世の中を変える一つのヒント
訳あってぺットショップに老犬を預けています。
ところが2日前に急に電話がかかってきました。
「手術させないといけない!」
えっ、と思いました。
『老犬なのに子宮から出血があるため、獣医さんに見てもらうと、
「膿がたまっているのですぐに手術のできる病院で手術してもらって下さい」
と言われた。応急処置で強い抗生物質の注射だけ打ってもらった』
というのです。
もちろん、すぐに手術可能な獣医さんへ連れて行きました。
そこで検査をしてもらった結果は、・・・
・・・
ごく普通の「生理」でした。
ホッとしましたが、よく考えると
もし初めの病院が手術可能なところであれば、今頃手術をしていたはずです。
小型犬でしかも老犬のため、手術で命を落としていたかもしれません。
実際に強い抗生物質の注射を打たれました。
恐ろしいものです。
今回は犬でしたが
実は人間の医療ミスも恐ろしい確率で起きています。
コロナ騒動の前ですが
アメリカでは回避可能な医療ミスによる死者は
年間40万人以上(平均すると1100人/日)というデータがあります。
これはジャンボジェット機が毎日2機墜落しているようなものです。
しかも別の調査では、ジャンボジェット機が毎日3機墜落するより多いデータも出ています。
しかも残された遣族には医療ミスだとは知らされずに
「最善を尽くしたのですが、、、残念です」
で終わることも多々あるとのこと。
恐ろしい話です。
もし私たちが遺族なら、医療ミスと知れば「怒り」がこみ上げるでしょう。
医療従事者であれば仲間内で「批評」するでしょうし、これを知った一般の人たちは「批判」するでしょう。
当たり前ですよね。
しかしなぜこの現代において、こんなに医療ミスが起こり続けるのでしょう。
医療従事者の方は普通の人よりもずっと「人のために」という心を持つ方が多いはずです。
頭もいいはずです。
一般の人より医療ミスを無くそうと努力されているはずです。
しかし失くならない。
その大きな原因は先ほどの怒り、批評、批判ではないでしょうか。
特に医療関係者の間では昔から批評の文化が強いそうです。
なんとなくわかりますよね。
そうなるとミスをした本人は本当の報告ができなくなります。
ミスを隠すか、差し障りのない報告しかできません。
そして周りの人も差し障りのないアドバイスしかできなくなるのです。
どちらも批評され、不利益が発生するからです。
そうなると医療ミスはどうなるか。
そうです。減らないのです。
ミスを減らすには、改善をして現状を変えなければなりませんが、改善するには正しい報告、真の原因という情報が必要なのです。
そして改善案を出す方も、差し障りのないものではなく、核心を突いたものでなければなりません。
批評や不利益の発生する文化では、報告は少なくなり、真の原因もわからず、差し障りのない改善案しか出てこないのです。
たとえ「人のために」という志の高い人達の中であってもです。
この問題は人間に感情がある以上、解決できないのでしょうか。
いえ、実は解決している業界があるのです。
それは航空業界です。
今、私たちが使う航空会社の事故率は830万フライトに1回と言われており、事故に会おうとしても会えません。
もちろん、これには技術の進歩もありますが、注目すべきなのは航空業界のシステムなのです。
例えばパイロットがミスをしたとしても会社はパイロットに罰を与えません。
事故を起こしたパイロットを特定できないようにしています。
仲間からも世間からも、批評や批判をされないようにしているのです。
会社がミスをした人をバックアップする体制を作り、仲間を批評しない文化を作り上げたのです。
そして、この体制になるとミスの報告は減りました、
と言いたいところですが、逆に増えました。
なぜなら、今まで隠れていた、人に言えないミスまで含まれてくるからです。
しかし、その中には真の原因が書かれていました。
本当の原因が書かれているので本当の改善策が生まれます。
そして、以前なら案を出した人がバカにされたような改善案も、仲間を批評しない文化が出来上がったため、表に出てきました。
本当の改善策が生まれたのです。
例えば、車輪を出すレバーは他のレバーと間違わないように、握る部分がタイヤの形に変わりました。
それなら子供でも間違わないでしょう。
実は医療業界でもこの文化を取り入れた病院があります。
その病院でも「ミスをした人をバックアップする」体制を作り上げたところ、初めは膨大なミスが報告されたのですが、ついには全米トップレベルの安全な病院として認められるまでになりました。
人は感情で動きます。
すべては「心」から。
もしこの話に興味を持たれた方は
マシュー・サイドさんの「失敗の科学」を読んでみて下さい。