#017_【ボトムライン・メンタリティ】リーダーへのストレスが成果主義を助長する?!(#7-10)
この論文の目的は?
ボトムライン・メンタリティ(以下、BLM)は近年(ここ20年くらい?)研究され始めたテーマらしいです。
ただし、個人特性や感情疲労といった個人の内面に注目されていること、そのほとんどはメンバーレベルでの悪影響であり、リーダーレベルでの研究や、BLMの先行要因についてははっきりしていません。
そこで注目したのが「hindrance appraisals」
※hindrance appraisalsは適切な日本語がわからず、困っています。。。今回は「行動を制限される・ストレスになる状況であるとリーダーが評価する状況」と読みました。
hindrance appraisalsがリーダーのBLMの引き金になるのではないか?
hindrance appraisalsがリーダーシップスタイルに影響を及ぼすのではないか?
BLMの強いリーダーは倫理や公正さの重要性を軽視し、倫理的なリーダーシップを発揮する可能性が低く、虐待的なリーダーシップを発揮する可能性が高いのではないか?
また、リーダーの性格特性(本論文では神経症的性格を取り上げています)がBLMの採択をしやすいのではないか?
このことから「リーダーのhindrance appraisalsがリーダーのBLMとリーダーシップの欠点にどのような影響を与えるか?」をテーマにした論文です。
POINT1. ボトムライン・メンタリティとは?
リーダーのBLMを「ボトムラインの成果を追求することに一点集中するリーダー」(Bonnerら(2017) p.1203)と表現しており、ボトムラインの成果とは一般的に財務的な成果(すなわち、利益対損失、Wolfe, 1988)を意味します。
BLMは従業員の望ましくない行動、と他えば、従業員レベルでは、従業員の不適切で望ましくない行動の増加(Babalola et al., 2020; Eissa et al., 2019; Farasat & Azam, 2020; Farasat et al)、顧客主導の非倫理的行動の増加(Babalola et al., 2020)、ワークグループの創造性の低下(Greenbaum et al.)などが挙げられています。
いいこと一つもないですね!
POINT2.倫理的リーダーシップと虐待的リーダーシップ
倫理的リーダーシップ
リーダーがフォロワーを公平に扱い、規範的に適切な行動を示すことである(Brown et al., 2005)
虐待的リーダーシップ
リーダーがフォロワーを疎外し、持続的に敵意を示すことである(Rice, Taylor, et al., 2020; Tepper, 2000, 2007)
両者とも行動倫理研究に根ざしたリーダーシップスタイルとみなされています(Brown & Mitchell, 2010)
POINT3.結果
リーダーのhindrance appraisalsがBLMに正の影響を与える
リーダーのBLMは、倫理的リーダーシップに対するフォロワーの評価と負の相関を示し、虐待的リーダーシップと正の相関を示した。
リーダーBLMは、リーダーのhindrance appraisalsとリーダーシップ・スタイルとの関係を媒介し、さらに、リーダーの神経症的傾向はこれらの関係を調整した。→監督者はストレスの多い状況に対処することが期待されており、神経症度の高い人は不利な仕事や社会的状況に対してより否定的な反応を示す。このため、監督者が比較的神経症的である場合、彼らがストレスを障害とみなすと、BLMの採用が増幅されてしまう。
つまり・・・ストレスが障害と評価されると、リーダーが機能不全に陥ったり、BLMを採用する可能性があるということである。
何よりも即座の財務的リターンが求められる時代ではあるが、組織はリーダーのhindrance appraisalsに留意すべき!
一言でまとめると・・・
ストレス認知>BLM>倫理的リーダーシップの低下&虐待的リーダーシップの増加>メンバーへの悪影響
ということですね。
感想
ボトムライン・メンタリティそのものは「悪」であるとする論文がほとんど
で、この論文もそうです。私もおおむね賛成です。
一方で利益を上げなければならないのも企業としては当然担っている責務。
ボトムライン・メンタリティ=悪、の図式ではなく、そのような環境下であっても良いOutputを出せる組織とは?ということを見つけるのが重要なのかな、と思っています。(喉元まで来ている気がします・・・!)