「好きなことを仕事にする」と「いまの仕事を好きになる」ことは、どちらが"最適"か
ネット記事やSNSなどで、「最近の若い世代(特に、Z世代)は、"自分の好きなことを仕事にしたい"と考えている人が多い」といった内容をよく目にします。
私はもうすぐ40代の(一応)ミレニアル世代で20-30代前半の方々とは違う価値観であると思いますが、私自身は若い頃から「好きなことを仕事にしたい」と思っていて、「同じように考える若い人たちは多いはずだし、これからもっと増えてくるはずだから、そういう人たちが働きやすい(=仕事を楽しいと思える)社会を作る必要がある」と考え、自らそれを実現するべく人事領域でのスペシャリストを目指すというキャリアを選択しました。
他方で、「自分の好きなことを仕事にしたくても、その機会が無く実現できない」「好きな仕事に就きたいが、やり方がわからない」、もしくは「そもそも、自分の好きなことが見つからない・わからない」という人もいらっしゃると思います。
かの稲盛和夫氏は、とある雑誌インタビューにて以下のように発言されたとのことです。
この考えは一理あると思いますが、しかしながら、「必要なのは好きな仕事に就く努力ではなく、たまたま就いた仕事を好きになる努力」であると言い切ってしまうのは、個人的には違和感を感じます。例えば"仕事への満足度"を個人的な感覚で数値化すると、
①やりたいことをやっている、かつそれが好き=100点
とした場合、
②やりたいことをやっている、しかし思ったほど好きではない=70点(以上)
③やりたいことではないことをやっている、しかし努力して好きになった=70点(以下)
という感じで、②と③はあくまで同点か、あるいは②の方が満足度的には高いのでは無いかと思います。
さらに、「与えられた仕事を好きになる努力」をするのであれば、③よりも②のケースの方が圧倒的に簡単な努力で達成できる(なぜなら、もともとやりたいこと=好きなことだから)のではないかと思います。
さらに、
好きなことを仕事にするためにする努力(好きなことを"見つける"努力も含む)
と
好きなことではない仕事を好きになるためにする努力
のいずれの努力に払う労力が大きいか、は個人によって異なるはずです。
ここで言う「努力」の中には、精神的・身体的・金銭的・時間的な負荷が含まれるはずで、これら全ての要素で具体的にどれくらいの負荷が発生するのかを数値化して比較することで、個人としていずれの選択を採るのが"最適解か"が導出されます。
数値化といっても、過去の経験やその時の心情などからざっくりと推定する程度で十分だと思います。
稲盛氏的には後者の努力の方が容易だという結論なのでしょうが、容易さのレベルは確実に人によって異なるものになります。
つまり結論は、
どの選択肢が最適かは人によって異なるが、選択時の"判断基準"と"根拠"を明確に持つことで自分にとっての最適解を導けるので、各自が判断して決定すれば良い
なお、同じ内容の"努力"でも、人によって負荷のレベルは変わるということを認識しておくことが必要
となるはずです。
一般に意思決定をする際、判断材料として必要な要素を洗い出し、それぞれの影響度合いを数値化することで意思決定が容易になります。また、後からその意思決定が間違っていると感じた際も、どこが問題だったのかを事後検証することも容易です。
「自分に合った仕事を見つける」ということは人生において大きな意思決定の一つであると思いますので、自らの選択を後悔しないためにも、どのような仕事選びの方法が自分にとって"最適か"を考える際の参考にしていただければと思います。