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<レポート>山野テロワールマルシェ~山野に魅せられたメンバーが全国から再集合して開催したマルシェイベント

CHECK IN

2024年11月9日(土)、福山駅から徒歩8分の場所に山野町が現れました。
「わぁ、おいしい!」
「前からやってみたかったんです」
本通り imanoma(イマノマ)に、明るい声と笑顔があふれます。
山野町の魅力的なものと、山野町の人、山野町に関心を寄せる人が集まった「山野テロワールマルシェ」の様子をレポートします。


山野テロワールの参加者が全国から再集合

「山野テロワールマルシェ」は1日限りのポップアップショップイベントです。
山野町の食べ物や飲み物、山野町で作られているものなどをimanomaに集め、山野の魅力を感じてもらおうと企画しました。

7月に2日間の濃密な現地体験をした「山野テロワール」のプログラム参加者全員が、この日再び顔を揃えました。居住地は福山市の他、神奈川、大阪、島根とバラバラです。朝早くから車を飛ばしたり、前日から宿泊したりして、集まったのです。

現地体験が終わってからも、参加者たちはオンラインで話し合いを重ねました。
山野テロワールを主催する、ひと旅のごちそうの藤本和志さん、藍屋テロワールの藤井健太さん、山野峡大田ワイナリーの峯松浩道さんの3人を中心に、皆でアイデアを出し合いました。

「試着できたらいいなあ」
「ワークショップやりたいね」
「いろいろな色の藍の布を飾るのはどう?」
「山野のマップを作ろうよ」

それぞれの専門や興味に合わせて役割を分担し、学業や仕事の合間を縫って、この日のマルシェのために準備を進めてきた参加者たち。
どこかで見た光景だ…と記憶をたどると、そうだ、これは文化祭です!
クラスでひとつの店や作品を作るために、ワイワイガヤガヤいいながらエネルギーを傾けた文化祭の、あの感覚が蘇ります。

福山在住の筆者は、もちろんマルシェ当日も参加するつもりでいました。
しかし、遠方のメンバーはどうするのだろう?全員が集まる前提で話が進んでいるようだけれど、本当にみんなまた何時間もかけて来るんだろうか…?と思っていました。

「じゃあそれ、私がやります」
「交渉は任せて!」
「印刷できるよ」
「助かるー!お願いします」

※山野テロワールメンバーが作った山野マップ。
デザイナーの参加者がマップを描き、ライター(筆者)が文章を入れて完成した、この日に向けつくられたオリジナルマップです。

まさか、みんな、来るの?
まさか、みんな、来ました!

7月の現地体験の最後の振り返りで、参加者たちが言った言葉が思い浮かびます。
山野はふるさとのイメージ。ここで一緒に過ごした人が山野に帰って来る、その同じタイミングで帰ってきたい
知っている人に誘われると行きたくなる。知り合いが知り合いを呼ぶ」
地域外の仲間とのつながりがカギになる」
この言葉のとおり、みんな、遠くから駆けつけてくれたのです。

午前9時頃から、会場の準備が始まりました。
会場となるimanomaの装飾を担当したのは、住環境設計を得意とするメンバーたちです。濃さの異なる藍の布を並べた「のれん」を入口に吊るした途端、imanomaに山野町の爽やかな空気が流れてくるようでした。

山野マップは2か所に掲示し、7月の現地体験の写真を添えました。

藍屋テロワールの試着コーナーでは、憧れの逸品を目の前にして、少女のように胸が高鳴ります。

山野峡大田ワイナリーは赤ワインと白ワイン、そしてぶどうジュースを提供します。ボトルでの購入も可能です。

日曜朝市も本通りにやってきました!会場の入口に、採れたての野菜やこんにゃくなどが並び、道行く人の目を引いています。

こちらは、ひと旅のごちそうの缶詰やお茶。「ごちそう」の名前に偽りない商品は、パッケージもステキです。

森林珈琲の珈琲や、とびきりおいしい焼菓子の用意も整いました。

山野テロワールマルシェ、オープン!

