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一人親方が年金をもらうためには?社会保険に加入できる条件や代わりになる保険とは

 一人親方は厚生年金保険には加入できませんが、その代わりに国民年金に加入することができます。将来的に受け取ることができる年金額に不安が残る場合は、国民年金基金や個人型確定拠出年金(iDeCo)などに加入して、受け取れる年金額を増やすことを検討するとよいでしょう。

 一人親方として独立し、会社に所属せずに生計を立てることには、いろいろな不安が付きまとうことが多いです。
 毎月きちんとした収入を得られるのか、社会的な信用を得られるのかといったことはもちろんですが、仕事をやめた後もしくは仕事ができなくなった後に、十分な年金を得ることはできるのかといったことも、大きな懸念点のひとつでしょう。
 本記事では、一人親方が年金をもらうためにはどうしたらいいか、一人親方は厚生年金保険に加入できるのかといったことについて説明すると同時に、一人親方が加入できて年金の代わりになる保険の種類もいくつか紹介します。

一人親方が年金をもらうためにはどうしたらいいか

 会社員として働く場合には厚生年金保険に加入するため、退職してからも年金を受け取ることができます。
 一方、一人親方として個人事業主という形で働く場合には厚生年金保険ではなく、国民保険に加入することになります。
 働き方や立場によって加入できる保険は異なり、会社員や公務員として働く場合には厚生年金保険に加入し、個人事業主として働く場合には国民年金に加入すると考えると分かりやすいでしょう。
国民年金に加入して毎月きちんと保険料を支払っていれば、一人親方として働いていても、将来的に年金をもらうことはできます。
 ただし受け取ることができる金額は、厚生年金保険に加入している会社員と比べると少々少なくなるということは、覚えておく必要があります。

一人親方が社会保険に加入して年金をもらうための条件とは

 厚生年金保険に加入したほうが将来的に受け取れる年金額が多いのであれば、一人親方として働いていても、厚生年金保険に加入したいと考える方は多いでしょう。
 しかし、結論からお伝えしておくと、一人親方は厚生年金保険に加入することはできません。
 先ほどお伝えしたように、厚生年金保険はあくまでも会社員や公務員などが加入するための年金保険であり、個人事業主である一人親方には加入する権利がないからです。
 「何か特例はないのか…」と探してみても、一人親方ではどうやっても厚生年金保険には加入できないので、あきらめるしかありません。
 法人化して株式会社等の役員になれば厚生年金に加入できますが、法人化は少々ハードルが高いものでもあります。

年金の代わりになる保険の種類

 一人親方は厚生年金に加入できないため、将来的にもらえる年金額に若干不安が残る可能性も考えられます。
 そのため、厚生年金の代わりになるような年金制度に加入しておくのが賢明です。一人親方でも加入できるような年金制度としては、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 国民年金基金

  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)

  • 小規模企業共済

  • 民間の保険会社による個人年金保険

 それぞれについて、説明します。

国民年金基金

 国民年金基金は、国民年金に上乗せすることができる年金の制度です。基本的には65歳から年金を受け取れるようになりますが、「終身年金」なので平均寿命が伸びて「老後」と呼ばれる期間が長くなった現在の状況に、非常に即しています。
 掛金は全額社会保険料控除の対象となりますし、受け取る年金も公的年金等控除の対象となるため、高い節税効果も期待できるのもうれしいポイントです。
 途中で口数を変更しない限り、支払う掛金は加入時の金額から一定で、年金の支給開始時期や保証期間などに応じたいくつものタイプの中から、ライフプランに合ったものを組み合わせて利用することができます。
 掛金月額は選択した給付の型、加入口数、加入時の年齢、性別によって決まり、掛金の上限は6.8万円/月です。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

 個人型確定拠出年金は、掛金を拠出して自分で運用方法を選んで運用する資産形成の制度です。一般的には、「iDeCo」の愛称で広く親しまれています。
 掛金、運用益、および給付を受け取る際に税制上の優遇措置が講じられているので、国民年金基金同様に節税効果が期待できます。
 個人事業主の場合、掛金は5,000円から1,000円単位で変更可能で、6.8万円/月が上限となっています。
 ただし、国民年金基金に加入している場合は国民年金基金の掛金と合わせて6.8万円/月が上限なので、国民年金基金とiDeCoを合わせて13.6万円/月の掛金を支払うようなことはできません。また、毎月の掛金のほかに手数料が必要になることも覚えておきましょう。

小規模企業共済

 小規模企業共済は、iDeCoと同じように毎月掛金を拠出して積み立てていき、廃業後(もしくは65歳以上)に受け取れる制度です。
 iDeCoとは異なり自分で運用の指示を出せるわけではありませんが、1,000円から500円単位で変更可能な掛金の上限は7万円/月です。
 なお、これは国民年金基金およびiDeCoの掛金とは別枠として扱われるので、毎月できるだけ多くの金額を掛金として支払いたい方にとっては、非常に便利です。
 掛金は全額所得控除の対象なので、国民年金基金やiDeCoと併用することで、かなりの金額の控除を受けられるでしょう。
 払い込んだ掛金合計額の範囲内で事業資金などの貸付を受けられるなどのメリットもあります。ただし、加入期間20年未満で任意解約をすると元本割れしてしまうという点には、注意が必要です。

民間の保険会社による個人年金保険

 民間の保険会社でも、個人年金保険を取り扱っています。保険会社および各商品によってその内容はさまざまなので、実際に利用する場合は各商品の特徴を比較検討して、加入するものを選びましょう。
 生命保険の形を取っているため、被保険者が途中で亡くなってしまったとしても遺族に保険金が入りますし、生命保険控除が受けられるため税制上有利であるということも、見逃せません。
 上述したほかの年金制度と合わせて加入することで、老後の不安を少なくすることができるでしょう。

まとめ

 一人親方として働く場合は国民年金基金や小規模企業共済などに加入するのがおすすめです。
 年金は仕事をやめたあとの主な収入となるので、なるべく多くの金額を受け取れるほうが安心です。
 一人親方として働く場合は厚生年金保険に加入できず、年金の受取額に不安が残る可能性があるため、ほかの制度などへの加入を検討するとよいでしょう。
 国民年金に上乗せすることのできる国民年金基金、掛金を拠出して自分で運用方法を選んで運用できる個人型確定拠出年金(iDeCo)などが、主な候補となります。
 ほかにもいくつかの選択肢がありますが、それぞれメリットおよびデメリットがあるので、比較検討したうえで加入するものを選ぶようにしましょう。

 なお、労災保険に関しては業種によって加入できる・できないがありますが加入できる場合は労災保険の特別加入という制度があります。雇用契約のある方と違い一人親方の場合労災保険は対象外ですが、一定の職種の場合には労災保険に加入できます。詳しくは一人親方団体労災センター共済会で解説していますので、ご興味のある方はご検討ください。

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