[バレーボール男子日本代表]史上最強チームを失った日本。歴史的成功事例を失った日本。歴史的大失敗から学ぼう!
以前の記事でも触れましたが、私が唯一真剣に取り組んだスポーツであり、国際大会でコンスタントに応援している競技、それがバレーボールです。パリ五輪が終了したこのタイミングで史上最強と呼ばれたバレーボール男子代表チームについて思うことを書きます。それに絡めて日本が「豊かな国」であり続ける条件についても考えたいと思います。
2024年急失速したバレーボール男子代表
ご存じの通り、バレーボール男子代表はその前評判、期待から遠く及ばない結果で、パリ五輪を終えました。
大接戦を演じた準々決勝イタリア戦にフォーカスを当て論じている記事もありますが、私はそもそも2024年に入ってからの日本男子代表に違和感を覚えていました。一つには高橋藍選手が怪我の影響があったかと思いますが、それは些細な事に思えました。
昨年チーム全体にあった覇気が、今年感じられなかった。そのことは五輪に先立って5月~7月に行われたVNL2024(バレーボール・ネイションズ・リーグ2024)期間中から感じていました。
昨年VNL2023では、石川祐希選手(主将)とリベロの山本智大選手が神がかりの活躍を見せました。下は、VNL2023の「Statistics(統計・通称スタッツ)」ページです。
ベストスコアラー(BEST SCORER・最多得点選手)、ベストアタッカー(BEST ATTACKER・最優秀アタッカー)に石川祐希選手が、写真ととともにトップランキングされています。またベストディガー(BEST DIGGER・最優秀アタックレシーバー)に山本智大選手が、写真とともにトップランキングされています。まさに「神がかりの活躍」の裏付けです。
そして、今年のVNL2024の「Statistics」ページを見てみましょう。
そこには2人の写真も、他の日本人選手の写真も見つけられませんね。
確かに形式上、VNL2024で日本代表は第2位に輝きました。しかしオリンピック直前の大会で、必ずしも全チームが順位に拘るとは限りませんので順位自体は大きな意味を持ちません。
2023年の活躍を通し、バレーボール男子代表は「史上最強」と評価されるようになります。これは決して過大評価ではありません。上に掲載した「Statistics(統計・通称スタッツ)」ページを見れば明らかです。
去年から、今年にかけて起きた男子代表の「急失速」の理由を考察せずには居られない気持ちにさせられる人は少なくないでしょう。私もその一人です。
パリ五輪準々決勝敗戦後の選手コメント
下記はパリ五輪準々決勝イタリア戦敗戦後の石川祐希選手(主将)のコメントです。
石川祐希:4年後のロサンゼルス五輪については「(新しい)監督もわからないし、まだ全然考えていない」と語る
次に、石川選手に並ぶポイントゲッター西田有志選手のコメントです。
西田有志:2028年ロサンゼルス五輪に向けた代表活動について「4年の中で数年はたぶん休むかもしれない」と語る
いかがでしょう?意外な印象はありませんか?
史上最強とまで言われた男子代表の中心選手の2人の「次に向けて」の「冷めた心」に驚きを感じる人は少なくないでしょう。
2人の(またおそらく他の代表選手の)心を冷めさせたものは、何でしょうか?
理由も意図も不明なブラン監督退任
私はVNL2024を楽しみにしていました。来る五輪に先立って行われるこの国際大会で、史上最強の男子代表がどんなパフォーマンスを見せるのか楽しみにしていました。
しかし「何かおかしい」と言う違和感を感じていました。「VNL2023で見せた熱さが伝わってこない。何故だ?」と感じていました。
そして、どのタイミングだったのか記憶がありませんが「ブラン監督がパリ五輪を最後に退任する」という話を聞きました。それがtwitterでの誰かのつぶやきだったのか、掲示板での誰かの書込みだったのかは覚えていません。
あまり確度の高い情報源ではなかったような気がしますが、チームの異変を感じていた私は「ブラン監督退任」がその理由だろうと、すぐに合点がいきました。
もちろん、「長期にわたって低迷し続けた男子代表を金メダル候補にまで押し上げた監督が、何故退任?」という疑問はありました。
しかし、長きにわたってバレーボール日本代表を応援し続けてきた私にはこのような「奇妙な出来事」が日本のバレーボール界では珍しくないことを知っていましたので、正直なところ「またか。。。」という感覚でした。
この件はあまりに情報が無く、深掘りすることは即ち妄想になってしまいますので、「ブラン監督退任の理由は不明」とだけしておきます。
ブラン監督自身による退任経緯説明
下の動画で、ブラン監督自身が「退任の理由」とまではいきませんが、「退任に至った経緯」に触れています。
(ブラン監督)When I have to decide December or January for my NEXT contract, JAPAN was not Ready to make me to PROPOSE me something for the following program. So I have to take Another Decision.
(訳)12月~1月頃、私にとって次の契約を決めなければならない時期だった。しかし、その時、日本(バレーボール協会)は、来季の私との契約への準備ができていなかった。だから、私は別の選択をしなければならなかった。
これをどう思いますか?やけにあっさりした経緯ですね。このような経緯でブラン氏は来季から韓国のバレーボールチーム監督に就任します。
このような経緯(バレーボール協会の対応)に至った理由があるはずですが、この映像を見る限り、恐らくブラン監督には説明されていないと思われます。
ブラン氏には、理由はともかく、「日本(バレーボール協会)は自分を必要としていない」としか認識できないでしょう。
ブラン氏が置かれたこのような状況で、皆さんならどのように感じ、どのように反応し、どのように対応しますか?
