福島県いわき市の県水産海洋研究センターの余念なき研究。知恵を出し応援する姿勢が大切ではないか。
堀江貴文さんをはじめ著名人も多く発信、今朝のサンジャポでもやっていた、東電福島第一原発敷地内のタンクに溜めてあったALPS処理水の海洋放出についての私見。
相反する主張の記事にも目を通した。共同通信のデータを出しているジャーナリストのこの記事は、政府の上げ足を取っているだけで、本人に何か考えがあるようには思えなかった。データをなぞっているだけのような印象を受けた。モルタル固化を推奨するのは解決にならないと思う。むしろ実現可能なのか怪しくもある。
ジャーナリスト本人ツイートより。
Xユーザーのジャーナリスト志葉玲さん: 「いわゆる「#処理水 」の #海洋放出 について、岸田首相の詭弁をファクトチェック!仮に「権力や大企業の太鼓持ち」じゃないなら、こういうの、大手マスコミももっとやれよ…。 またも岸田首相の詭弁?「処理水」海洋放出の不都合な事実を環境NGOが暴露 https://t.co/cJG4tCdCqa #汚染水 #原発 」 / X (twitter.com)
こちらの記事は、大阪の行政書士、社労士である山田六郎氏がFacebookで紹介していたもの。科学的っぽく見えるが、盲信的、ネットからの貼り付けのように思える。
僕はどうしてALPS処理水海洋放出を「完全に安全」と言うのだろう|kikumaco (note.com)
実際、何が正しいデータなのかわからない以上、素人判断は難しい。自分の意見も、他から見れば似たようなものだろう。
政府のいわばごり押し的決定と、それに盾突く民間の構図。
2019年10月3日、海洋放出しようとする政府に反発し、原子力市民委員会はモルタル固定を推奨するような内容の文章を関係大臣に送ったそう。それを無視して今回海洋放出されたことで、余計に炎上しているのだろう。
しかし、モルタルで固められても海水に流されていても放射線は出る。
こちらは、原子力市民委員会のホームページ
原子力市民委員会原子力規制部会「ALPS 処理水取扱いへの見解」を発表、関係大臣に送付しました | 原子力市民委員会 (ccnejapan.com)
福島第一原発の事故でメルトダウンした核燃料を冷やすために大量の水が今も冷却に使用されている。直接冷やす為、冷却水には大量の放射線が含まれ汚染水となる。
建屋の破損により雨水や地下水の流入し、汚染水と混ざり新たな汚染水が発生する。このため1日に90トンもの汚染水が増える計算となる。
2023年8月17日現在、ALPS処理水等およびストロンチウム処理水(ALPS処理前水)の貯蔵量は貯蔵タンクの98%使用になる。その為、汚染水の処理が急務だった。
政府は汚染水をALPS処理を行い、ALPS処理水の処理方法として、「海洋放出」を選択した。基準の40倍に希釈して放出されるそうだが、実際に40倍希釈というのはトリチウムに対してのみで他の放射性物質に対しては明確な提示がない。
ALPS処理によりトリチウム以外の放射性物質は規制基準の100分の1以下に浄化しているので、言及する必要はないという判断だろう。いくら希釈しても海洋汚染の可能性を指摘する声は多くあり、モルタル個化を推奨する人もいる。
アメリカのサバンナリバー核施設の実績があるから、とあるが、そもそも日本で可能なのか疑問がある。汚染水ではないが原発の使用済燃料からできる放射能レベルの高い廃液の処理について、日本では2028年を目途に地層処分を計画している。これは廃液とガラスを混ぜステンレス製の容器の中で固化、冷却のためガラス固化体は30~50年一時貯蔵され、その後、300mより深い地下に埋めるというものだ。
「天然バリア」となる地層と「人工バリア」である金属や粘土を組み合わせた「多重バリアシステム」により、数万年以上にわたって放射性物質を人の生活環境から隔離することができるということで国際的に運用を予定している国が多いらしい。放射性物質はこれほど慎重になる対象だということである。
放射能レベルの違いはあるだろうが、サバンナリバーのモルタル固化の実践例では地表にコンクリートタンクを設置していると思われるので、隣接区域への影響は本当にないのだろうか。
サバンナリバー核施設はは軍事施設であり、国土の広さを考えると周囲に民家はないはずだ。同じことを日本でするとなると隣接区域に民家はないとはいえない。また、モルタル固化を実行する場合、モルタル作成に使用する水の容積はモルタルのの容積の4分の1であるため、処理すべき汚染水の4倍の容積のモルタルが出来上がることになる。
2023年8月17日現在、汚染水の貯蔵量は1,344,749m^3なので、単純計算で5,378,996m^3のモルタルが出来上がる。これを東電敷地内の貯蔵敷地(800m×800m)に貯蔵することは可能だとは思うが、この敷地を含む除染廃棄物中間貯蔵施設の共用期間は福島県との間で30年間と定められているので、それ以降の貯蔵をどうするつもりなのか。
トリチウムの半減期が12.3年なので、30年で元の量の18.44%になる計算から危険性はなくなるという判断なのだろうか。一度、設置すると動かせるものでもないので永久処分ができる場所が必要となるが、地表に3階建てほどのコンクリートタンクを置くとなると、希釈していない分、放射能レベルが高い物質がコンクリートに覆われているとは言え、タンクが地表にあることに周辺への合意は取れるのだろうか。希釈していれば放射能レベルは低くなるが希釈した分の4倍のモルタルになることを考えると貯蔵スペースが確保できるは不安である。
これではいつまでたっても除染区域に住民は戻ってこれない。理想と現実のいずれを優先すべきかは別にして、モルタル固化を推奨するのは解決にならないと思う。むしろ実現可能なのか怪しくもある。
「海洋放出」は希釈しているとは言え、放射性物質を海に流すことになるので、漁業への影響を考えるのは当然だと思う。共同通信の報道にあるように、ヨウ素129などが基準値より多く残留していることが真実であれば確かに海洋汚染について気にもなるが、同じ心配はモルタル固化にも言えるのではないか。モルタルで固めれば問題なし、とでもいいたいのだろうか。
モルタルで固められていても海水に流されていても放射線は出ているのだ。放射線が0というのは自然界には存在しない。直接的にどの程度の危険性があり、現実的にどの程度までその危険性を許容できるかではないのか。「海洋放出」による漁業への影響は、もちろん政府だけでなく、福島の人たちも気にはなっている。
福島県いわき市の県水産海洋研究センターは福島県沖の魚は放射性セシウムをどのように体内に蓄積し、放出しているのかを調べる飼育研究をしている。事故から12年となるが、今も国の基準値を超える魚がごくまれに見つかることがあるそうで、研究に余念がない。
ヒラメとカレイを飼育し、セシウムを体に取りこむ割合や速度を調べているらしく、副所長さんは「食べる量など条件によって差があり一概には言えないが、割合や速度を割り出せるモデルを作ることができた」と一定の成果を上げられた。他人ごとではないだけに誰よりも真剣に取り組んでいるのである。
他にも民間で研究をしている機関は多くあるが、それらの成果を見ていると「海洋放出」はベストの選択ではないかもしれないが、現実的に実行できる対策であると思う。政府が出したデータも共同通信が出したデータも僕には真偽は分からないので、そこを追求しても何も生まれない。
しかし、現実は動き出し変化し始めている。それに向けて真剣に向き合い、必死で生きている人もいる。無策に文句を言うのではなく、知恵を出して応援する姿勢が大切ではないか。すべてを把握するのは難しいかもしれないが、調べれば情報が手に入る時代であるのだから、賢い国民にならなければならないと思う。
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