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未来のAIについて〜問題点を考えてみる
ChatGPTなどの生成AIが普及して2年程になります。スマホやPCのAI対応が当たり前になり、特別なものではなくなったAIについて、今後の動向について考えてみようと思います。
今更ですが、「AI(人工知能)」とは、学習・推論・認識・判断などの人間の知能を持たせたコンピューターシステムのことです。通常のコンピューターは与えられたプログラム通り動作しているに過ぎませんが、AIを備えたコンピューターはデータとして蓄積されたパターンを基に、相手や状況に応じた適切で柔軟な対応を選択することができます。
1997年5月、IBMのスーパーコンピューター「ディープ・ブルー」が当時チェス世界チャンピオンのガルリ・カスパロフに歴史的な勝利を収めました。コンピューターにできる限り多くの定跡を覚えさせ、局面に応じてパターンを先読みさせることによって、常に最善の手を打つことができたためです。しかし、人間の知能とAIには大きな違いがあります。
人間は「前回の対戦ではこうして負けたのだから、次回は新しいアプローチをしよう」と経験から学習することができますが、コンピューターの場合は新しいプログラムを必要とします。自ら学習するコンピューターの研究は続けられていますが、人間と同レベルの学習能力を持つコンピューターはまだ現れていないようです。
AIは一部の専門家が使うものというイメージを持つ人もいますが、そのようなことはありません。今まで人間が行っていたことでも限界を迎えることがあります。そこにAIは入り込んでいます。例えば、あるコンビニエンスストアで「おにぎりを買った人はお茶も買う」客が多く訪れるとします。注意深い店員はおにぎりとお茶が同時に購入されることに気付き、「おにぎりの隣にお茶を置こう」と考えるでしょう。
しかし、お店の商品数が増えた場合、人間の力だけで同時に購入されやすい組み合わせを見つけ出すことは可能でしょうか。商品の数が少ないうちは人間でも商品の売れ行きを確認することも比較的容易ですが、品数が数十万点、数百万件になると把握は困難です。コンビニにおける商品購入の履歴は、コンピューターにデータとして記録されています。AIを利用することによって買い物状況から得られる情報を分析し、組み合わせて購入されることの多い商品や販売が増える時期、時間帯、購買層などを割り出すことが可能です。AIは人間の頭脳では処理できない膨大な量のデータ「ビッグデータ」に掛け合わせることで、経済に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
これからますますの発展が期待されるAIですが、懸念される問題もあります。
1つは「2045年問題」です。「2045年問題」とは、2045年にはAIが人間の知能を超えるという予測です。インテルの創設者の1人、ゴードン・ムーアが1965年に提唱した集積回路の集積密度は2年で2倍になるという法則に基づきます。集積回路の密度が高まればコンピューターの性能も向上するため、2045年にはコンピューターのAIが人間の知能を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」を迎えるのではないかといわれています。
AIが人間の知能を超えたとき、私たちの生活やビジネスに与える影響が懸念されます。シンギュラリティについてはSFでもよく取り上げられるテーマでもあり、ご存じの方も多いかと思いますが、シンギュラリティを迎えた先の未来については、「人間が考えた未来」ばかりであり、実際にはどうなるかは予測の域を超えません。ですが、いずれ到来することは確実視されていますから、AIの発展と併せて問題視しておく必要があります。
2つ目は「倫理問題」です。SF作家アイザック・アシモフは「人間への安全性、命令への服従、自己防衛」をロボット三原則として挙げました。AIを備えたロボットが人間に危害を及ぼす命令を下された場合、ロボット三原則に従おうとするロボットは「人間への安全性」と「命令への服従」のどちらを選べば良いのかというジレンマに陥ってしまいます。また、過ちを犯したロボットには責任が発生するのかという倫理的な問題も生じます。この問題に関しては「AIを生命として認知するかどうか」も関わってくるため、単にプログラムでどうこう出来るほど簡単なことではありません。場合によっては法律も必要となるほど大きな問題です。
AIそのものの発展や問題ばかりに目が行きがちですが、AIをツールと見た場合、使い手である人間側の対応も大きな問題かもしれません。AIでどんなことができるのか、どのように開発を進めていくのかを理解するためには、まずプログラミングを勉強することが重要です。
なぜならば、AIのベースはプログラミングであり、そのベースの上に様々なアルゴリズムを用いて機械が自動で学習するシステムが構築されているからです。残念ながら、AIの使い方を知っていてもプログラミングを知らずに使っている人が大半です。もちろん、それで何とかなる程度の使用であれば問題はありませんが、AIについて熟知し活用するにはプログラミングは不可欠だと考えます。独学でも構いません。研修などに参加する構いません。重要なことは、正しい知識を持ち、正しい技術を養うことです。AIを活用するのか、AIに使われるのか、人間側も試される時代になっていくと思います。
「2045年問題」「倫理問題」や人間の対応と問題は山積していますが、解決策を見出せないまま時間が過ぎて来たように感じます。AIが搭載された人型ロボットを街やニュースで見かける機会も増え、AIの進歩に伴い、より生活が豊かになることが期待される一方、新しいテクノロジーに対する不安はまだ払拭されていません。
今後、AIの利用方法や人間とロボットの共存についてさらなる議論が必要であり、その議論のために人工知能の基礎知識やロボットを動かすアルゴリズムを学習しておくことは専門家でない人間にも必要な時代がきます。それほどAIは身近なものになりつつあります。SFが現実を超えていたのが20世紀とすれば、現実がSFを超え始めるのが21世紀と考えなくてはなりません。2025年もAIは大きな発展をすると予測されています。専門家でない一般の人もAIを活用できる側に立てる、そのような年に、2025年がなることを期待したいと思います。