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ファッションだけはどんな状況でも自分で選択できて、未来を変えるきっかけになる③

高校卒業後、私は筑波大学の比較文化学類に入学しました。家から通える国公立大学だったからです。

ファッションや舞台衣装を勉強したかったのですが、専門の授業をしている先生は自分の学部にはいない!という重大な事実に、入学してから初めて気づきました。

受験する前に気づくべきなのに後の祭りです。入る学部完全にミスった~!と思ったものの、一度入学してしまったから、仕方ありません。哲学や現代美術、ジェンダーなど少しでもファッションと関係のありそうな授業を履修することにしました。

ファッションや衣装に関しては自分で勉強しなければなりません。興味を持ってくれた友人とファッションサークルを立ち上げました。そして、現場に入るのが一番いいと思い、アパレル販売のアルバイトを始めました。


初めてのアルバイトは、アパレルの会社のオープニングスタッフでした。地元で人気のジーンズカジュアルのお店です。

学生の初心者アルバイトに与えられる仕事は、タグ付けと検品と服のお畳み作業です。ストックと売り場を行き来しながら、膨大な量の地味な仕事をひたすらこなす日々でした。商品のたくさん入ったダンボール箱を開けて、検品して畳んでは、社員さんの指示の通りに棚に並べます。

大きなお店のオープニングでバタバタした雰囲気の中、自分なりに一生懸命作業しました。しかしあまりにも不器用だったため、私は毎日怒られていました。要領が悪い!たたむの下手くそ!時間がかかりすぎる!やり直し!


会計時に間違いがあっては困るのでレジ打ちからは外されました。私はレディース、キッズフロアのフィッティングルームを主に担当することになりました。

フィッティングルームでも、初めの頃は全然売ることができませんでした。対人関係が苦手すぎて、お客さんにいらっしゃいませ、と声をかけられなかったのです。何でよりによって接客業を選んでしまったのか・・・。


接客も作業もあまりにもダメダメすぎて、今日は何人に話しかけたか報告させられました。教えてもらった仕事が全然覚えられない。ノートにちゃんと書いて、とイライラされる。

さらにもう一つの問題が。身長が低くて、社販の洋服が全然似合わなかったのです!レディースのボトムはたっぷり10cm以上裾上げして、キッズの140cmのトップスを着て接客していました。好きで入ったのにこの仕事は向いてないのかな・・・落ち込みました。


でも服が好きな一心で頑張っていたある時、私のことをすごく気に入ってくれるお客さんが現れました。

私を気に入ってくれたお客さんは、何回も、何回も私のいるときに買いにきてくれました。

あなたのオススメは?と聞かれるようになりました。あなたの着ている服を買いたいから全部持ってきてちょうだい、とも言われました。

洋服全部買い換えたいから全身コーディネートしてほしい!という人も現れました。

親戚の誰々ちゃんにとても似ている、と言われました。家族や友人を連れてきて紹介してくれる人もいました。

初めて会った時には、元気ないのかな、大丈夫かな?と心配になってしまうような人が、フィッティングルームで初めて笑顔を見せてくれました。
それを2回、3回と回数を重ねるうちにすごく元気になって、「周囲の人に褒められたよ!」と報告しに来てくれました。

体のラインがでる服を着られるようになったり、明るい表情になっていく。嬉しそうに「また来るから次もよろしくね!」と言ってくれる。

人生変わった!とまで言ってくれる人まで現れました。もうあなたからしか買わない!えー!!私のつたない接客でそんなに喜んでくれるんですか??

そんなお客さんが一人増え、二人増え・・・


最初は怒られてばかりだったダメなアルバイト店員が、いつの間にか、店のコンテストで全国売上トップになりました。


私にとっては身長が低いことはコンプレックスでしたが、お客さんにとっては身近な存在に感じてもらえ、この人なら相談してもいいかも、と思ってくれたのかもしれません。少しでもスタイルを良く見せようとしていたことが、有益なアドバイスに繋がっていたのかどうかは分かりませんが、とにかく目の前のお客さんには受け入れてもらえたのです。


ファッションのもつ力は本当にすごい!と思いました。そして、身長も低いし失敗ばかり、苦手なことだらけな私だけど、その個性を受け入れてくれる人がいる。ファッションを通じてならみんなを幸せにできるのかもしれない。これは私にとっての天職なのではないか?と考えるようになりました。


「人生変わった!」

この一言で私ははっとしました。

ファッションは自分の未来はもちろん、周りにいる人の未来も変えられるのかもしれない。誰かを勇気付け、そっと背中を押してあげることができるのかもしれない。ファッションを自分の仕事にしよう、そう思った出来事でした。





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