ブラン氏に非があるとは思われません。むしろ、日本バレーボール協会が長年成しえなかった男子チームの世界トップレベルへの強化を実現したのです。偉業としか言いようがありません。にも拘らず、「必要とされていない」。
「寂しい」とか「悲しい」をはるかに超えて「不気味」じゃないですか?私がブラン氏の立場なら「不気味」と感じます。そしてこの不気味な組織から「距離を置きたい」「離れたい」と思います。但し、ここで言う「組織」とは「日本バレーボール協会」を指します。決して男子代表チームではありません。
そして、自分を必要とする組織が他にあるなら迷う余地などないでしょう。
男子代表チームにとってブラン監督は不要だったのか?
理由は全く不明ですが、「日本バレーボール協会」はブラン氏を必要と考えなかった。つくづく意味不明ですね?普通の思考で「ブラン監督は不要」にはならないでしょう。しかし、「日本バレーボール協会」はブラン氏を必要と考えなかった。
では、「男子代表チーム」にとって、ブラン氏は不要だったのでしょうか?下の2つの動画をご覧ください。
3位決定戦敗戦後、抱擁し合う監督と選手ら
胴上げされるブラン氏
選手・監督らの涙は試合に負けた悔しさからのものではないでしょう。アスリートが人前で、悔し涙を見せることは稀です。
彼らが人目をはばからず大泣きしたのは、このチームとの別れを惜しむ淋しさや悲しみを抑えることができなかったせいでしょう。またこのチームとの別れを惜しむ淋しさや悲しみを、むしろ表現したかったんじゃないだろうかとさえ思えてきます。
「このチームとの別れ」は「ブラン監督退任」という現実の前に不可避です。仮に監督続投なら、石川選手を始め、全選手が次回オリンピックに向けて気持ちを新たにし、涙などなかったはずです。
つまり、男子代表チームにとってブラン監督は必要不可欠な存在だった。
日本にとってブラン監督は不要だったのか?
多くのバレーボールファン、スポーツファンには愚問ですよね。ブラン監督には是非とも続投してもらいたかった。
そうであれば、次回ロサンゼルス五輪でもバレーボール日本男子代表にも夢が持てたし、そもそも今回のパリ五輪でもメダル獲得できたのではないでしょうか?
ブラン監督の退任が決まった時期は、本人の上記発言から、2024年1月ころだったと思われます。そのことを選手らは5月~7月に行われたVNL2024の前に知らされていたでしょう。
上の動画から察するにブラン監督退任は選手らの士気を大きく下げたものと推測されます。何故なら選手らにとって、ブラン監督はTeam Japanの主要メンバーであって、ブラン監督退任は、Team Japanが否定されるも同然だからです。
日本は今、長期にわたって経済低迷を続けています。しかも、人口も減少しています。それでも世界の中で日本は依然として美しい自然に恵まれ、穏やかで創造性あふれる国民性に恵まれ、私は依然として「豊かな国」と思っています。
確かに「経済大国日本」とは違う国になりました。それでも他国の新興企業の追従を許さないトヨタ・ホンダと言った優れた企業を有しています。しかし、トヨタ・ホンダ等の日本の優良企業は世界中に販売拠点は言うまでもなく、研究拠点、生産拠点を持ち、世界の人々と協働しています。そうであるから世界の人々に愛される製品づくりができているのでしょう。
人口が減少を続け、経済成長で世界に取り残される現状を踏まえ、「豊かな国」であり続けるためには世界の人々と共存共栄してゆくしかないでしょう。長期低迷に喘いでいたバレーボール男子日本代表がブラン監督に救われたように。
今回、日本バレーボール協会はブラン監督とともに史上最強のバレーボール男子代表という宝物を失いました。このような愚かな間違いを日本は繰り返してはいけない。
日本は、美しい自然と穏やかで敬意を忘れない国民として世界に愛され、ブラン氏のような優れた才能を世界から集め、日本で働く喜び、暮らす楽しさを提供してこそ「豊かな国」であり続けることができると思います。
いかがでしょう?
日本バレーボール協会について思うこと
日本においては、バレーボールは人気スポーツですし、競技人口も多い。そこから考えて、「日本バレーボール協会もしっかりした組織なんだろう」と連想しますが、長くバレーボールファンを続けていると、そういう期待が裏切られます。
今回の監督退任にしても、組織内で充分に議論された結果なのかと疑問を持ってしまいます。単なる事務的ミスだったり、外国人との意思疎通ができるスタッフが不在だったり、などと言う呆れるばかりの初歩的ミスが原因なのでは?と言う想像すらしてしまいます。
何といっても「史上最強の男子代表を創り上げた指導者」をみすみす海外に奪われてしまうような組織です。しかも、その理由を説明することすらしていません。おそらく、想像になってしまいますが、説明できるほど組織内で議論することすらしていないのでしょう。
非常に残念なことですが、日本バレーボール協会とは我々ファンや国民が怒りを感じたり、批判したりすることに値する組織ではないということでしょう。
悲しいことですが、日本は『外国人監督と日本人選手から成る世界最強のチーム実現』という歴史的成功事例を失ってしまいました。
日本はこのような失敗を二度と繰り返してはいけない。
補足:
◇ 記事で使用されているイラストはDALL-E(chat-GPT)を利用し作成しています。