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インターネット投票はなぜ導入されないのか~総選挙から見る若者の関心

2024年10月27日、第50回衆議院議員総選挙が実施されました。若者の政治離れが囁かれて久しくなります。

総務省のデータによると、第36回(昭和55年)の投票率74.57%をピークに多少の変動はありますが、投票率は下降の一途を辿っています。特に20歳代の投票率が急降下しており、第39回(平成2年)の57.76%を最後に、50%に満たない投票率が続いています。

第46回(平成24年)は37.89%、第47回(平成26年)は32.58%、第48回(平成29年)は33.85%、第49回(令和3年)は36.50%と30歳代以上の投票率より大幅に低い状況が続いています。

選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられた第48回の総選挙での10歳代の投票率は40.49%、次の第49回は42.23%と思うほど伸びず、全体の投票率を上昇させるほどではありませんでした。投票率の低下は、政治自体に関心が持てない国民の評価という解釈もでるかもしれませんが、第1回(明治23年)の頃と比べると生活様式が大きく変わり、昔ながらの投票制度が時代に合わなくなっているとも捉えられます。期日前投票、不在者投票、在外投票と投票日当時に投票所に行けない人に対しての仕組みはいくつか用意されていますが根本的な解決には至っていません。

郵送された選挙通知書を持って投票所に行き、受付で選挙通知書と交換で投票用紙を貰う。一人1票を確実にする仕組みだと思いますが、有権者に選挙通知書を郵送するだけでも膨大な費用がかかります。実際には選挙通知書がなくても、運転免許証などで本人確認できれば投票はできます。昔ながらの仕組みとして疑問に思わず政府は行っていますが、郵送費用がすべて税金だと思うと「無駄だ」と感じずにはいられません。本人確認ができればいいのであれば、マイナンバーカードで十分だと思います。デジタル庁は行政のデジタル化を推進するために様々な事例を提案しています。その中には選挙に関するものも存在します。

以前より選挙のデジタル化は検討されていますが、導入には至っていません。決して、技術が追い付いていないということではありません。デジタル庁の「デジタル実装の優良事例を支えるサービス/システムのカタログ(2024年夏版)」には「インターネット投票システム」の記載があります。スパイラル株式会社が提案しているものですが、「地域に住む人も地域外に住む人も、マイナンバーカードで公的個人認証を行うことで、時間や場所の制約を受けず、いつでもどこからでも投票することができるサービス」と謳っています。サービスの特徴を見てみると、

・マイナンバーカード認証機能を備えた専用アプリ「つくスマ」と連携することで、スマホ上で投票の権利確認と投票行為を完結することが可能。
・投票データの管理に暗号化とブロックチェーン技術を用いることで、高い秘匿性と非改竄性を実現。

このように、手軽に利用でき、安全面も考慮されたいいサービスだと思います。マイナーバーカードで公的個人認証を行うことで厳正な個人認証が可能になるので、選挙通知書は不要になります。スマホアプリのUI/UXもやさしいものを提供することで移動や自書の困難な方々の投票機会も確保できるため、高齢者のような投票意欲は高いが身体的な課題で投票が困難な人にも平等に投票機会を与えられます。

高齢化が問題となっている日本にこそインターネット投票システムは必要ではないでしょうか。導入自治体は、つくば市の1件だけというのが残念です。自治体で費用を賄うには初期費用などが高額なため導入を躊躇されていることは予想されます。

しかし、衆議院議員選挙は全国で実施されるもので、その恩恵を受ける国民は多くいるはずです。有権者は全国で約1億人いるわけですから、選挙通知書の郵送費用を定形郵便物(110円/通)で試算すると、約110億円もかかることになります。導入費用を500万円とすると、単純計算で2200の市町村に導入できることになります。

2024年10月1日時点で日本の市町村の数は1741ですから、計算上は郵送費用で賄えそうに思えます。もちろん、全国で実施するためには有権者1億人のデータを管理・集計することが必要ですから、このシステムをそのまま利用できるとは思いませんが、基盤システムとしては実用化されているもののブラッシュアップで対応できる可能性は高いです。

2024年8月に、当時の河野太郎デジタル大臣がインターネット投票についてインタビューを受けています。

「今までは、ネット投票をやりたいと思っていても、現実的にはなかなかやりようがない状況だったと思います。ネット投票を実施する際に必要な本人確認について、国民がマイナンバーカードを持っていないのにどうやってするのかという問題があったり、行政側においても様々なサービスにおいてデジタル化が進んでいなかったりして、ネット投票を行うための具体的な議論ができる環境ではなかったと思います。」
とした上で、
「地方自治体では、ネット投票はまだできないけれども、投票所でタブレット端末を使って電子投票はできる、という声を国に届けた結果、総務省が電子投票システムの技術的な要件を緩和しました。」
と、選挙のデジタル化が進みつつある状況に言及されました。

インターネット投票を世界で最初に導入した国であるエストニアについても言及され、
「エストニアはシステム構築から選挙での運用まで実際にやっていますから、日本での導入に向けてi-voting(国政選挙におけるネット投票)は大いに参考になると思っています。」
「エストニアは日本のネット投票導入に協力的です。エストニア政府からは、i-votingのシステムを日本語に直せばそのまま使えるというアドバイスをいただいたこともあります。日本とエストニアでは人口の規模が全く違いますから、仮に日本にシステムをもってくる際には多少のバリエーションが必要になるかもしれませんが、基本的にはエストニア国内で問題なく運用できているシステムですので、大きな問題はないと思っています。」
と、実現可能を前面に押し出されました。

日本内外で、インターネット投票の技術は実用的なレベルにあると思います。世界各国でも、選挙におけるインターネット投票の実現を模索する動きがみられます。

日本のインターネット投票の実現は、政治次第だという国会議員もいるようです。人口推計によると2024年5月1日現在、60歳代が約1479万人、70歳代以上が約2895万人となっています。第49回(令和3年)の総選挙での投票率から算出すると、60歳代が71.38%=1055.7万人、70歳代以上が61.90%=1792万人と高齢者の投票数は多いのが現状です。

令和3年の総人口が1億2550.2万人、全体投票率が55.93%ですから、全投票者数は7019.3万人になります。全投票者数に占める割合では、60歳代が15.0%、70歳代以上が25.5%、60歳以上で40.5%となりますから、60歳以上の方は選挙に対する意欲が高い層だというのが数値からも分かります。その反面、高齢になれば自然と身体機能の低下も起こり、全員が健康でいるとはいいにくくなりますから、投票に行きたくても行けなかった方が多くいるかもしれません。

選挙所に行き、自筆で投票する今の仕組みが全国民に平等な投票機会を与えているといえるか、疑問を感じます。今の選挙の仕組みを全面的に改訂できなくても、期日前投票などと同じようにインターネット投票という選択肢を作るだけでも投票機会の平等性に繋がるはずです。

マイナンバーカードによる個人情報の紐づけを推し進める行政が次に行うのは、集約、個人情報の活用です。災害時の安否確認やマイナ保険証、マイナ運転免許証と紐づけを進めるのなら、全国民に関連する総選挙にもデジタル化を推し進めてもいいのではないでしょうか。法律の改正など課題はあると思いますが、すべては政治次第だと思います。政治が後ろ向きであれば、新しいものを導入することはできません。

国民の利益のために、政治があるはずです。政治の核の部分を遂行してくれる方が、衆議院に集結してほしいと願います。第50回衆議院議員総選挙の結果で、今後の政治がどのように動くのかが決まります。この選挙でどのくらいの国民の声が反映されるのか、結果を待つことにしましょう。

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