「街と本」 昌谷 直
何回目だろうか。
新しい街を感じるのは。
越してきた街は、どこかよそよそしい。
道行く住民たちと、なんとか同化しようとする。
すぐにそれは、無駄な抵抗だと気づく。
中華料理屋の赤い看板を見つけ、
回鍋肉を注文する。
こちらも街をジャッジする。
本屋はあるかな?
商店街に古本屋を見つけた。
晴れた日の外のワゴンには古い文庫本が並ぶ。
自分の人生を色付けたタイトルを見つける。
「お?ここの店主はなかなかやるな」
隣で文庫本をめくる客も、
どうやらそんな風に感じているようである。
越してきたばかりの自分は新参者で、
街の住民とは、まだ誰とも交流を持てないが、
あの街では探しきれなかった本が、
なんと、ここで見つかった。
この街にして、良かった。
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