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『バイアグラと中絶飲み薬』2024-09-30

 こんなポストが、今これを書いている時点では2.4万いいねを集めていた。

 このポストは幾重にも間違っている。
 まず、彼女が引用している先のポストに掲載されているニュースの本文を読めば分かるのだが、中絶のための飲み薬(メフィーゴパック)はすでに認可されている。
 ただ入院が可能な医療機関での服用が必須となっており、入院設備の無い診療所での服用にまで拡大するかどうかが議論になっているのだ。

 したがって今現在も中絶するのに赤ちゃんを「掻き出すしか方法ない」というのは全く間違っている。ただ、ちゃんとした入院設備のある病院で指定医の監督のもと飲まなければならないだけだ。
 それがたいそう、フェミニストをはじめとする女性たちには気に入らないことらしい。

 しかし、これはじゅうぶん、慎重に検討するに値することなのだ。

 当たり前のことだが、メフィーゴパックは飲むとなんの痛みも無く、一瞬にして魔法のように赤ちゃんがどこへともなく消えて無くなる薬ではない。そんな仙豆で怪我が治るようなプロセスを期待しては困る。

 「パック」の名前にも表れているように、メフィーゴパックはミフェプリストンとミソプロストールという二種類の薬のセットである。前者が赤ちゃんの成長を止める薬、後者が赤ちゃんを子宮から吐き出させる薬だ。
 その使い方は、ミフェプリストン1錠を服用してから36~48時間後に、ミソプロストールバッカル4錠を所定のやり方で服用するというものだ。

ラインファーマ株式会社公式サイトより

 そして厚生労働省のサイトには、副作用や身体的な影響にかぎっても次のような問題がある(太字は引用者)。

・本剤により下腹部痛があらわれます。異常な痛みが継続する場合には、正所異所同時妊娠の可能性もあること等から、速やかに本剤の処方医療機関に連絡してください。
・本剤投与後、まれに重度の子宮出血があらわれることがあります。目安として夜用生理用ナプキンを 1 時間に 2回以上交換するような出血が 2 時間以上続く場合には、速やかに本剤の処方医療機関に連絡してください。
失神を伴う子宮出血が発現する可能性があることから、自動車の運転等危険を伴う機械の操作を行う場合は十分に注意してください。
・本剤投与後一定期間経過した後でも、子宮内膜炎等の感染症があらわれることがあり、敗血症等の致死的な感染症も報告されているので、発熱、悪寒、倦怠感、腟からの異常な分泌物等の感染症が疑われる症状が認められた場合には、速やかに本剤の処方医療機関に連絡してください。
・メフィーゴパックを用いた人工妊娠中絶が達成されなかった場合は、外科的処置が考慮されます。
・メフィーゴパックによる人工妊娠中絶では、胎嚢が排出されても子宮内容物が遺残することがあります。その場合でも、必ず子宮内容物を除去する手術が行われるものではありません。
・子宮内避妊用具(IUD)又はレボノルゲストレル放出子宮内システム(IUS)を装着している場合は、本剤の効果が得られないおそれや子宮損傷のおそれがあるため、本剤投与前にIUD又はIUSを除去する必要があります。

 相当な身体的影響があるのが分かるが、冷静に考えればそりゃそうだ。考えてもみるがいい。赤ちゃんを殺してその死体を母親の体から吐き出させる薬なのである。体に強い影響が出ない方がおかしいのだ。
 医師の監督のもとで服用を求められるのも当然である。
 
 また、この薬の扱われ方に対して、やたらとバイアグラと比較して不満を持つ声が聞かれる。

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