見出し画像

生成AIの完全自動化に向かう未来~「AIエージェント」という存在

ChatGPTの登場から約1年半がたち、企業では生成AIの導入や活用が広がっている。業務課題の解決策や新規ビジネスに挑戦する足掛かりなど、さまざまな業界や用途で熱い視線が注がれている。

2024年7月現在、GPT-4o/GPT-4o miniまで公開され、この短期間での更新頻度を見れば、普及の程度が推し量れる。ChatGPTなどの生成AIを利用する場合、人が細かな指示を与えなければならないが、もしかすると、人が指示を出さなくても生成AIを使えるようになる日が来るかもしれない。現在、OpenAIやGoogleからベンチャーまで多くの企業が生成AIの発展系として注目する「AIエージェント」というものがある。

「AIエージェント」には様々な定義が存在する。現在、開催されている「デジタル戦略EXPO2024夏」に登壇された今井翔太氏(元・東京大学松尾研究室)は「人間が与えた目標を達成するために、自律的に外部ツールを選択、使用して動作するAIのこと」と説明している。AWSを提供しているAmazonは「環境と対話し、データを収集し、そのデータを使用して自己決定タスクを実行して、事前に決められた目標を達成するためのソフトウェアプログラム」と定義している。

現在、ほとんどの生成AIは文章や画像の生成をサービス内で完結するにとどまるが、AIエージェントでは外部ツールを使用することでより複雑な作業をこなし、より高度な目標を達成できるようになる。例えば、Cognition社が2024年3月に発表したプログラミングが得意なAIエージェント「Devin」は文章からソースコードの提案、Webブラウザを使ったドキュメントの参照、実行、デバッグ、ビルド、デプロイまでソフトウェア開発に必要なタスクを実行できる。同社はDevinを「AIエンジニア」と呼び、事実上人間のエンジニアと同じことができるとしている。これからも分かるように、AIエージェントは、外部ツールによって生成AIの能力を拡張し、ほとんどの作業を完全に自動化する可能性を秘めていることになる。人の介入なしに特定のタスクを実行する自律型インテリジェントシステムである

Devinと従来の生成AIを比較すると、SWE-benchの評価では、提案された課題の13.86%をエンドツーエンドで正確に解決したそうである。SWE-benchは、実際のソフトウェアプロジェクトの課題を基にした能力テストで、GPT-4やClaude 2など以前のモデルと比較しても、Devinの成果は格段に優れている。また、Devinは、プログラミングの知識が全くない人でもプロダクトを作り出せる能力を持っている。これにより、ソフトウェアエンジニアの仕事がAIに置き換わる可能性がある。未完成といえるDevinでさえ、今までのAIと比べ物にならないほど進化した印象を受ける。

AIエージェントは、Devinの例からも大きな可能性を秘めていることがわかる。そのAIエージェントが本格的に導入されれば、企業としては大きなメリットがあるといえる。

・反復的なタスクを AI エージェントに委任することによる生産性の向上
・プロセスの非効率性、人為的ミス、手動プロセスから生じる不必要なコストの削減
・収集、処理された大量のリアルタイムデータによる的確な予測を基にしたビジネス戦略の立案
・製品の推奨事項をパーソナライズし、迅速な対応を行うことによる、顧客エンゲージメント、コンバージョン、ロイヤルティを向上

その他、数えきれないメリットがあると考えられるAIエージェントに多くの企業が注目するのは納得である。AIエージェントがビジネスに定着すれば、ビジネスとAIの関わり方がさらに変化するのは間違いないと思われる。

生成AIが一般に登場して1年余りの現在、AI業界は次のステップに進んでいる。技術革新の速度に追いつくのが難しいほどの急展開である。いずれ一般の日常にもAIが浸透し、不可欠になることは明らかである。SF映画のようだが、AIを利用するのか、AIに利用されるのか、我々が試される日がくるかもしれない。

いいなと思ったら応援しよう!