TRIANGLEの三角関係を考える
演劇女子部では2作目の視聴となった「TRIANGLE-トライアングル-」
の感想備忘録です。
以降はネタバレしかないので
ご注意の上お読みください
感想
視聴直後の感想はこんな感じ。
αとβで補完するようにストーリーが組み合わされて、視聴後は謎が全て解けて爽快でした。
選抜キャストとのことで前回のリリウムで観られた方がいらっしゃらなかったりするのは残念でしたが、新たに12期さんも加えて舞台場に配役も相まって初々しさがいい方向に働いていました。
キリ中尉……ローズウッド……。こういう子たちが報われる物語で本当によかった……!
サクラ姫を演じられてた石田亜佑美さんは、また新たな魅力の一面を垣間見た気がします。特に歌唱のファルセットが綺麗なことに、この作品を観て気がつくことができました。ミュージカルだとより映えるなぁ。
キリはハマり役でちょっとコメディーな部分も、真面目で想いの伝え方が不器用なところも、自然に表現されていて素敵でした。
そして、ピンプ。彼は舞台に現れるたびに目を惹く演技をされていて視聴後も気になっていました。その後、Xで演じられているのは高瀬くるみさんだとお教えいただいてしっかりお名前覚えさせていただきました。プロい。
物語について
α編・β編の違い
α
・主人公がサクラ
・殺陣シーン有り
・キリの過去が明かされる
β
・主人公がアサダ
・アサダが初めからヴィータ人と判る
・触れた人の心の声が聞こえる
・ローズウッドの過去を知れる
恋のトライアングル
α編ではキリ、アサダ、サクラを中心とした三角関係、β編ではアサダ、サクラ、ローズウッドを中心とした三角関係が描かれます。
α
キリ→サクラ⇄アサダ(←ローズウッド)
β
ローズウッド→アサダ⇄サクラ(←キリ)
矢印の方向に想いは向いていますが、
結果的に結ばれるのは
キリとサクラ
アサダとローズウッド
です。
この結末を観客の視点で見た時に、王道展開から少なからず『裏切られた感』を覚えたのは、物語の主人公(αの場合はサクラ、βの場合はアサダ)の恋心が叶わなかったからでしょう。
個人的には納得の着地点だったのですが、ここで今一度登場人物たちがこの決断に至るまでの選択を考えてみたいと思います。
利害のトライアングル
恋模様に絡んでくるサクラ、キリ、アサダ、ローズウッドは何を想いどうしたのか。整理します。
【α編、β編総じてみた時の行動原理】
サクラ
【恋の自覚から王族の自覚へ】
最も大事なもの→α星
・アサダと手を取るだけで胸がときめく
・アサダとファーストダンスを踊りたい
〜ローズウッドの告白による心境の変化〜
・最終的にキリの手を取る
サクラはまっすぐに恋をする女の子から、ローズウッドからの願いに心を動かされ、次にイオタに謁見するときには自分の母としてではなくα星の女王としての態度を取ります。
最後にキリの手を取るのも気持ちに応えようというのもあるのかと思いますが、結果的にα星が今後も続いていくための最善手を時期王女として見据え、取っていることになります。
最後に、アサダに触れたときに何を伝えたか問題について、これは確証のない個人的な考えになりますが言及しておきます。
私はシンプルにあのとき言いかけた「アサダ、好き」だと思っています(まっすぐに好意を伝える言葉)。
理由は、前提としてアサダのサクラへの評は『思ってることと言葉にすることが変わらない』です。
そして、思ってるよりも早く伝える方法は口にすること、とサクラがアサダに告げたのは「ローズウッドさんとお幸せに」です。
心を読み取った後にその言葉を聞いた動揺は、初めてその概念が崩れたことによるものだと考えます。
このとき、アサダはローズウッドの深い自分への想いに触れて愛を知った状態です。愛とは「自分よりも誰かを大切に思うこと」であり、自分の知らぬ間に愛というものを覚えたサクラの姿を見て、喜びと、後悔と、諦めと、終わりを迎えた2人の恋心に「さようなら、愛しい人」と別れを告げたのではないのでしょうか。
キリ
【命を救われた恩と掴み取る愛】
最も大事なもの→サクラ
