CBDC〜日本のデジタル通貨事情
ジャマイカと日本は1964年3月16日に外交関係を樹立し、友好・協力・貿易において良好な関係を保っている。
来日されたジャマイカのカミナ・ジョンソンスミス外相は2月7日、自国も加盟する中南米14カ国などでつくるカリブ共同体(カリコム)と日本との首脳会合の定期開催に意欲を示された。
(2) Xユーザーの河野太郎さん: 「来日中のジャマイカのカミーナ・ジョンソン=スミス外相と。私が外務大臣だった時のカウンターパートでした。 https://t.co/CfmGiA2882」 / X (twitter.com)
河野太郎デジタル大臣が外務大臣をされていたのが2017年からで、カミナ外相はその頃のカウンターパートということは、長きに渡り日本との外交に尽力されていることになる。ジャマイカと日本の親交が末長く続くことを願うばかりである。
ジャマイカといえば、近年、デジタル通貨の利用に熱心な印象がある。
2021年12月に中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)の正式発行を公表し、2022年にCBDCの「ジャムデックス(Jam-Dex)」を導入したのである。
CBDCは仮想通貨と異なり、現金(硬貨、紙幣)をデジタル化したもので、現金と同じように法定通貨として扱われる。ジャマイカは現在、一般の人々の携帯電話でCBDCサービスを利用できるようにするための取り組みを進めている。2021年8月に初回発行として2億3,000万ジャマイカドル(約1.7億円)相当のジャムデックスを生成し、同月にはジャマイカ銀行の銀行部門に向けて100万ジャマイカドル(約74万円)相当のジャムデックスを発行。
また、普及促進するために、ジャムデックスを利用する最初の10万人のジャマイカ国民には、16ジャマイカドル分が無償で提供される。
ここまでジャマイカがデジタル通貨の普及に熱心なのは3つ理由があると思う。
1つ目は透明性である。ジャムデックスでは、すべてのトランザクション(商取引)はブロックチェーンに記録される。これは、行われたすべてのトランザクションが公開され、変更または削除できないことを意味し、セキュリティと透明性の追加層が提供される。
2つ目は利便性と効率性である。ジャムデックスを使用すると、ユーザーは現金や小切手を必要とせずに、即座に支払いや送金を行うことができる。これは、すぐに支払いをする必要がある人や、従来の銀行サービスにアクセスできない人にとって特に便利である。さらに、ジャムデックスは従来の支払い方法に関連するコストを削減できる。例えば、ジャムデックス支払いを受け入れる販売者は、時間と費用がかかる現金や小切手の取り扱いを心配する必要がなく、代わりに、ジャムデックス・ウォレットを通じて即座かつ安全に支払いを受け取ることができる。
3つ目は金融包摂である。金融包摂とは、「経済活動に必要な金融サービスをすべての人々が利用できるようにする取り組み」のことである。ジャマイカの人口の約17%が銀行口座を持っていないらしく、このまま銀行口座を持たない状態が続くと貧しいジャマイカ人は従来の銀行サービスにアクセスできない可能性があるため、お金を節約したり、クレジットにアクセスしたり、支払いを行ったりすることが困難になる可能性がある。ジャムデックスはスマホを持っていれば誰でもアクセスできるデジタル ウォレットを提供することで、より多くの人々を正式な金融システムに引き込む可能性を秘めている。
ジャマイカでは殆どの国民がスマホを利用しているため、スマホで利用できるジャムデックスは金融包摂という側面を担うことになる。
ジャマイカ特有の理由もあるが、デジタル通貨の普及にジャマイカは本気であることは間違いない。
では、日本はどうであろうか。
日本でも2016年11月に日銀によりデジタル通貨に関する報告書が提出されているが、この報告書の中でブロックチェーン技術に関して、「この技術の応用範囲は仮想通貨にとどまるものではなく、各種の財産権の管理など、幅広い応用が可能と考えられる。」と記載されている。
2018年には、当時の立憲民主党の中谷一馬氏が、日本円のデジタル通貨発行に関する質問主意書を安倍内閣に提出し、閣議決定を経て安倍晋三首相名の答弁出されている。
この答弁の中に、日本政府として中央銀行によるデジタル通貨を発行する可能性について検討してまいりたいという内容が記載されていたことは話題になったほど、日本でもデジタル通貨熱は高まっていたのである。日銀は日本のデジタル通貨(デジタル円)の導入に向けて、2021年4月から実証実験を行っているが、まだ実用化には至っていない。この間に日本では電子マネーが普及し、スマホで電子決済するのが当たり前になっている。
日常生活で電子マネーが普及すると「デジタル円に価値はあるのか」と疑問に思う人もいるようだが、価値が保証されているから「通貨」として利用できることを忘れてはならない。
電子マネーは民間企業のサービスであり、企業がサービスから撤退、またはサービスの廃止を行えば、電子マネーは価値を失うのである。最近ではTポイントの廃止がニュースになったが、Vポイントに統合される形で生き延びたといえる。
いつ価値を失うか分からないものが電子マネーである。しかし、デジタル円は現在の紙幣や硬貨と同じく法定通貨であり、その価値は日本が保証するものである。
デジタル円が価値を失うときは日本がなくなるときである。それは紙幣や硬貨でも同じである。
電子マネーのような利便性、決済でのタイムラグのなさ、日本による価値の保証、とデジタル円が導入されることによるメリットは大きいと感じられる。日本は石橋を叩いて渡る(渡らない?)傾向が強く、スピード感の無さから諸外国に遅れをとることが多くある。今、デジタル庁は河野太郎デジタル大臣を長として、迅速な改革を進めている。このスピード感をもってデジタル円の導入も促進されることを切に願う。
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