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<ひととてまnaヒトvol.02 後編>治ったことがすべての始まり。"細胞が震える"薬膳を伝えたい(だしな薬膳 石丸由美子さん)

みなさん、こんにちは!
【ひととてまnaヒト】担当のマイコです。

第2回前編に引き続き、薬膳の智恵で暮らしをプロデュースする、だしな薬膳石丸由美子さんのお話です。
今回は、石丸さんが会社員から転身して薬膳の道へ進まれた経緯や、「だしな薬膳」という屋号への想いなどをお伺いしました。
さらに、インタビュー中に新企画も誕生!? 
それではどうぞ!


治ったことがすべての始まり。"細胞が震える"薬膳を伝えたい(だしな薬膳  石丸由美子さん)

石丸由美子|だしな薬膳
中医学・薬膳セミナー講師 国際中医師 国際薬膳調理師 「薬膳塾 美くらびと®」主宰 屋号「だしな薬膳®」 だしソムリエ 季節・環境・体質に沿った食生活・暮らしのプロデュース。また、日本の食文化・しつらえや季節の食養生などを伝える活動中。
https://note.com/dashinayakuzen/

漢方治療で回復。突き動かされるものがあった

マイコ(以下、M)
今の活動を始められた経緯についても伺いたいのですが、もともと会社員をされていて、薬膳の仕事に転身されたそうですね。

石丸由美子さん(以下石丸)
全然違う業界で、法律事務所の秘書をしていました。仕事はおもしろくて、忙しく働いていたんですが、40代のころ、喘息とアトピー性皮膚炎で使用していたステロイドの異変が出てしまったんです。ステロイドを辞めると、顔が3倍に腫れ上がるような状態になりました。子どものころから特にアトピーがひどかったんですが、当時は同じようにステロイドづけの人も多かったと思います。漢方薬局を紹介してもらい、いい漢方専門医との出会いがあって、そこから治療を始めて3年でみるみる治りました。先生も驚かれる回復の早さでした。

この経験をきっかけに、転職しようと思い立ちました。キャリアを振るのは勇気がいることでしたし、収入も減るし、家族は大反対でしたけど。それでも、突き動かされるものがあって、大学で勉強も始めていて、もう自分でも止められない状態でした(笑)

東村山の古民家を再生した文化複合スペース、百才(ももとせ)にて 。
「今チベット医学も学んでいるんです」と、とにかく勉強家な石丸さん。

回復が早かった点は先生方にとても注目されて、理由をいろいろ考えました。ひとつ思い当たったのは、薬問屋の家の生まれだった祖母が、自然療法の知識があったこと。小さいころから、あせも予防で藍染めの下着を着せられたり、こんにゃくや里芋湿布をしてくれたり、酒粕を使った料理が食卓に並んだりしていました。当時は嫌だったこともありましたけど(笑)。そういうベースが助けになったのかもしれないと思っています。

M:
ご祖母様の知恵が今につながっていると思うと、不思議というか、縁を感じますね。

石丸:
ちょっと怖いでしょ?(笑)。今思うとですが、ルーツはそこにあるのかもしれません。

細胞レベルで日本人に合った薬膳講座を開きたい


M:
キャリアも積んできた中で、全く新しいことに挑戦できた原動力は「これを広めたい」という想いですか?

石丸:
そうですね。やっぱり自分が体感したのが大きかったと思います。人間の身体っておもしろいなと思ったし、相性のいい先生にも出会えました。当時から、処方された薬を全部調べて、独学で効能をひも解いてみるのがおもしろかったんです。

大学で勉強後、漢方薬局で働くことは考えていなくて、日本人の暮らしにあった形で中医学を取り入れて、“細胞が震えるような”講座をつくりたいと思っていました。“細胞が震える”とかいうと、変に聞こえるかもしれないですが(笑)、細胞レベルで日本人に合った薬膳を広めたいという想いがあって。今から13年くらい前ですね。

(左上)ぎっしり書き込みがある当時の資料/(右上)初講師を務めたころのオレンジのエプロン姿の石丸さん/(下)初めてのお料理とシェフとのコラボ講座の様子(写真提供:石丸由美子さん)

だし×薬膳のオリジナルの伝え方

M:
日本人や日本の文化にあった形で伝えたい、という想いは、「だしな薬膳」という屋号にも込められていますか?

