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「Active-Bystander=行動する傍観者」動画


過去のブログ記事を編集してnoteに移行する作業をはじめて間もない時期に、cakesでの幡野広志氏のDV相談者への回答が話題になりました。どこからどう見ても最悪の二次加害だし、あれを見た方の中には「誰も救ってくれないのか」と絶望した方もいるだろうとリアルに想像できます。酷い内容だと思いました。(ご覧になりたい方は検索したら記事が出ますが、それによって傷つく方もいらっしゃると思いますのでご注意下さい。)
そのような記事を広めた編集の責任は重く、cakes、noteの退会が加速しています。私自身も、せっかくこちらを動かし始めたのに嫌だなあと思っていますが、先日の記事を書いたこともあり、また、性暴力防止の啓発動画が最近公開され、その反応について思うこともありますので、ここに書きたいと思います。

先日、このような動画が公開されました。

制作前に「性暴力防止の啓発動画を作るぞ!」と作家のアルテイシアさんが告知されていたので、何か協力ができることはないだろうかと思いながら、完成を待っていました。

アルテイシアさんのウェブでのコラムは好きでよく読んでいて、ご著書も何冊か持っています。『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった アルテイシアの熟女入門』は、同じぐらいの年齢の女性に勧めたり差し上げたりしたら、「わかるの連続」「腹抱えて笑った」と、加齢とジェンダーの不均衡をユーモアに変換してエンパワメントする内容に、皆さん喜んで下さっています。


そのアルテイシアさんが脚本を担当された動画で、完成してすぐ電車の中でイヤホンをしてスマホで見たのですが、自分でもそんな反応するなんて全く予想していなかったのに、思わず涙が出てきました。

時間が経つほど、この動画のツイートには女性から「涙が出た」というコメントが並んでいき、どんどん自分の経験談付きで拡散していくその様に、「皆我慢していたんだ」というシンパシーでいっぱいになりました。女性にとっては当たり前の光景で、この動画で紹介される行為を一つも人生で経験していない大人の女性はいないでしょう。
「こうやって周りの人に声をかけてもらえたら良かっただろうなあ」という感想を持った方も多くいると同時に、「あの時助けてくれた人がいて、本当に救われた」というツイートも多くあり、〈同じような体験をした人が沢山いる〉、〈助けてくれる人がいる〉ということが可視化されて、〈一人じゃないんだ〉という大きなメッセージになったと思います。

対して、幡野氏のDV相談者への回答の記事は、困って相談してきた人に対して「嘘じゃないか」と断罪し、〈誰も味方はいないのだ〉というメッセージにしかならないものでした。自分はそのような被害を受けた人間ではないですが、胸を抉られたような気分になりました。
またか、と思いました。

アルテイシアさんの動画に関して、こんなことをツイートしました。


セクハラ、性暴力について話をすると、いつも「お前も悪い」という結論になります。いつでもです。男性からだけでなく、女性からも言われますよ。「あなたがそんな格好をしているから」「あなたがそんな暗い道を歩いているから」「あなたが隙を見せるから」
そんなの、セクハラ、性暴力は、する方が100%悪いに決まっていますよ。加害されたのに、相談した先でまた傷つけられれる。こんなのおかしいですよ。自衛することがどうして問題にされないといけないのですか。
あのセクハラ、性暴力の不快さ、肉体的な不快さだけではなく、恐怖を植え付けられたこと、何より尊厳を傷つけられたことなど心理的なものは、一生のトラウマになります。
あえてセクハラ、性暴力と書いていますが、セクハラも性暴力です。セクハラという言葉は性暴力を軽くしただけの表現です。こちらもきちんと認識されるべきです。

私は高校の時に、自転車で学校から帰宅している時に、バイクで追いかけられて並走されて胸を触られたことがあります。同じく高校の時に、別の自宅への道で、向いから全速力で走ってきた自転車の男性に触られたというかほぼ胸を強打されたという状態で、そのまま自転車で倒れたことがあります。

今でも仕事で大阪に行く時は実家に泊まっていますが、自宅から駅へ行く主な道は3本しかなくて、そのうち2本で上記の被害に遭ったために、そこを通る時は毎回そのことを思い出します。40歳になっても毎回です。自転車やバイクが近くにきたら、ヤバイことが起こるのではないかと身構えます。残る1本の道は、一番人通りが少なくて、逆に怖くて通りません。だから、被害に遭ったうちの片方の道を毎回通っています。もう一度書きますが、40歳になっても毎回です。

以前はこういうことは〈痴漢〉と呼んでいましたが、これはれっきとした〈性暴力〉です。

啓発動画にあるように、ナンパというのも実は怖いもので、私も覚えていますが過去にそうやって声をかけられて断ったら、罵詈雑言を吐かれたことがありました。こちらはただ歩いていただけで、完全にもらい事故ですよ。これで実際に跡を付けられたり、危険な目にあったというコメントやリツイートも見て、ゾッとしました。

とにかくこの動画は、動画そのものも大事なのですが、コメント、リツイートなど、動画に付いてくる感想をご覧頂きたい。女性たちがそれぞれの経験談を書いている、その事実と〈当たり前さ〉が恐ろしい。

同時に男性らしき人から「こんなことあるんだ」という感想も多く見られましたが、先日のコラムに書きましたが、〈人によって見えている景色が違う〉ということも、非常によくわかります。女性には当たり前の光景だったのです。

私も20代の頃にわりとヘヴィなトラブルに遭ったことがあり、その時は助けてくれた人がいたから良かったのですが、その時に自分の心のある部分が死にました。
性暴力は、心や人間性に対する殺人です。
今まで、セクハラや痴漢という言葉で、軽微なもののように免罪されていたものは、〈性暴力〉です。

この動画のように、〈目に入ったら見過ごさないで、小さくても何らかのアクションを起こす〉という行動ができたら、社会が少しずつ変わると思います。


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