 以下、特に好きだと思った作品を列挙。

円空仏

 今年は円空仏にちょくちょく会えて嬉しい。

前田青邨《風神雷神》

 風神雷神のお尻とか乳首とかって今まで気にしたこと無かったな、という気づき。

セルライトなんて皆無。

青木繁《光明皇后》

 その時代の風物や小道具を「資料をちゃんと調べました」と言わんばかりに細かく描き込むのではなく、時空間の持っていたはずの気配そのものを筆遣いと色で表したような絵。 

朱色が綺麗だった。

ピカソ《カップとスプーン》

 ピカソの絵を「凄いらしい」とか「偉大らしい」とかの予備知識や先入観抜きで、素直に「好き」と思えることは私はあまり無い。
 この絵はその少数の例外。

栞とかブックカバーにしたくなる絵。

古賀春江《素朴な月夜》《遊園地》

 逆に、古賀春江の絵はだいたいなんでも好き。

 さらに詳しい解説を読むにはQRコードを読み込んでください、とパネルに書いてあったので読み込んだら、「指定のページは存在しません」というメッセージが出ただけだった。周りの人はちゃんと読めていたようだったので、私のスマホとの相性らしい。残念。
 でもアーティゾン美術館のサイトに行くと、画家の名言や生涯を紹介したページが充実していていろいろ読める。古賀春江の記事もあったので下にリンク貼ります。

水彩も好き。

ジーノ・セヴェリーニ《金管奏者(路上演奏者)》

 カルディの紙袋っぽい。

アンリ・マティス《コリウール》

 右上のピンクの雲(?)がすごく綺麗だった。
 サイズも私好みの小ささ。

 まだまだいいのがたくさんあったけど、キリが無いのでこのへんで。

おみやげ

 ポストカードを2枚と、『空間と作品』展のステッカー(121円)。ステッカーはいつもメモ用紙を挟んでるクリップボードに貼りました。

展示室の外の作品たち

 展示室の中の作品たちと違って、外に飾ってある彫刻たちは外の景色や自然光の移り変わりを合わせて楽しめるぶん、なんだか親しみが湧く。 
 円盤投げみたいなポーズと表情のクリスチャン・ダニエル・ラウホ《勝利の女神》。

「記録出すわよ!」という横顔。

 持っていた杖や鼻が欠けていて痛々しい《セクメト神立像》をじっと見ていたら、曇っていた外が突然晴れて、明るい陽射しがあたりに満ちた。

 今日もいい時間をもらったな…、と思った。

アーティゾンと言えばこの円柱。
また来ます。