石丸:
実家が日本橋で小さい料亭をやっていて、小さいころから“だし”の匂い、おいしいものの匂いが沁みついています。

やっぱり日本の食生活は“だし文化”なので、薬膳も“だし”を使った料理にしたいと思いました。“だし”といっても鰹だしを取らなくても、野菜でもだしは取れます。野菜のゆで汁に、“しょっつる”(魚醤/魚類を原料にした調味料)を一滴垂らして冷やすと立派な一品になるんですよね。

薬膳は食材の持つ力なので、“だし”の考え方はない。ふたつを組み合わせることで、「だしな薬膳」という屋号にすることにしました。

(左上)定番の薬膳食材の一部。『枸杞子(くこし)』や『なつめ』『陳皮(ちんぴ)』は 料理・薬膳茶・薬酒・デザートなどに良く使われる。「茶葉と同様、多種多用の食薬を保存しています」/(右上)『蓮の花茶』「蓮の花の凛とした華やかな香りを薄い緑茶にうつした薬膳茶」/(左下)『マイカイカ』一年を通して だしな薬膳®️の薬膳茶に 登場する食薬。「働きはもちろん、華やかな色に定評があります」/(右下)【プーアル茶入り柚子釜茶】 「美味で簡単に作れ、柚子の香りで気分があがります」(写真提供:石丸由美子さん)

M:
石丸さんのオリジナルのかたちが生まれたんですね!

石丸:
中医学は、医学ですが哲学でもあるので、教える先生によっても、「潤いが大事」「血液が大事」などそれぞれの考え方があります。情報として日々更新されていく部分もある。そのなかで、私も自分なりのオリジナルの伝え方ができるという点はとても魅力です。中医学自体は2000年前の智恵で古いものですけど、今の生活、今の感覚にフィットするようにして伝えたいと思っています。

とことんわかりやすく、あそび心を入れて

M:
「あそび心」「あそび方」という言葉がたくさん出てきていて、暮らしの中であそべるっていいなと思いました!

石丸:
薬膳でいくらでも遊べるんですよ。企画を思いついてしまって、楽しくて寝不足になるときもよくあります(笑)

薬膳理論は、どうしても「難しい!」と言われてしまうので、講座の中身をかみ砕いて、専門用語を使わずにどう伝えるか、工夫するのも好きですね。雑学もそうですが、とことんわかりやすく、日々の生活の中に取り入れてもらえるように、という点を、講座をつくる上でいつも意識しています。

更年期についても、要望が多く扱うことがありますが、ただマジメにやるとおもしろくないので、『更年期のおかゆ』『ピーマンとトマトだけの更年期ランチ』など、ちょっとあそび心を入れて企画しています。

生徒さんの中には、そういう「あそび」の部分にはまって、理論を学び終わっても長く通ってくれている方もいます。

熱心な生徒さんたち。「食べるのが好き」「自分で料理したい」「とにかく暮らしのあそび方を知りたい」など参加理由はさまざま。講座をきっかけに大学で勉強を始める方もいるそう。(写真提供:石丸由美子さん)

M:
これからのことで何か考えていることはありますか?

石丸:
たくさんイベントや企画をやっていきたいですね。
以前は「冷蔵庫は我が家のくすり箱」というブログをやっていたんですが、いまや冷蔵庫を使わない食べ物に注目していて。 たとえば発酵食だと、常温でも保管できるから、電気が使えなくなったとしても使えるでしょ。うちの家族はオートキャンプが好きで、アウトドアグッズは一式そろっているんですが、地震や災害があって電気が使えなくなることがあっても、備えになるじゃないですか。そういうときにも、みんなに薬膳をふるまえたらいいなと思って。

M&平野:
キャンプで薬膳料理するのおもしろそうです!

石丸:
いいね! イベント企画しましょう!

「薬膳を通して、いろんな方の人生に関われるのが楽しいんです」と石丸さん。
ひととてま代表の平野さんと。

中医学や薬膳理論という学問的な智慧を、雑学的なヒントも交えながら、目の前の暮らしに取り込める”気づける力”として伝授している石丸さん。
「不調」という心身のネガティブなサインも、”あそび心”をもって対策を講じていく姿勢と覚悟に触れ、お話を聞いているだけでエネルギーをたくさんいただきました。

最後は、薬膳×キャンプの話で盛り上がり、”だしな薬膳”と”ひととてま”による「薬膳キャンプ」企画が実現することに。大盛況の第1回を経て、今後も、心も身体も喜ぶ「薬膳キャンプ」のいろいろな展開が生まれそうです!

<次回 薬膳キャンプのお知らせ>
日時:8月20日(日)
場所:マルサン葡萄酒・若尾果樹園(勝沼)※現地集合現地解散
詳細はひととてま公式SNSなどでお知らせします。

次回は、家具デザイナーの渡辺陽さんにお話を伺います。
お楽しみに!

【企画・写真:平野智子】
【聞き手・文:片岡麻衣子】

【連載担当】【連載担当】片岡麻衣子(KORU works/フリーランスライター・広報)
香川生まれ、四国と関東で育ち東京在住。大学時代はイギリスで平和学を学ぶ。PR会社、NPOや舞台制作会社の広報を経て、フリーに。ダンス大好きの姉とおしゃべりの止まらない妹の2児の母。好きなことは、旅、花、水泳、娘と遊ぶプランづくり、おまつりごとの高揚感。
https://greenz.jp/author/kataokamaiko/
https://www.facebook.com/maiko.kataoka.52/

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