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平等の創造 - メイドという職業
"Maid"とは
"Maid"は、洗濯や炊事や掃除といった家庭内労働を行う女性の家事労働者のことです。他方、ボーイというのは男性の家事労働者のことを指します。日本語では、"Maid"はメイドや女中といった言葉に翻訳されます。現在ではあくまでも職種を意味し、ホテルの客室担当従業員(ルームキーパー)なども含まれます。
ビクトリア朝時代(1837年6月20日〜1901年1月22日)、イングランドとウェールズでは、家事労働は農業労働に次いで2番目に多い雇用カテゴリーでした。(引用元:The Victorian Web)
現在のフランスやイタリアといった西側先進国では、フルタイムのメイドは少なくなり、最も裕福な家庭には存在すると言われています。しかし、アジア大陸内においては依然としてメイドは多く、特に都市部の中流階級ではメイドの存在は一般的です。私が今いるベトナムでも、フルタイムのメイドもいますが、住み込みのメイドも存在します。
"Maid"の仕事
メイドは家庭内のあらゆることを行います。掃除、料理や食料品の買い出し、洗濯やアイロンがけ、ペットの世話といった、本来であれば自分自身で行うことを代わりにするのがメイドです。
メイドが子供の世話もする場合もありますが、ベビーシッターと呼ばれるより具体的な職業カテゴリーも存在します。記録の残っている昔の写真を見ていただけるとわかりますが、現在も過去も多くのメイドは雇用主から制服の着用を義務付けられています。
西洋社会と東洋社会における"Maid"
現代の西洋社会では超富裕層を除き、住み込みやフルタイムのメイドの存在は大幅に減少しました。代わりに、直接または代理店(いわゆるメイドサービス)を介して雇われている清掃員に頼り、家事代行サービスや清掃サービスの利用が一般化されています。
他方、東洋社会では西洋社会と比較して発展途上国に分類される国が多くあります。そういった国々では、都市部と農村部の世帯収入に大きな格差があり、教育を十分に受けた女性は少ない状況は事実あります。教育水準の低い女性の雇用機会の制限により、家事労働としての労働力は確保されており、西洋社会よりもメイドの数が多いことの要因となっています。
"Maid"の労働環境
ベトナムでは最近、雇用主はメイドに対して社会保険に加入させなければならないと法律で定められました。このように多くの国の法律では、家事サービスの要件として、「特定の生活条件」「労働時間」「最低賃金」が定められています。
しかし、現実はそう上手くはいきません。法律が整備された後、実社会の実現には時間がかかります。そのため、メイドの仕事は常に大変で、長時間労働かつ少ない休日の中で働くことを余儀なくされています。
次の画像は、2024年4月13日現在、ベトナムのホーチミンエリアで募集している家庭内労働者の求人案内です。ベトナム語で書かれていますが、月に休みは1日のみで、日本円で約6万円〜7万円の給料がもらえると記載されています。
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"Maid"の歴史
今でもそうですが、かつては世界中のどこの国でも差別は一般的であり、職業差別はその一つでした。職業には階層区分が存在し、メイドのような家事労働は下層階級に分類されていました。職業だけでなく、性差別もかつては存在(今でも多くの社会で存在)し、男性がなぜか女性よりも立場が上という構造でした。そのため、教育を十分に受けられなかった女性にとって、お金を稼ぐために家事労働であるメイドという職業を選択することは、最良かつ最も一般的な方法でした。
メイドという言葉は、未婚の若い女性または処女を意味します。そのため、メイドといった階層の低い労働者は、未婚のままであることが期待されていました。これは結果的に、そして残念ながら、メイドが雇用主からレイプの対象にもなったこと、難民としてやってきたメイドたちはパスポートや身分証を雇用主から取り上げられたあげく、逃げられない状況下に置かれたこと、こういった大きな問題にも発展するようになりました。
19世紀のイギリスでは、子供が家事労働に就き、朝から夜遅くまで働き、年間6〜9ポンドの賃金で働くことも多くありました。また休みも月に1日、2日しかないということも一般的であったと言われています。
しかし19世紀末になると、前述した大きな問題も起こったことが関係し、雇用主とメイドの間の関係性が薄まり、雇用主に対してのメイドの忠誠心は薄れていきます。その後、メイドやその他の使用人の需要は減少し、結果として、今日多くの人がメイドを雇わない状況に繋がったとされています。
"Maid"が多い国と"Maid"に多い国
前述した通り、東洋社会では依然としてフルタイムや住み込みのメイドは多く存在します。その中でも、メイドが多く存在する国があります。
それは、サウジアラビア、香港、シンガポールです。
(参考:Migration News)
参考元の資料は古いものの、依然としてこれらの国ではメイドは多いとされています。
一方で、メイドになる国籍として多い国もあります。
それは、フィリピン、ミャンマー、インドネシアです。
(参考:United Channel)
さらには、『サーチメイド』と呼ばれるウェブサイトも存在します。
ここに記載されているランキングも同様の結果です。
(参考:Search Maid)
"Maid"を探すサイトの存在
世界のあらゆる国では、メイドを探す掲示板のようなものもあります。年齢や国籍、メイド歴を入力して検索するようなサイトです。反対に、メイドになりたい人はどこの国で働きたいのか、どういったことが得意なのかをプロフィール欄に入力しています。今回の参考には、メキシコのものを参考として貼っておきます。
(参考:Greataupair)
職務内容と報酬
職務内容の難易度が高くなればなるほど、受けとるお金の金額は上がります。例えば、医者やパイロットや弁護士といった職業は専門的であり、誰でもなれる職業ではありません。職務中も高度な知識を使い、人の命にを預かるような仕事であるため、報酬も高くなります。職務内容の難易度が高ければ高いほど給料が良いのは事実です。
また肉体を使用する職務も報酬が高いことは事実です。プロスポーツ選手はその典型でしょう。スポーツの才能もそうですが、選手生命の短さも重なり、かなりの報酬を手に入れます。また学生時代、引っ越し屋のアルバイトというと給料が良く人気があったことを覚えています。大工や建築士もこの類です。このように、肉体労働は他の職業と比較した時に、まだ報酬がもらえる職業だと考えられます。
職業差別をぶち砕く
ですが、メイドはどうでしょうか。今まで見た通り、メイドはどの国でも給料が低く、職業としても下層階級に位置づけられてきました。誰でもできる仕事だという認識によって、報酬も底辺クラスです。この仕事は、肉体労働にも関わらず休みは少なく、どの国でも非常に厳しい目で見られます。
ですが、ここに疑問を投げかけたいと思います。
●この職業を自分の意思だけで好きで選択しているのでしょうか。
●なぜこの仕事(サービス)は需要があり必要とされるのでしょうか。
●この仕事は本当に誰でもできるのでしょうか。
他の仕事と同じようにちゃんとした制服を着用し、雇用主に忠実であることを求められ、長時間の労働を余儀なくされるこの仕事への無意識的な差別的視点を"KIREI"は解決してくれると私は考えています。
どの職業にもプロフェッショナルは存在します。
人を感動させる仕事には高価な報酬だけでなく尊敬の目が与えられます。
月日はかかると思いますが、"KIREI"は必ずや目に見えないものの分厚い大きな壁をぶち砕いてくれるでしょう。