夢中で準備をしていてふと気がつくと、既にお客様が入って来られていました。山野テロワールマルシェが始まったのです。

商店街を通りがかって何をやっているのかと興味を持って立ち寄った人、事前に今日のマルシェを知って足を運んでくれた人。山野にゆかりのある人、ない人。さまざまなお客様が来られました。

山野峡大田ワイナリー代表取締役 大田祐介さんのネクタイに注目!ワイン柄です。カッコいいですね。

峯松さんからワインのストーリーを聞きながら飲むと、より一層おいしく感じます。

ベビーカーに乗った1歳くらいのお子さんを連れたパパがワインを、ママはぶどうジュースを買って、ベンチで飲んでいました。ママのジュースをお子さんがじっと見ています。
「ぶどうのジュースよ。飲む?」
「ぶーどー!」

ジュースを一口飲んだ瞬間、お子さんの目が一回り大きくなり、顔がぱあっと輝きました。子どもの舌は正直です。このぶどうジュースに特別なおいしさを感じたのでしょう。
ママがジュースを飲もうとすると、手を伸ばしてもっともっととおねだりします。
結局、ママのジュースは半分以上お子さんのお腹の中に入っていきました。
少し残念そうな、けれども嬉しそうなママの顔が印象に残りました。

「糸を染めてから生地を織り上げているので、しっかりと色が出るんです」
お客様に説明する藤井さん。試着用に、フーディーは各サイズ持ってきています。

7月に購入した藍屋さんのソックスに惚れ込んでいる彼女は、その良さを知ってもらいたいと試着会を提案してくれました。この日、2足目のソックスも購入。フーディーもよく似合っています。
他のお客様も、フーディーを試着してその良さを実感したり、ソックスの手触りを気に入って買っていかれたり。

森林珈琲には次々と注文が入ります。ようこさんの優しい珈琲とお菓子を手に、あちこちで話が弾んでいるようです。

ひと旅のごちそうでは、缶詰とワインのペアリングを提案していました。
一度「くわいと猪肉のレモンアヒージョ」を食べたことがありますが、こんなにおいしい缶詰があるのかと驚いた品です。ワインと一緒に食べれば、そのおいしさが掛け算されて、さらに大きく膨らむはず。

ワイナリーもペアリング提案として、福山工場長の「つつんでたすカルツォーネ」を出していました。規格外野菜を活用するために生まれたカルツォーネは合わせて5種類。
「でこぼこポテトと明太子チーズ」をいただきました。もちもちの生地とおいしい野菜に、心もお腹も満足です。

「試飲をどうぞ」といただいたワインは、シュワシュワと発泡しています。おいしい!
でも、今までこのようなワインを、このワイナリーで見かけたことがない気がします。

「今年初めて取り入れた製法のワインです。瓶の中で発酵がどんどん進んでいるので、実は栓を開けるのがめちゃくちゃ大変。少しずつ空気を入れながら3分くらいかけて開けるんですが、中からワインが吹き上がってあふれるので、下にボウルを置いてこぼれるワインを受け止めています。枡にこぼれるように日本酒をグラスに注ぐ、あのイメージですね」

うわー!それは絶対やってみたいと思いましたが、残念ながらこの日、この新酒ワインは試飲とグラスでの提供のみで、正式販売は11月24日からでした。
(その後、無事このワインを一瓶購入しました!開けるのが楽しみです)

藍染やほたるかご作りのワークショップも


屋外では、藍染のワークショップをおこなっていました。
全体をそのまま藍の液に浸ければシンプルに染まりますし、輪ゴムで縛ってから浸ければ、縛ったところが白く残り、オリジナルの模様が染まります。布を浸ける時間が長ければ濃く、短ければ薄く染まることを利用してグラデーションを作ることも可能です。
ワークショップ参加者たちは、思い思いの仕上がりをイメージして手ぬぐいを染めていました。

