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テフロンの仮面
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うちのフライパンが焦げ付くようになった。
うちにあるフライパンは3つ。
ひとつは沖縄に来る前に頂き物でずっと持っていたT-falの小さめのフライパンで、もうひとつはずっと欲しいと言っていたところ友人から頂いた鉄のフライパン。そして、沖縄に移住してきた時にとりあえず必要で、一旦近場のイオンで間に合わせた蓋付きの大きいサイズのフライパン。
今回焦げ付きが目立つようになったのは3つ目の大きなフライパンだった。これはテフロン加工のフライパンで、そもそもそんなに長いこと使うつもりもなく間に合わせで購入したものだったけれど、結局こうして長いこと使っているとなんだか愛着も湧くもんだ。
テフロン加工という時点で、まあ要は焦げ付きにくいように加工がされているのだけれど、最初は確かに焦げ付きにくかったのが、ある時期から一気に焦げ付きが目立つようになる。
一方で、友人から頂いた加工のされていない鉄フライパンも数年使ってきているけれど、むしろ使えば使うほど焦げ付きにくくなっているのを見て、ああ、私と同じだ、と思う。
沖縄に来る前の仕事バリバリ人間だった私は、どの現場でも人からの目を気にしすぎて、長いこと自分自身を加工して防御しないとやってられなかったTHE テフロン人間だった。
でも今は、徐々にそのテフロンスーツを脱いできて、真っ裸まで行かなくても、てろてろパジャマくらいの自分で、ある程度どこでも居れるまでにはなれた気がしている。
その瞬間とりあえず傷つかないように焦げないようにと仮面という名のテフロン加工を纏いながら必死に自分防御してきた時よりも、加工を盾にすることなく、その瞬間瞬間は傷も焦げもつくかもしれないけれど、その痛みによってだんだん強くなっていく自分の方が、断然艶も出てしぶとく強くなっていく。
もう手放そうと決めたテフロン加工のフライパンを最後に握りしめながら、「テフロンスーツよ、ありがとう」と、心の中で呟く。
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