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【素股で妊娠ってしますか?】

【セイシル】からも転送されています。

 中高生向けの性教育サイト「セイシル」の質問コーナー「モヤモヤ相談室」に寄せられた質問のひとつ。

「割と多い相談」とのことで、2021年12月にSWASH(Sex Work And Sexual Health:セックスワーカーの安全と健康を支援する活動団体)代表の要友紀子氏が回答。のち、医師で性教育コンテンツ制作ユニットの「アクロストン」が追加回答をしている。

 要氏による回答の要旨は、素股と呼ばれるプレイには複数の体位があり、粘膜・粘液が触れ合う場合は妊娠リスクがあること、また素股として初めても男性が挿入に及んでくる場合があることなどを、図やSWASHのウェブサイトへのリンクも示しながら説明している。その上で、不安全な素股や挿入を強要しそうな相手からは、他のスキンシップに切り替えたり、逃げる決断をすべきことなどが述べられている。
 追記されたアクロストンの回答は、要氏の説明の医学的な根拠を解説し、さらに妊娠以外にも感染症のリスクもあることについて説明を加え、コンドームの使用を呼び掛けている。

 医学的にも誤ったところのない、女性の性的自己決定権のための極めて誠実な回答であった。
 ところが、これがフェミニスト達のバッシングに遭い、抗議署名まで立ち上げられたのである。署名は現在change.orgから削除されているが、賛同者が文面を書き写していてTwitter上に残っている。

 この署名運動をはじめとする「セイシル」叩きの主な主張は、大きく3つに分けられる。

1.セックスワーカーへの職業差別

 この署名運動にの根底に流れる価値観は「性産業従事者の技術だから悪」という、純然たる職業差別意識である。セイシル批判者の多くがこの価値観を共有している。

 さらにはSWASHそのものに対する「人身売買推進団体」「客と元締めの利益を追求したいがため、働く女性のことなどどうでもいい」などの誹謗中傷も行われている。

 なお、批判の中に「素股を性産業が『発案』した」というものがあるが、完全なデマである。実は昔から男性同士の同性愛で親しまれてきた技術で、日本の衆道や、世界的には古代ギリシャからあった技術であるとされる。
 それを性産業が業務安全性の向上のためにテクニックを維持発展させ、さらに一般層にもプレイ方法として普及してきたものだ。セックスワーカーの安全と健康を守る団体代表、というのは回答者としてこれ以上なく適格なものであろう。
 実際に追加回答を行ったアクロストン側も「コンドームを外されないために手を相手の性器から離さないという技術については考えが回っていませんでした」と述べている。

2.寝た子を起こすな理論

 まず、言うまでもないことだが『セイシル』は素股について何の知識も興味もない子に素股の知識を一方的に植え付けているわけではない。相手は素股の知識を質問してきているのだ。
 したがって彼らは「寝た子」でもなんでもない。
 セイシルのアカウントも「多い質問」であると言う通り、現在の性の実態として素股は一般のカップルに取り入れられているプレイである。風俗産業向けではない性情報サイト「ラブコスメ」の調査でも「彼とのラブタイムで」半数以上の回答者が経験ありとしているのだ。

素股とは?正常位、騎乗位でのやり方とコツ!立ち、パンツ、バック、着衣スマタの種類も。

 問題は、素股による妊娠の危険性について正しい知識が普及していないことで、まさにセイシルはそれに対応しているのだ。
 実際にYahoo!知恵袋で「素股」で検索すると「彼と素股をしてしまいました妊娠の可能性はありますか?」といった類の、切迫した個人的な質問が数えきれないほど見つかる。
 なお悪いのは「スマタ以上に行為が及んでいないなら限りなく0%です」などという、質問者のその後が心配になる答えがベストアンサーに選ばれている例もあることだ。

素股による妊娠の可能性について。最近、このことばかり考えてしまい...…

 きちんとした性知識に基づく回答が得られる場が無ければ、若い人たちはこうしたいい加減な情報源に頼り、その結果大きく傷つくことになってしまう。
「女性のことなんかどうでもいい」のはセイシルやSWASHだろうか?
 それとも彼らを叩いている人々だろうか?

3.男だけが快感を得るプレイだから気に食わない

 北原みのりや勝部元気といったフェミニストが特に掲げる理由である。

 いや、「『男性側が過剰な奉仕をして自身の射精欲は満たさないSEX』がほぼ存在しない」って、クンニとか手マンはどうなるねん。

 どうもフェミニストという人々は「楽しみを分かち合う」とか「相手が喜んでくれることを喜ぶ」といった、愛し合うカップルであれば当然の心理に対する共感性がいちじるしく低いようだ。
 性感帯の摩擦によるオーガズムのような、直接的・物理的な快感が無い場合には女性が搾取されていると感じるのはそれが原因なのだろう。
 これは【サイゼで喜ぶ彼女】などの、女性側が「高額なプレゼントや飲食店での接待」なくして精神的充足を感じている場面を描いた表現物に対し、それが何らエロティックでなくとも、フェミニストがヒステリックな叩きを行いがちであることにも表れている。


 なぜ今回のセイシルの回答が球に槍玉に挙げられたのだろうか。
 それは、もともと【ツイフェミ】に代表される【第4波フェミニズム】には性嫌悪傾向が強く、SWASHのようなセックスワーカーの権利擁護を推進する主義とは相性が悪いからである。
 また2021年7月、世界18団体による共同声明「フェミニスト原則の再確認を呼びかける」もセックスワーカーの権利を擁護しているが、これを日本に紹介したことなどでSWASHは以前からフェミニストの反感を買っていた。このことも今回、彼らがバッシングを受けた一因であるだろう。

 また一般に、フェミニスト・保守派を問わずこうした性情報叩きに勤しむ人々は、【#TOKYO女子けんこう部】や、イギリスの【Your Pocket Guide to Sex】などの事例で分かるように、実際に性や健康に関する知識を必要とする人々のニーズよりも自身の性嫌悪を優先させる習性がある。
 古くは手塚治虫による性教育マンガの嚆矢【やけっぱちのマリア】(1970)なども槍玉に挙げられ、福岡県の児童福祉審議会から有害図書の烙印を押されている。

参考リンク・資料:

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