・サクラのためα星に移住を決意
・自分が持つ軍事力をα星に全力投資
・ヴィータ人が苦手なサクラに触れない
・サクラにアサダの元へ向かう発破をかける
α編だけみているとキリはサクラの心を慮り、アサダが結婚の資格があるヴィータ人である秘密を話してサクラを向かわせます。いい人です。
しかしβ編も見るとその前にローズウッドがオメガ人のために自分の身を呈してスワスワの植物化を防いだことを教え、アサダをサクラから身を引くように仕向けていました。ちょっと印象が悪いですね。
なぜこんな構成になったのか。
曲中に
という節があります。
ヴィータ人は争いによって全てを得てきた種族です。β編の途中でもアサダのサクラへの想いを知っても静観することはあっても引くことはしません。あくまでヴィータ人であるキリのスタンスは戦いにあります。
しかし、ラストでキリはサクラをアサダの元へ送り出します。
今まで軍人としてα星に貢献をしてきたキリでしたが、サクラ姫を想ったものでもやはりそこには争いが生まれていました。
しかし、「ひとにゆずるほど安くない」とまで言った自らの好きの想いに反して、サクラをアサダの元へ送り出す行動は、結果的にサクラが1番に思っている争いのない惑星αという像を尊重する形となったのです。
ここで初めて2人の思いの矢印が互いを向きます。だから最後にサクラはキリの元へ戻ってきた。
サクラの姿が見えなくなった後、キリは
とひとりごちます。
『一片のかけら』という表現は、戦いばかりだったキリの相手にかける情けでしょうか。
アサダ
【言動が不一致の自己弁護】
最も大事なもの→オメガ人としての自分
・婚約を知っても1オメガ人であることに固執
・心を読むことを恐れサクラの手を離す
〜キリが告げた真実でローズウッドの愛を知る〜
・ローズウッドの恋心に応える
アサダ自身が言っていたように、アサダの言動は全て自分ばかりです。
自分のヴィータ人の血を嫌っているのに、キリの感情を読むために力を使うことには躊躇なく、時に攻撃的に詰ります。
サクラに嫌われたくないからと、1番大切にすべきことを見誤って心を読みそうになればサクラから手を離し感電させるなど、オメガ人のスワスワ使いとしても中途半端。
正直1番共感しにくい相手なので人物評価が厳しくなりがちですね笑
もっと客観的に立ってアサダを見ると、1番この中で誰にでも平等であろうとする平和主義者であるように思えます(サクラはヴィータ人に苦手意識、キリは争いの星のもと生まれている、ローズウッドは自分の大切なものを守るためなら運命に抗う)。
良くも悪くも今の自分から変化を嫌って、好意を抱いているサクラとの関係を深めるのにだって慎重です。
だから初めはサクラと両思いでいられたのかな、なんて。
ただそれは自己愛によるもので、サクラへの想いは恋に止まり、愛にはならなかったところがキリとの違いになります。
ローズウッド
【自己犠牲の上に成り立つアサダへの奉仕】
最も大事なもの→アサダ
・お告げを破りオメガ人とスワスワを守る
・アサダを気にかけサクラから遠ざける
・ヴィータ人と知ると女王に伝えるべく動く
・最後まで2人から身を引こうとする
やりすぎなのではというくらい、アサダのことを深く愛したローズウッド。これで見返りを一切求めてないところがいじらしい……。
登場人物の中で1番好ましく思うキャラクターでした。
物語のメインキャストのトライアングルにローズウッドは写っていませんが、他の3人の恋を愛に進めるためにローズウッドの愛情は大きな影響を与えています。
ローズウッドの取る行動の全ては触れるまでもなく思いが溢れ出しているのですよね。
まとめ
物語は
争いのない国を目指す者と
争いによって国を守る者が
自分の心を大事にする者と
相手に己の身を尽くす者が
共に生きていく結末となりました。
言葉と行動と心緒のトライアングルを舞台で駆け抜けた4人なら、この先もきっと添い遂げてゆけることでしょう!
簡単にまとめるつもりがこの有様で……。
ここまで長文にお付き合いくださり、
感謝の気持ちでいっぱいです。
以上!
素敵な作品をありがとうございました!