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大自然に満ち満ちる詩の魂


不意にアンは指しながら叫んだ。
「ごらんなさい。あの詩が見えて?」
「どこに?」
ジェーンとダイアナは、樺の木にルーン文字が書いてあるかのように目を見はった。

「あそこよ・・・小川の底の・・・あの古い緑色の苔がはえている丸太よ。あの上を水が、まるで、櫛でとかしたような、なめらかなさざなみ音で流れているわ。それから、水たまりのずっと下の方に日光が一筋、ななめにさしているわ。ああ、こんな美しい詩って見たことがないわ。」
「あたしならむしろ、絵と言うわ。」ジェーンは言った。
「詩とは、行や節のことを言うのよ。」

「あら、そうじゃないわ。」
アンは山桜の花冠をかぶった頭をつよくふった。
「行や節は詩の外側の衣裳にすぎないのよ。ちょうど、あんたのひだべりや、飾りひだが、あんたではないのと同じように、行や節自体が詩ではないのよ。ほんとうの詩はそういうものの中にある魂のことよ――そしてあの美しい一編は、文字に書きあらわしていない詩の魂なのよ。魂を見ることはそう、しじゅうは望めないわ。詩の魂だって、そうよ。」

モンゴメリ『アンの青春』より



若楓(わかかへで)maple, σφενδάμνινος


卯月ばかりの若楓、すべて、よろずの花紅葉にもまさりてめでたきものなり。

吉田兼好『徒然草』


見わたせば、被造世界は、どこもかしこも〈美しい詩〉で満ち、文字に書きあらわされていない詩の魂に照らされ小川がきらきら光の舞を踊っています。「天は神の栄光を語り告げ、大空は御手のわざを告げ知らせる。」(詩篇19篇1節)。


光を衣のように着、天を幕のように広げておられる主よ、泉を谷に送り、山々の間を流れさせ、季節のために月を造られた主よ、汝のみわざはなんと多いことでしょう。

ああ、心の目が清水のように澄みわたり、汝のお書きになった詩の魂を恍惚として眺めることができたらどんなにか幸せなことでしょう。

詩の魂をとおし、汝の懐へと導かれていきたい。

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