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GDP成長率は3%なのに、S&P500はなぜ7%で成長するのか?
アメリカの経済成長率を示す「GDP」(実質)は、長期的に見て平均3%ほどの成長とされています。ところが、「S&P500」は、過去のデータを振り返ると年平均7%ほどで成長してきました。
この大きな差はなぜ生まれるのでしょうか? この記事では、その理由をわかりやすく解説します。
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GDPとS&P500は何を表しているのか
まずは、GDPとS&P500が表しているものを整理したいと思います。
GDP(国内総生産)とは、ある国の中で1年間に生み出された財やサービスの総額のことです。消費、投資、政府支出、そして輸出入をすべて合計して算出されます。国全体の経済規模や成長度合いを測る重要な指標です。
S&P500(株価指数)とは、アメリカの主要企業500社の株価をもとに算出される株価指数です。アップルやマイクロソフト、コカ・コーラといった世界的に有名な企業も含まれています。株式市場でのパフォーマンスを反映するため、国全体ではなく、上場大企業の成長を映し出す指標と言えます。
つまり、GDPは国全体の経済活動を示すのに対し、S&P500は選りすぐりの大企業の成長を反映しているのです。
S&P500がGDPより速く成長する主な理由
1. 優れた企業が集まっている
S&P500に名を連ねる企業は、どの業界でもトップクラスの存在感を持つところが多いです。新しい技術や経営手法をいち早く取り入れ、利益を大きく伸ばしていきます。
GDPには、大企業だけでなく小規模な事業者や、あまり成長していない分野も含まれます。そのため、国全体の平均値であるGDPと、大手企業をまとめたS&P500では伸び率に違いが出やすいのです。
2. グローバルに稼ぐ力がある
S&P500の企業は、アメリカ国内にとどまらず、世界各地でビジネスを展開しています。たとえば、コカ・コーラやアップルは全世界で高いブランド力を武器に、大きな収益をあげています。
国内と海外のマーケットでの売り上げがあるため、全体としての業績は好調を保ちやすいのです。GDPはアメリカ国内の数字しか反映しませんが、S&P500はグローバル経済の成長を取り込むことができます。
3. 株主還元(自社株買い)の効果
企業があげた利益は、配当金や自社株買いを通じて株主に還元されることがあります。特に自社株買いは、市場に出回る株式の数を減らすため、一株あたりの利益(EPS)が増えやすくなります。
EPSが高まると株価も上がりやすくなるため、投資家のリターンがGDPの成長率以上に高まる仕組みが生まれます。
4. 指数の組み換え効果
S&P500は、一定の基準を満たさない企業を外し、成長力のある企業を新たに採用する仕組みになっています。たとえば、業績が低迷している企業があれば指数から外され、その代わりに新たなスタートアップや急成長中の企業が組み込まれることがあります。
こうしていつも「元気な企業」がそろうことで、全体としての成長率が高く保たれるのです。
5. インフレの影響
実質GDPは「物価上昇(インフレ)」を調整して算出されるのに対し、S&P500のリターンは「名目」(物価の影響を除かない)で語られます。
アメリカのインフレ率が2~3%程度あると、その分だけ名目成長率は押し上げられます。GDPとS&P500を比べたときに、S&P500の数字のほうが高く見える一因になっています。
S&P500は長期投資で強みを発揮する
S&P500の高い成長率は、長期投資における複利の力を最大限に引き出します。例えば、100万円を年7%で30年間運用すると、約7.6倍の760万円になります。この差は時間が経つほど大きく広がります。長期的に資産形成を考える際に、S&P500の成長力は大きな助けとなるでしょう。
まとめ
これらの要因が組み合わさり、S&P500は長期的にGDPを大きく上回る成長を実現しています。
優れた企業の集まりである
グローバルな収益源を持っている
自社株買いを行っている
構成銘柄の定期的な見直しによる成長性の維持
インフレによる名目成長率の押し上げ
投資を考える際には、S&P500の持つ成長の仕組みを理解し、自分の資産形成にどう活用できるかを考えてみてください。時間を味方につければ、複利の力を存分に活かして、着実な資産の成長を目指すことができます。
投資や経済の世界は、学びがたくさんあります。一緒に知識を深めながら、自分に合った投資の形を見つけていきましょう。
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