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【雑談】エッセイを写経する

文章がうまくなるためには写経する(文章をそのままコピーして書く)とよいと聞いたので、何を題材にしようとかと探してみました。

まず、小原 晩さん「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」です。

 私がよく頼むのは、チーズケーキと、シナモントースト。チーズケーキも二種類あって、レアとトルテがある。いうまでもないけれど、生と焼である。私は二つとも食べたことがあるが、今のところレアに軍配が上がっている。レアチーズケーキにはブルーベリーが決まって四つのっていて、それがほろりと甘酸っぱい。まずはチーズケーキだけをひと口食べる。美味しい。その次にブルーベリーをのせて、ひと口食べる。か、かんぺきだ。そしてコーヒーを飲む。甘いものを食べた後に飲むブラックコーヒーよ。あっぱれ!
 もう一つ、小腹が減っている人にはシナモントーストをおすすめしたい。厚切りのトーストに、有塩バターがたっぷりと染み込んで、出来上がる頃には芳醇なシナモンの香りが店中にたちこめている。ひと口食べれば、ジュワとバターは溶けだして、シナモンの甘くてエキゾチックな香りは胸の奥の誰も知らないふかい場所までやってきて、ふわっふわっと香るのだ。なんて甘美な時間だろう。

小原 晩 ここで唐揚げ弁当を食べないでください

小原 晩さんは、とても身近なことを書いているのに、それを面白い文章にしてしまうのが本当にすごいと思います。まるで、世界の見え方が私たちとは違うのではないかと思わせるほどです。

同じような場所で、同じような日常を繰り返している中でも、小さな発見を見つけられるような気持ちにさせてくれます。

次は、朝井 リョウさん「そして誰もゆとらなくなった」です。

 そんな、生粋の甘党(過激派)の私にとって、クリスマスとは、イエス・キリストの降誕祭という認識ではない。もちろん、恋人同士でよろしく過ごす日でも、友人同士や家族でパーティを催す日でも、「私はぼっちです!(でもそんな自分が実は嫌いじゃないの!)」とインターネット上で過剰に喧伝する日でもない。
 ひとりでホールケーキを食べても社会から弾圧されない日、だ。
 許されるならば、私は毎日でもホールケーキと共に在りたいと思っている。ホールケーキとの共生。だけど、社会はそんなに甘くない(ケーキの話なのに)。まず悲鳴を上げるのは、身体である。ホールケーキと共に在った翌日は、ニキビが出来たり太ったり胸焼けをしたりするのだ。なんですかその顔は?
 社会は甘くないとか大袈裟なこと言っといてお前の身体のしょうもない食べすぎあるあるかよとか思ってるんですか?
 私の身体も紛れもなく社会の一部でしょう?

朝井 リョウ そして誰もゆとらなくなった

このあと、数日でホールケーキを5つ食べて健康診断で医者に呆れられる、というオチがつきます。一見ふざけているように見えても、直木賞受賞者。さすがの文章力が光っています。

朝井リョウさんのエッセイは、芸人顔負けの面白さです。読んだ中で「一番面白いエッセイ」と言っても過言ではないのではないでしょうか。

あまりうますぎる人の文章をまねしても難しいかもしれないので、写経してみて合わなさそうなら他にも探してみようと思っています。


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