うそ

オーディションの話が来てもワクワクしなくなっていた。

台本と呼ばれるものを読んでいて何も共感ができなくなっていた。

人前に立つことに緊張を感じなくなっていた。

そして、先生から芝居することを面白がってやってるかと問われたとき

気づいた。楽しさを感じていないんだと。興味を持っていないんだと。

面白がれていないんだと。

もしかしたら「はい、面白がってやっています!」と

そこで演技はできたかもしれないけど、嘘をつくことだけは絶対に嫌だったし

演技を勉強してきたからこそ演技で嘘をつきたくなかった。

もう、辞めるときだと思った。

そして、去年の夏、続けることが全てだと思っていた芝居をやめた。

パッと辞めることができたわけじゃなかった。

これは持って生まれた性格というかなんというか

とにかくしつこくて諦めが悪くて理解が遅い人間だから

辞めようと思ってからもレッスンに通って続けていた。

そんな日々の中で、事務所中全員で芝居の試験をやると通知があった。

それを聞いて、これをやって辞めようとやっと決まった。

最後やり切って、頑張ったと思って辞めたかったのだと思う。