通りを歩いていた人が、驚いた顔で足を止めています。
「藍染ワークショップをやっています!いかがですか」
と声をかけると
ずっと藍染をやってみたいと思っていたんです。まさか、今日ここでできるなんて!」

お話を聞くと、今日は絵の具を買いに行ってたまたま前を通りかかったのだそう。
ワークショップを楽しんでもらえて、私たちも嬉しく思いました。

藍屋テロワールでは、手ぬぐい以外でも染めたいものを持ち込めば染められるそうです。今度Tシャツかシャツを持って、藍染体験をしにいこうと思っています。

「ほたるかご」は、麦わらを編み込んで作る民芸品です。

こちらが先生が作られた見本のほたるかご。開いている底からほたるを中に入れ、隙間から漏れるほたるのかすかな光を楽しむものだそうです。
「でもね、今の季節ほたるはいないので、かわりに小さな電球を入れてもかわいいんですよ。外側を飾ったらクリスマスツリーみたいでしょう?」

難しそうに見えますが、小学生にも教えていると聞き、挑戦してみることにしました。

最初に十字に組んだ麦わらの端に、水に浸して柔らかくした麦わらを差し込んでいきます。
そのあと、隅を折っては重ね、麦わらを継いで折っては重ね、を繰り返すとほたるかごが出来上がります。
「いい麦わらを選ぶのがコツですよ」

筆者のほたるかご、完成です。先生のほたるかごと比べると、端の折り方が雑ですが、いびつさも味ということにしておきましょう。
かわいいクリスマスツリーになりそうです。

トークイベント

辺りが暗くなってきましたが、まだマルシェは賑わっています。

多くのお客様と、山野のこと、山野の食べ物のことなどについて、話をする機会が持てました。

お客様の訪れが減ってきた18時、トークイベントが始まりました。

ステージ上に峯松さんと藤井さんが上がり、参加者の自己紹介や、7月の山野テロワールの振り返りなど、藤本さんの進行でイベントが進みます。


さまざまな話が出ました。
・外の人がどれだけ関われるかが地域の成り立ちに重要
・「テロワール」を構成するのは自然環境だけではなく、土地の歴史や文化、人も大きな要素だと感じる
・いいものを作って地元に自信を持ってもらいたい
・山野にワインと藍という「発酵」と「農業」で共通するコンテンツがあるのは、町にとってもおもしろいと思う
・違うきっかけで訪れた人たちにまた来たいと思ってもらえる要素を、今回のイベントで感じた
・山野は人口が減っていく町。産業があることで関わる人が増える仕組みを考えていきたい
・ワイン作りをもっと突き進んで、ワインに関心がある人に来てもらいたい


ワイナリーの大田恵子さんからは「ワイン農家のつどい」の案内もありました。

「畑に手伝いに来てくださる人がいないと、私たちのワインはできません。一度でも畑に入って作業してくれた人は『ワイン農家』です。収穫に来てくれた人が他の作業に来てくれたり、一緒に作業した人同士でつながったり、いろいろな広がりができています。
そういった人たちとゆっくりとワインを飲みたいと思って、12月に『ワイン農家のつどい』を企画していますので、よかったらぜひどうぞ」

CHECK OUT

筆者自身、7月の山野テロワール以前にも、そしてそれ以降も、何度も山野に足を運んでいます。それは、取材したい人がいるから、だけが理由ではないように感じています。

「山野を通じていろんな人と繋がれた」
「山野は自然の中にいろいろとある豊かな町」
「山野でデトックスできた」

山野テロワールの参加者たちは、なぜ山野に惹かれ、なぜまた集まってくれたのか。
ここに、山野のこれからを考えるヒントがぎゅっと詰まっているのだと思います。

文:山口ちゆき
福山市在住のライター。Webメディア「備後とことこ」、Yahoo!ニュースエキスパートなどで、地元の魅力を発信中。山野テロワールを経て「世界で一番山野に詳しいライター」を自称している。



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