万座温泉日進舘への旅で幸せについて考える
窓の外の景色が電柱、鉄筋マンション、工場から森や山、花に変わっていく。東京から埼玉、そして群馬県へ入った。
僕は万座温泉へ向かうバスで幸せについて考える。パフェを食べているときや温泉に入っているときは幸せだと思う。しかし、どっちも短時間だ。幸せになれると思い、ライターという仕事を選んだが、あまり実現できている気がしない。当初は人に感謝されて、自分のタイミングで仕事ができればいいと考えていた。確かに幸せなときはあるが、感謝されるのは記事が公開されてからだし、締切も苦しい。なんというか、僕の幸せには持続性がない。
万座温泉日進舘の直行バスプランの詳細は以下ブログ記事からチェック
万座温泉へ行く理由は幸せに浸りたいのと、答えが見つかるといいなという期待感から。温泉へ入って自然のなかで過ごせば、脳から幸せホルモンが出ると本に書いてあった。
万座温泉へ近づくにつれて都市部の窮屈さを感じる。まず、万座温泉付近の山の一部には電波がない。東京などの都市部では4Gや5Gの電波が飛び交い、フリーWi-Fiが僕らの視界を遮る。次に、信号がない。万座温泉近辺でバスが信号待ちをしたことはなかった。一方、都市部では100m歩けばというくらいに信号がある。そして、万座温泉には視界を遮るものがない。外に出れば向こう側の山が見えるし、他県の街まで見渡せる。しかし、東京では鉄筋の建物が邪魔をして、遠くの方まで見渡せない。
宿泊するのは万座温泉日進舘。日進館は、酸性硫黄泉の泉質を持つ温泉を3種類の湯処を堪能できる。標高1800mの眺望を活かした露天風呂の景色は絶景。日進館を選んだ理由は、リーズナブルで一人旅に利用しやすいのともう一つの目的からだ。
まずは万座温泉に入りながら幸せについて考える。温泉場に踏み入れて乳白色の湯を見ると、思わずテンションが上がる。硫黄の性質を持つ温泉は、別名美人の湯とも呼ばれ、アンチエイジング効果を持つ。
万座高原の景色を見ながら良質な湯に浸かるのは、とても幸せだ。全身でリラックスできて、嫌なことを全部忘れられる。さらに、アンチエイジングもできて若さを保てるのだから、毎日温泉に入れば幸せだろう。しかし、温泉に入るのが当たり前になって何も感じなくなっては困る。傍から見ればうらやましいことは、隣の芝生ではないが、本人にとってはそうでもない場合がある。パフェを食べて幸せになるのも時々だからであって、毎日ではしょうじきくどい。さらには、健康によくない。
次は万座温泉の周辺を散策しながら幸せについて考える。日進館で早朝6時からの散歩イベントに参加したのだが、とても気持ちのいいものだった。山の涼しい風にあたりながら、万座温泉の景勝地を廻る時間は、幸せに感じた。
「マーガレットの花は好きから始めると嫌いに、嫌いから始めると好きになるんですよ」
日進館の早朝散歩イベントでは、ガイドの方が植物の解説をしてくれる。気づかないだけで道にはさまざまな種類の植物が生きている。しかし、普通に生活しているときは気にかけることもない。都市部で過ごしていると、気温の変化だけで季節を実感しているなんてことがしばしば。四季の移り変わりを感じながら、自然の中で生きるのは幸せなのだろうか。
午後には近くのハイキングコースに挑戦した。しかし、半分くらい行ったところで夏の暑さと酸素の薄さにうんざりしてしまった。だが、ハイキングコースを終えたときには達成感があり、行って良かったと思うものだから、人間はよく分からない。標高1800mから見る景色は絶景なため、行かれた方はぜひ挑戦してほしい。ハイキングコースは湯畑の向こうにある。
結局幸せが分からないまま、食事の時間になってしまった。では、食事はどうだろうか。人間は食べるために生きて、働いていると言っても過言ではない。日進館の食事は基本バイキング形式で、好きな料理が食べ放題。これぞ、幸せの形ではないだろうか。自分が欲しいものが何でもあり、好きなように選べる。ステーキや天ぷら、スイーツが食べ放題で、とても楽しい。好きな料理を食べている間は幸せだ。しかし貧乏性なのか、すべての料理を食べようとしたら取りすぎてしまった。お腹がいっぱいな状態でお皿に料理が残っていると、ものすごいプレッシャーを感じる。せっかくのごはんを残せないので、必死に食べるのだがしんどい。これでは幸せどころか、大変な気がする。何でも選び放題というのは、幸せではないのかもしれない。
帰りのバスへ乗る時間が近くなってきた。幸せについての結論がでないままだが、もう一つの目的を達成するために日進館のカフェ「つま恋」に向かう。もう一つの目的とは、若女将に会うこと。美人さんに会いたかった…ではなく、若くして女将になろうとする人がどんな人なのか気になったのだ。日進館はメディアへの露出も多く、情報をオープンにしている印象が強い。若女将がいると聞いていたので、日進館へ行ったら会いたいなと思っていた。
カフェつま恋は12時から15時で営業しており、宿泊者だけではなく日帰り入浴の方も楽しめる。コーヒーや紅茶、自然ならではのジュース、ちょっとしたお菓子を堪能可能。僕は、アイスカフェラテとあんぱんを注文した。
実は、若女将は週末にカフェつま恋で働いている。声をかけたら、気さくに話してくれた。緊張して、話した内容をあまり思い出せないのだが、カフェつま恋のメニューは若女将が用意しているのだという。あんぱんも若女将が朝焼いて、提供している。アイスカフェラテもあんぱんもとてもおいしかった。作り手の顔が分かり、思いがある料理を食べられるのは幸せだと思う。家族もそうだが、誰かが作ってくれた料理というのは、お店のものよりおいしいと思うことがある。
「よかったら一緒に写真を撮ってくれませんか?」
とお願いしたところ、やさしく応えてくれた。お願いするところまではよかったものの、どうにも僕の笑顔がぎこちなくなってしまい、写真を見返して後悔した。だが、いい思い出ができてよかったなと思う。
帰り際に
「またぜひいらしてください」
と声をかけてもらえて、また来ようと思えた。なんというか、ちょっとやさしくしてもらえると幸せに感じる。さらに、話したこととかを思い出すと、幸せないい思い出だったなと思う。結局、人にやさしくしてもらえるのが幸せなのかもしれない。ましてや、きれいな方だったらなおさらである。幸せってそんなもんかもなと思いつつも、男ってしょうもない生き物だなと感じた万座温泉の旅だった。
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