02 関数電卓は数学の導入教材として使えるのでは?
現在、工業高校に勤めており、今年で2年めを迎えます。昨年1年間を過ごして思ったことは、「ここ(工業高校)では、数学が独り歩きしたらもったいない!」ということでした。
ここでは、数学の授業は週2〜3コマあり、専門(工業科)の授業が実習や座学を全部合わせて週15〜18コマ程度あります。その中で、座学でsinやcos、ベクトル(といっても力学のときに扱うような類)、電気だと複素数など、数学の道具が登場します。専門で扱っている数学の道具は、数学の授業でも生徒に馴染みのあるものであったほうがいい、というのが私の考えです。
工業高校の生徒は、関数電卓を入学時に購入します。座学のときに使うのかな?と思うのですが、具体的にどういう場面で操作することがあるのかはまだ知らず、目下勉強中です。彼らは「計算技術検定」という関数電卓を操作しつつの数学に関する検定があります。最近、2級や1級をひととおり解いてみました。このことについての詳しく思うことはまた別の機会に話したいともいます。
関数電卓を最近になって触るようになったのですが、こんなすごい多種多様な機能を持つ電卓がこの世にあったとは!というのが第一印象でした。私が使っているのは、CASIOのFX−JP500というものですが、2次方程式を入力したら解が得られるとか、出力が小数表示だけでなく、分数や√を含んだ無理数の表示ができるとか、分数同士の四則計算ができるとか、私の予想しているもの以上の機能が備わっているのに驚きました。
今度、1年生に三角比を教える(1年生は工業科でsinやcosなどが早々と登場するので、数学の授業として先に教え終わっておこうという意図です)のですが、授業展開として、
①関数電卓でsin1°の値を出力させる
②この値がどういう意味を持つのか、という疑問を持たせる。
③ここで直角三角形による三角比の定義を学習する。
④度の値をいろいろ変えていろんなsinの値を出力させる。
⑤sin30°が「1/2」と表示されることに気づいた生徒が出てきたら、三角比 の定義から1/2であることは「君たちも説明できるんじゃないの?」と問いかけみる。30°60°の直角三角形の3辺の比1:2:√3の利用を発見させる。
という導入も可能なのでは、と思います。
また、関数電卓を利用することが当たり前になれば、数学の学習は不要なのか?という声もあるかもしれませんが、当然不要なことはありません。むしろ必要です。というか、それを生徒に納得させることは技術職に関わることになる生徒にとって大切なことだと思います。
便利な道具が存在しているのは、それを作った人たちがいたからであって、その人たちはどういう過程でそれを作ったのか。その過程の時点で、高度な知識が必要であったはず。それが、この場合は「数学」である。
数学(とそれに関係する論理)は、道具を作り出すための種の1つである。
こういう教えを通して、「工業科での道具としての数学」と「道具を作り出すために先人が論理で構成していった数学」とに橋がかかればいいな、と思いながら今年度は生徒たちに実感を持てる数学をしていきたいと考えています。
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