0と1  第二話待つ君

駅の改札横のコンビニの壁にその姿はあった。

スカーレットレッドのニットのミトン手袋を脇に挟んで壁にもたれて小説を読んでいる。時折本を閉じかけ人の行き来を黒い瞳がせわしなく追う。

約束時間から15分経過。

そろそろかな。ロータリー側に目をやる。

白いシャツに黒いパーカを重ねた、細いシルエットを見つける。

0だ。

「ごめん。またせて。」
「全然。何時もより早めについたね」

「・・・合格?」
にこりと微笑む。

いつもこの表情には調子が狂うな、0は俯きながら視界に入ったミトンに
「ちょっと、手袋もってきたの?まだそんなに寒くないんじゃない?」

「え?・・・・うーん。これはなんというか気分かな冬待ちどうしくって」
1は、12月や1月の季節を言ってるんだろう。
イベントが好きって訳じゃなくて、ただ一年の終わりと始まりが冬にあるのがいいと以前はなしていた。
「それにしたって。なくなさいようにね。」
にこりと笑う。

「0に似合う赤だなって。すこしくすんだ感じの色。思わず買っちゃった」
「そう」
自分に似合う色は持たないそうで、何かと1の友人や大切な人のイメージカラーを身につける。気づくとそうなっている。
私が気づいたことなんだけど、いちは「そうかもね」と受け流して居た。

変なとろこは受け流す。
私もそうなんだけど。

さっぱりしてそうで、随分こだわりが多いね。なんて鋭いことをいわれたこともある。
そう、拘りが多すぎて。許せるものが少なくて。
なら何も持たずでいい。

まともなスカート一つこの世界には売って居ないのだから。

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