【ファイナルファンタジーⅢ】
1990年、株式会社スクウェア(現スクウェア・エニックス)が任天堂ファミリーコンピュータ用ソフトとして発売したロールプレイングゲーム。のちDSやアプリ版などのリメイクが発売されている。略称はFF3。
朝日新聞社の『朝日ジャーナル』1990年12月28日号に掲載された「アメリカ発・差別ゲームの受け入れられ方 「【ランド・オブ・ニンジャ】」はひどい!!」(北口学)という記事に、本作について言及した箇所がある。
この記事でメインで扱われているのはタイトルにもある通り、当時「部落差別表現がある」として叩かれて販売中止となった【ランド・オブ・ニンジャ】というTRPGである。この「ブラク」に関するFF3批判も部落差別だと言っているのはあきらかだ。
では「ブラク」は本当に被差別部落民を怪物化したものなのだろうか。
FF3の「ブラク」は本作では最終盤のダンジョン「クリスタルタワー」に出没する、いわゆる雑魚モンスターである。
ちなみに『朝日ジャーナル』には画像は載っていない。
ではその姿をお見せしよう。
これは明らかな言い掛かりである。
本作には人間の形をしたモンスターも数多く登場するが、「ブラク」の容姿は人間とは似ても似つかないし、被差別部落をイメージさせるような要素もない。また多くの読者がご存知の通り、作品全体も日本史をモデルとしたようなものではなく、ごく一部に和風の要素はあるものの全体としては西洋ファンタジーである。しかしそのことは上記記事には一切言及がない。
「ブラク」の実際の元ネタについて公式からアナウンスは無いようだが、複数のファンサイトでは、イスラム教の天馬ブラークに由来しているのではという説が述べられている。
確かに、顔は多少馬に似ている...…かもしれない。
少なくとも筆者の調べた限り、ネット上で「被差別部落民が元ネタだろう」と考えている人を見つけることはできなかった。
さらに奇妙な点がある。
なぜ記事ではブラクを殺すのが「『忍者』たち」なのだろうか?
というのも本ゲームでは様々な職業を自由に選ぶことができ、忍者はその一つに過ぎない。ブラクと戦う際に忍者を選ばなければならない制約も必然もどこにもない(忍者が強いのは確かだが)。忍者でも戦うことができる、というだけである。
しかし記事中ではあたかも「忍者が部落(民)を殺す」のが固定シーンとして存在するかのように読める。
当時はまだ「ゲームは子どものもの」というイメージがあった時代で、FFといえど『朝日ジャーナル』を読むような大人の多くがすっと作品内容をイメージできる状況ではなかった。
おそらく北口は作品を知らない層に、さも「歴史的な被差別部落民への虐待」が描かれているかのように訴えるため、わざわざ「忍者たちが」という言葉を挿入したのではないだろうか。
北口はあわよくば本作にも「火がつく」ことを狙っていたのかもしれないが、だとすればそれが結実しなかったことは何よりである。
もしそんな企みが成功していたら、我々は今頃FFシリーズをプレイできていなかったかもしれないのだ。
参考リンク・資料:
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