練習のモチベーション
チェロを弾く子供達の伴奏者であるロシア人のオルガにピアノを習い始めて、二週間が経った。朝子供達を学校へ送った後40分、午後迎えに出る前に40分、毎日練習をしている。
家事や日課のPelotonエクササイズ。子供達のプリントのコピーや整理、算数の問題作り、チェロのレッスンのノートまとめなど、日々のやるべき事が沢山ある中で、何とか毎日練習が続いている。
娘達からは、毎日、「ちゃんと練習してる?ちょっと弾いてみてよ。上手くなってるか聴いてみてあげる(偉そうだ)。」とプレッシャーを浴びる日々だ。
「今日の練習は一回でいいかな。子供達にも言わなきゃバレないし・・。」
と、正直ほぼ毎日思うのだけど、そんな時、オルガの顔が頭に浮かぶ。オルガがレッスン中やたら褒めてくれたあの瞬間が、フラッシュバックする。
Great! Great! Yes! That’s it!! You got it! You’re doing amazing!(そうそう、凄い凄い!できるじゃない!素晴らしい!)
そして、「練習しなきゃ、オルガの事がっかりさせたくないし。」
と思うのだ。私があまり練習しなくても、がっかりしないとは分かっているのだが、人間って、面白い。褒められた記憶が、モチベーションになるのだ。理性を越えた部分で、無意識に訴えてくるのだ。
「万が一、オルガに期待されていた時の為にも、頑張って練習しなければ。」
と自分を奮い立たせ、そして調子よく練習できた時は、
「万が一才能があった時のためにも、ちゃんと練習しておいてよかった。」
と、ほっと一安心する。
こんな話を娘たちにしていたら、
「誰も期待してないんですけどー。うけるーー!」と、爆笑された。ふと、私がピアノを習い始めてから沸き始めた疑問を、娘たちに聞いてみた。
「チェロのレッスン中、何やってもダメ出しばかりの時って、やっぱり練習もやる気なくなったりする?一生懸命練習したあと、一言も褒められない時って、がっかりする?」
私と違い、娘たちは期待されているからこそ、先生は厳しい。他の生徒さんにはそんな事ないので、多分、可愛がっているからこそ、期待してるからこそ、求めるものの水準が高くなり、結果厳しくなるのだろう。
11歳の長女は言った。
「そんなの人間誰でもそうじゃない?一生懸命練習しても、レッスンで上手く弾けないことしょっちゅうだけど、一生懸命やったって部分は認めて欲しいよ。一生懸命やってない人に凄い厳しくするのなら分かるけど、毎日何時間も練習する子供って、多分私達だけだからさぁ、怒ってる場合じゃないと思うんだよね。もっと大切にした方がいいよ。だってそんな子供絶対いないから。」
だと。意外と子供って、周りを冷静に見ているものだ。
「じゃぁどうやって練習のモチベーション保つの?」と、私がオルガにレッスン中怒られたら多分レッスン辞めるだろうな、と内心思いながら聞いてみた。
「そりゃ、綺麗な音楽弾きたいって思うからでしょ。自分がいいって思える音楽弾きたいからでしょ。そう弾けないから練習するんでしょ。」
そうなんだ・・・。タフで凄い。
私にはできない事をやっている。自分の子供相手だけど、もはや尊敬の気持ちしかないや。
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