#020_【離職意図】個人要因・組織要因・その他の要因を認識しよう(#8-1)
この論文の目的は?
従業員の離職意向の引き金となる理由を見つけることは、組織の最大の興味と言ってもいいのではないでしょうか?
すぐ辞めるかも?いつか辞めるかも?
理由は??仕事を辞めたいのか、この職場を去りたいのか?職種を辞めたいのか・・・・???
どのような意図があるにせよ、従業員の自発的な退職行動を抑制するために、組織は従業員の退職行動の理由を理解することが不可欠。
ということで離職意図に関するレビューを行った論文です。
●個人的要因~認知と能力~
従業員の個人的特性・・・性格もあるし、スキルや能力のような学習されたものもある。
・性格と離職意図の間に有意な関係はない(Dole et al.)
・一方で、気質と離職意図にはかなりの関係があるとされている(Chiu et al.)
※気質とは、個人がある状況に対して、画一的で不変的な考え方、感じ方、行動を用いて評価し、対応する志向性と理解することとしています。
・パーソナリティ=離職意図、ではなくパーソナリティは個人の知覚に影響を与えることから、知覚と離職意図は関係しているとされてきた。
・知覚された組織的支援(POS)は、従業員の離職の明確な先行要因であることが判明している(Eisenbergerら、1986)
・組織的公正(個人の知覚の結果)もまた、従業員の退職意向に重要な役割を果たしている。
・離職意向と手続き的公正および分配的公正の両方との間には負の関係が存在したのである(Loiら、2006年)
・能力、性別、経験年数、民族、性別、などの非認知的要因と従業員の離職意図との関係を見出そうとしたが、これらの関係性は立証されていない。
●組織的要因
・職務ストレス:役割の曖昧さ、役割の葛藤、仕事の過負荷、仕事と家庭の葛藤などは、従業員の離職意向を高める主要な組織的要因である。
・ストレッサーは退職意図に直接的な影響を与えないことを発見した(Igbariaら,1992)。
・上司からの社会的支援が彼らの燃え尽きレベルを低下させ、この効果が間接的に離職意向を低下させる。(Moore,2002)
・上司の支援は離職に関係あるともないとも、両方の研究がある。
・女性の上司の場合は、メンバーの求職行動が高まるという研究もあるようだ。 (Valentine et al., 2001).
●その他の要因
<職場環境>(Manger et al.、McGee(1971))
・転職意欲は、同僚との関係、仕事の性質、専門能力開発の機会がある。
・同僚との関係は退職の意思決定に大きな影響を与える。
・職務満足度も離職意向に影響する。
・相性の良い仕事内容や同僚を通じて得られる専門的成長の機会によって転職意欲は左右される。
<他社との比較>(Eddleston, 2009)
・下方比較と離職意向との間に負の関係がある
・逆に、上方比較は離職意向とキャリア満足度の両方に正の関係がある
<給与>
・給与と離職意向の間に有意な関係を示す研究はあまりない。というか多くの研究で関係がないと言われている。
●結論
離職についてはある程度の入れ替えはやむを得ないが、多すぎるのは問題である。特に、優秀な人材の自発的な退職は、企業が常に阻止したいと考える機能不全の離職である。
研究によれば、離職意向は従業員の実際の離職行動に先行する。(そりゃそうだ。意向がないのに行動はない!)
組織が離職率を低下させたいのであれば、従業員の離職意向や退職意向を引き起こす要因を理解することが不可欠。
離職意向は単一の要因に起因するものではないが、どのような組織においても、従業員の離職問題に対処するために総合的なアプローチをとることが望ましい。どの要因も単独で離職意図に影響を与えることはできない。したがって、改善策も複合的な枠組みを持つべきである。
感想
BLMと感情疲労と離職意図の関係を見ようと、離職意図のレビュー論文を読んでみました。
離職そのものは実務だけでなく、アカデミックの分野でも長いこと興味の対象なんだなぁ、としみじみ。
離職が難しいのは、本論文の結びにもありますが、単独で影響するわけじゃないということ。でも興味深いのは「給与は影響しない」という多くの研究があること。